今年もカノン5Dさん主催の自作オーディオイベント『アニソンオーディオフェス 2021』に参加してきました!
午前の部の3作品 |
今年は新規出品者3名を含めた9名の出品者。関東以外にも北海道・甲信越・東北・中部など遠方からの出品もあり規模の広がりを感じますね。
アニソン縛り以外のレギュレーションは(ほぼ)自由なこのイベント。非常にバラエティーに富んだ作品が集まりました。
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午後の部の作品(一部) |
目次(リンク付き)
- 当日の模様:和やかな盛り上がり!
- サウンドスローライフさん 「卓上の快楽」
高級5cmユニットのコンパクトなダブルバスレフ - 幻魚白蝦蛍烏賊さん 「黒螺旋2」
3.2m逆ホーン内蔵。軟質素材の小型密閉 - kato19 「コンビネーション・ケルトン」
4cmフルレンジホーン+パッシブラジエーター付きケルトンウーハー - 赤さん 「秋津竹」
竹材を使ったテーパー形状の後面開放スピーカー - χ'tさん 「バグホン」
10cmフロントホーン+ホーンツイーターのフルホーン2Way - FE203さん 「DTSL-101 YANMA」
2本の共鳴管で低域補正を狙うトールボーイ型 - タニヒロさん 「げんこつポリカバッフル 2021」
独自構造でバランス良く鳴らす後面開放型 - PamaZoniks(パゾ)さん「試験薬PZ③号機 TS.Ver」
変形をテーマにした3Way4スピーカーの大型システム - zukinkunさん 「FOSTEX GX100 改造」
GX100ベースにツイーター交換とオリジナルネットワークで新たな音に - カノン5D 「SOLA Mk2」
アルミ補強と独自ウーハー研究の集大成 - 最後に:この貴重さは本当に得難い機会
当日の模様:和やかな盛り上がり!
当日は好天にも恵まれ過ごしやすい1日。昨年のような自粛モードではありませんが、消毒やマスク、換気などの感染対策はキチンとされていました。場所は昨年と同じく東京・東小金井のマロンホール。 今年もAqoursの手洗いポスターが活躍 |
今回は個人的に作品製作が遅れに遅れて、前日の夜まで調整していたため寝不足気味・・・初めて当日に作品を持参しての参加です。本来ですと1週間前には資料提出など準備が必要ですがご迷惑をおかけいたしました。
広い部屋に間隔をあけての座席 試聴のみの参加者さんも来場して盛り上がりました |
出品者以外にも試聴参加者の方もいらっしゃって和やかな雰囲気。主催者のカノン5Dさんが名札を作ってくださったので、気軽に話ができる雰囲気になり助かります。
作品は小さい順に20分のプレゼン&試聴タイム。遠方で来れない出品者さんはカノン5Dさんがプレゼンを行ってくれるのもこのイベントの特徴です。
それでは順番に作品を見ていきましょう!(個人の感想なので勝手な事を放言してスミマセン!事実誤認などありましたらご指摘ください)
サウンドスローライフさん 「卓上の快楽」
・高級5cmユニットのコンパクトなダブルバスレフ
ツートンカラーとハンドル付きが可愛らしいデザイン |
最初は北海道在住のサウンドスローライフさんの作品。スキャンスピーク製5cmユニットを使った超小型ダブルバスレフです。
小さなハンドルが付いたボックスに赤と黒のツートンカラーが可愛らしいデザイン。桐材を使用しているので非常に軽量です。
小さいので一見普通のバスレフに見えますが、内部にもダクトを持つダブルバスレフ構造。ダクト周波数はわかりませんが、設計図を見る限りはそれほど欲張った設計にはなっていないようです。
むしろ二重のダクトにより小型バスレフで悩ましい『ポートからの中高音の漏れ』をフィルターする効果も大きいのかもしれません。
そしてもう一つの特徴は採用されたユニット。デンマークのScan-Speak社製 『5F8422T01』です。こちらは2013年のStereo誌の付録ユニットである『5F/8422T03』の一般販売バージョンですが、その価格はペアで2万円近く!5cmフルレンジとしてはかなりの高級ユニットです。
実は付録版の方は自分も持っているのですが、高音の特性にかなり癖のある感じで使いどころが難しいなぁ・・・と思っていたところでした。特性図を見る限りは基本的な特性は似ているように見えますが、ハイエンド小径ユニットとしてブラッシュアップされた本機はどういう音になるか楽しみです。
とはいえ、卓上スピーカーとして製作された作品ですので、あの広い会場ではさすがに力不足じゃないかなぁ・・・という心配も。さてどうだったでしょうか?
【試聴してみて】
これが意外なくらいバランス良く鳴って驚きました。もちろん上も下も伸ばしているわけじゃないんですが、適切なレンジ感で不足を感じません。
これはハイ上がりを避けて中音を重視したユニットの特性もあるのでしょうが、それをうまく活かした作例と言えますね。これだけの音量で鳴らしながら音が破綻しないのはすごいなぁと感心しました。
もちろんエンクロージャーの方も変なビビリ音などもなく大音量でも安定しており丁寧な工作技術を感じます。
実は本番前のテスト時にスピーカーのそばで聴いたのですが、弦楽器のディテールがしっかり聞こえてさらに印象が良かったですね。「卓上の快楽」と名付けたくなる気持ちがわかりました。
離れて聴くと流石に音のディテールは丸くなりますが痩せた感じにならず聴きやすいバランスでした。響きやすいライブな環境も良い影響になっていたかもしれません。クセのない女性ボーカルの声は魅力的。大きさに比して低音もよく出ていたと感じますね。
小型スピーカーの一つのあり方として欲張らずにバランスで勝負する成功例だと感じました。
幻魚白蝦蛍烏賊さん 「黒螺旋2」
・3.2m逆ホーン内蔵。軟質素材の小型密閉。
らせん状の中央は実はもう一つらせん状の構造が隠されている。 |
一見してインパクトのすごい作品。でも決してインパクト勝負の作品ではありません。
TPUという軟質素材を使って3Dプリンタで出力した作品ですが、なんとこの小ささで3.2mもの長大な逆ホーンを内蔵しています。らせんの中にもう一つらせん構造を組み込んだ見た目以上に驚きの作品です。
3Dプリンターでの造形物もここ数年は一般的になってきましたが、ここまで見事なものというのはかなりの職人技が必要です。作者さんはTwitterでも3Dプリント技術の研鑽を発表しておられ、最近では軟質素材を使ったプリントの研究をされていました。この作品も多くの試行錯誤の結晶といえるでしょう。
また、幻魚白蝦蛍烏賊さんは昨年のStereo誌コンテストで、やはり軟質素材のタマゴ型3Dプリンタ作品で2次選考を通過し見事本選出場を果たしました。
その時は私も1次選考の通過者だったので気になる存在だったのですが、まさかアニソンオーディオフェスでご一緒できるとは。しかもてっきり昨年のコンテスト作品を出品するのかと思いきや新作での登場です。
この作品は、今年のStereo誌コンテスト応募作からユニットを変えたバリエーションで、使用ユニットは2020年のStereo誌付録マークオーディオ製のOM-MF4。作者の狙いは軟質素材を活かしてエンクロージャーの共振を低減した理想的な密閉型スピーカーのようです。
また丸みのある形状からも反射の影響を抑えたキレイな高音を期待したいところです。
作品資料pdf (Audifillより)
【試聴してみて】
表面もキレイにプリント。 ウェーブガイド状のカバーも美しい |
まず非常に透き通った音が印象的。音場感も素晴らしいですね。1曲目の『ゆるきゃん』ではパーカッションの自然さに驚きます。
低音は決して『量感たっぷり』というわけではないのですが不足感はありません。自然に伸びる密閉型らしい低音。でも小型密閉にありがちな詰まった感じや、空気バネによるクセは感じませんでした。
このOMMF4自体が小口径の割に低音も出やすいユニットではありますが、それにしても小型密閉でこのバランスは良好です。
ボーカルは雑味なく焦点がピッタリ合っている感じ。高音の伸びの気持ち良さはOMMF4の金属コーンの魅力ですね。ライブな環境なので若干明るさが強調されますが一般の部屋なら気にならないと思います。
この雑味の少ない音はやはり共振が少ないせいでしょうか。素材の柔らかさで、少なくとも高音の共振を減らしている気はします。共振したとしても比較的低域になることで本ユニットの特徴である美しい高音を活かした作品になっているのかもしれません。
また逆ホーンの効果については諸説ありますが、本作の場合は気柱共鳴による変なクセは感じませんでした。内容量はわからないのですが小型密閉で問題になる空気バネも長大な逆ホーンで低減できているのかもしれません。あるいは、軟質素材のため空気圧をある程度吸収してしまうとか・・・?
色々想像してしまいますね。柔らかさも実際に押してみたかったのですが、流石に力を入れて押す勇気がありませんでした(笑)
ただ移動のため持ったらびっくりするほどの重量感!3Dプリントの作品は中空なので軽いイメージでしたので驚きました。作者さんによると底面に片側2kgの鉄塊を入れているとの事。このような制振対策も澄んだ音に一役買っているのかもしれません。
kato19 「コンビネーション・ケルトン」
表面は合皮貼りとペイントの組み合わせ。 9cmウーハーは内部にあり外からは見えません |
赤さん 「秋津竹」
中央部は漆喰で埋めて接続 吸音材は接続部に少量埋め込んでいる |
χ'tさん 「バグホン」
石膏像のような重量感のある外観。 白い着色仕上げで統一感がある |
FE203さん 「DTSL-101 YANMA」
上下にスリット状の開口部を持つ かなり背の高いトールボーイ型 |
OM-OF101の作例が続きますが、最後はFE203さんの2連共鳴菅のトールボーイ。FE203さんといえば『共鳴菅』の作例が多いのですが、単に作るだけでなく共鳴菅の欠点を改良するチャレンジを続けています。
今回は2つのユニットを使い2本の共鳴菅を一つの筐体に収めフラットな低域を目指した作品。
共鳴菅スピーカーはユニット背面の音を1〜3m程度の菅で共鳴させて低音を補完する方式です。この形式は非常に効率的に低音が得られる反面、気柱共鳴の関係でピークやディップの凹凸を生じさせます。その凸凹を補完するため別の長さで調整した共鳴菅と合わせてフラットにするという狙い。
構造だけでなく見た目もとても美しいツートンカラーの塗装。元々はStereo誌のコンテスト応募用に製作していたとのことですが、完成後にサイズオーバーに気づき泣く泣く応募を断念したという作品です。
バッフルステップ補正回路も同梱されていましたが、当日は壁寄せでバランスを取れたのでストレート接続で発表。 |
雑ですがYANMAの仕組み
— FE203 (@back_loaded) December 31, 2021
管のスピーカー位置から開口までの間に5倍振動を減衰する複数のスペースを設けてます
赤い丸のとこはウレタンマットを詰めてるとこで、できるだけ不要な共鳴を潰すようにしました pic.twitter.com/pUlxOZmM00
タニヒロさん 「げんこつポリカバッフル 2021」
曲面になったバッフルをユニットで支える構造。 アルミ柱は片側のみ装着し左右非対称な曲線具合に調整している |
自分のイメージする音の仕組み(想像です) |
PamaZoniks(パゾ)さん「試験薬PZ③号機 TS.Ver」
第一形態のセッティング。 置いてみると意外とコンパクトに感じました。 |
これで片側分のネットワーク!ど迫力です。 |
zukinkunさん 「FOSTEX GX100 改造」
昨年に比べてかなり小型の10cmウーハーの機種 右が外付けネットワーク |
zukinkunさんは昨年も市販品を流用した作品を出品していましたが、今年は破損したFOSTEX GX100をベースにツイーター&ネットワーク交換でこだわりのチューニングを披露してくれました。
GX100自体は幅16cm高さ22cmとかなりの小型スピーカー。10cmウーハーはFostex独特のHR形状アルミ合金振動板。ツイーターは元のマグネシウムドームからMB Quartのチタンドームに変更ですが導入できるサイズを探すだけで大変ですね。
そして注目は外付けのネットワーク。新しいユニットに合わせて一から設計し、フィルムコンデンサや銅箔テープで最終的な味を整える完成度の高さ。どんな音を聴かせてくれるか楽しみです。
作品資料pdf (Audifillより)
【試聴してみて】
ネットワークを上に乗せた状態で試聴 |
これはかなり好みの音でしたね〜ボーカルに熱量を感じるような聴いていて楽しい音です。小さい見た目から意外なくらいの迫力。ライブな環境の影響もありますが華やかさも感じます。それでいて変に強調されている感じもなく上から下まで繋がりの良さを感じました。
GX100自体を試聴したわけではないので比較はできませんが、レビューなどを読むと『モニター調』とか『硬めの高域』などの評価ですね。
今作ではツイーターのキャラクターの違いか、かなり方向性が違う気がします。個人的にはFostexに期待するような音質はこっちかなぁという気もしますね。これなら普通に使いたいと思う人も多いのではないでしょうか。
市販品の改造というと簡単に感じる人もいるかもしれませんが、本作はエンクロージャーとウーハー以外は全て変えており実質的には自作品です。木工的な工作は好きじゃないけどスピーカー製作に興味がある人にはこういった方法も楽しいかもしれないですね。
カノン5D 「SOLA Mk2」
・アルミ補強と独自ウーハー研究の集大成12cmウーハーなのに前作6cmウーハー版と変わらないコンパクト感 |
最後は主催者であるカノン5DさんのSOLA Mk2。最近カノン5Dさんが研究されていた『アルミによる筐体補強』と『ウーハー振動板の補強』の一つの集大成となる発表です。
非常に完成度の高かった前作『Concept-SOLA』と外観こそ類似していますが全く別物ですね。前作はA&Cオーディオの6cmウーハーを使用していましたが、本作はSEASの12cmウーハーに補強部材を加えたオリジナルユニット。
3Dプリンタ出力による補強材を加えた独自の振動板 |
考え方としては前作と同様にコーンの釣鐘動を抑えてマッシヴな低音を目指したものだと思います。今回は完全にカノン5Dさんの解釈するマッシヴな低音となるわけでそこも注目点ですね。
ツイーターはScan-Speak Illuminator D3004/602010に変更。なかなかの高級ユニットです。今回はウーハーユニットの特性変化に伴いクロスオーバー周波数をかなり下げ1.5kHzのLR4としたとの事。ツイーターの影響が強くなるだけにネットワーク調整は相当練り上げたようです。
さらに目立つ点はフロントに開けられた小さなバスレフポート。前作はリアバスレフでしたが今回はフロントバスレフに変更。クロスオーバーが下げられたので中高音の漏れの影響も減ったためでしょうか。共振周波数は38Hzでかなり低めまでカバーできそうです。
カノン5Dさんのここ数年の集大成となる本作。いったいどのような音を聴かせてくれるでしょうか。
作品資料pdf (Audifillより)
【試聴してみて】
一聴してクリアな音が印象的ですね。そして低音は量感がありながら歯切れの良い音。しっかり下まで伸びているのにブーミーさを感じません。あの小さいバスレフポートもかなり効いているようで40Hz以下の最低域の圧を感じる音でした。
中高音は前作とは印象が結構違いますね。当日はライブな環境なので華やかさが強めに聞こえるとはいえ、より透明感のある感じがします。クロスオーバーを下げてツイーター主導の音色になったという事でしょうか。
とはいえ1kHz付近まではウーハーが担当しているわけで、あの形状の振動板からこの音が出るとはなんだか不思議な感じがしますね。見た目以上に軽量化など工夫がされているからでしょうか。
自分のはるか先を歩いているカノン5Dさんですが、毎回参考になる知見をたくさん得られます。
選曲も1曲目から思いが込められていて良いですね。選曲意図を資料に書くのは素晴らしい思います。自分も書きたかったけど今年は時間が・・・(泣)
発表後のリクエストタイムに流された宇宙戦艦ヤマトは迫力がすごかったです。他にも意地悪なくらい(笑)強烈な低音のリクエスト曲があるなか、全く破綻のない音ですごい強度を感じました。
最後に:この貴重さは本当に得難い機会
今回で4回目の参加ですが本当に楽しかったです。個人的にも今年のアニメ作品ベストの発表の場みたいになってますが(笑)
やはり機材のレギュレーション(ほぼ)なしの良さもありますよね。コンテストで競うのも良いのですが、自由な発想での作品同士だと素直に学びの気持ちになれます。
どんなスピーカーであっても完成させるのは大変なので一人で試行錯誤するのは限界があります。いろんな人がいろんな手法、いろんな部材を使って完成させた作品を実際に聴くことは本当に貴重な経験です。
そしてなにより自作のスピーカーを『わかってる』人たちに聴いてもらえることの喜び・・・この貴重さは本当に得難い機会です。
今年も参加させていただき本当にありがとうございました!
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