『アニソンオーディオフェス 2020』に参加しました。自作スピーカー11作品を全レビュー!

2021/02/10

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  今年もカノン5Dさん主催の『アニソンオーディオフェス 2020』に参加してきました!自作出品者も前回の7名から11名に増加。学びが多く非常に充実した試聴会となりました。ホントに楽しかったです!


 本来は夏にも予定されていましたが自粛ということで中止に・・・冬もどうなるか?と心配されましたが12/22日非常事態宣言前ということで、人数制限や各種対策を万全にして開催の運びとなりました。

 せっかく大きな会場なのに試聴人数が少ないのは残念ですが、それとは対象的に参加作品は過去最大の11作品。アニソンオーディオフェスらしくバラエティーに富んだ作品で大変充実したイベントになりました。

アニソンオーディオフェス』は自作オーディオ(アンプ・スピーカー・アクセサリ等)の発表のイベントです。主催者のカノン5Dさんは個人ブランドAudiFillを運営する経験豊富なスピーカービルダー。

 自作イベントには使用部材にレギュレーション(縛り)がある事が多いのですが、このイベントは試聴曲にアニソン縛りがあるというのが特徴。試聴だけの参加もOKのとても自由なイベントです。

過去のイベントレポートです。 

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もくじ



当日の模様:少人数でも充実したイベント


 当日は穏やかな晴天。会場は昨年同様、東京都小金井市の東小金井マロンホールです。今回は3回目の参加ということで多少慣れてきたとはいえやっぱり緊張しますね〜

 今回は出品者が増えたので午前中からのスタートです。今回はなんとトップバッターの発表になりました。昨夜は遅くまで発表の準備で寝不足気味(汗)

 当日は準備も含めて20分の持ち時間なんですが、今回はどうしてもかけたい曲が多くてですね〜トークも含めて秒単位の台本を書きました(笑)でもやっぱり無理がありますよね。電車の中で練習してましたがなかなか厳しい・・・。

 会場では前日から設営に入っていたカノン5Dさん初め、出品者の皆さんと久しぶりの挨拶。今年からの参加の方とも話が弾みました。(マスクソーシャルディスタンスには気をつけながらですが)

 世間話は苦手ですが作品を前にしての会話は楽しいですね。参考になる発言を聞き逃さないように必死でした(笑)今回はカノン5Dさんの計らいで出品者には名札が配られたので非常に助かりました。

 完全無料イベントではありますがカノン5DさんよりJASRACへ許諾申請を行ったとのこと。せっかく許諾を受けても観客数が制限されてホント残念ですね。せっかくですので今回は事前に試聴曲のレビューなどを発表して盛り上げてみました。

 当日の流れは下記公式ページの資料も合わせてお読みください。

タイムテーブルと発表資料AudiFill 公式)

http://www.audifill.com/event/011_020/event_016_3time.html

公式開催レポート

http://www.audifill.com/event/011_020/event_016_5guide.html

 それでは次節より各作品の紹介簡単なレビューになります。

 当日は観客が少ないこともあってかなり響きやすい環境。試聴には少々厳しい条件です。しかも短時間の試聴です。もし事実誤認などあればお気軽にご指摘ください!私の着座位置は前方2列目右側でした。


kato19:天面ウーハー2way


天面ウーハー2way:フロントはツイーターのみを設置
90度以上に曲げた天面にウーハーをマウント。

 まず最初はなんと私・・・kato19です。ユニットの大きさ順とのことで8cmウーハーの自分がトップバッターとなりました。

 本作はウーハーを天面にマウントして前面にはウェーブガイド付きのツイーターのみを配置した2Wayスピーカーです。ユニットはStereo2014年付録品ですが、かんすぴ 2Way用のPW80KPT20Kと同一製品。FOSTEXで最もベーシックなPシリーズを使っています。

 ウーハーを横向きに聴くことで中高音を減衰させる狙いでしたが、このユニットはウーハーとはいうものの20kHzまで伸びるフルレンジ的特性。真横以下にしても高域のピークを十分に落とせません。コイルのみの1次フィルタで満足できる減衰になりました。

 ウーハーは20kHzまで伸びているとは言えスルー接続では高音に粗さを感じます。2way化でずいぶんと端正な音になりました。ボーカルもクセが少なく安心して鳴らすことができます。FoxtexのFEシリーズに比べるとおとなしい感じですが、アニソンについては楽曲を選ばないのがメリットかも。

カバーを外して8cmウーハーが見える状態
ネットワークはターミナル部に外付けしている
【当日の様子】

 当日は『自分の作品こんな小さかったっけ!』って我ながら驚くほど。他の作品と並ぶとその小ささが際立ちますね。会場が広いだけになんとも心もとないです・・・。

 ただ今回かなり響きやすい環境ですのでおとなしい音色はむしろラッキーでした。低音はそれほど下は伸びてないのですが量感があるので不足を感じない曲が多いです。見た目の小ささからくるイメージとのギャップもあり意外と出てるじゃん!という印象を持っていただけたようです。

 ツイーターのウェーブガイドデザイン的なインパクトもありますが、変な癖もつかず一定の評価をしていただけたのは嬉しかったです。今後もウェーブガイドのバリエーションを作ってみたいですね。

 この作品はニアフィールドで試聴すると上下位置によってバランスが変わるというデメリットがあるのですが、広い会場だと相対的に気にならないですね。自画自賛というのもアレですが予想以上にいい感触をいただけて嬉しかったです。

 なお、当日の楽曲紹介は下記をご覧ください。楽曲を長く流したかったので今年は事前配布にしました。やっぱりヴァイオレットの曲で言葉が詰まりそうになってしまったので用意しておいてよかった・・・とはいえ、ちょっと時間オーバーしちゃいましたね。開始時刻が早かったのでご愛嬌ということで・・!

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今回のスピーカーの製作記事です。順次追記予定です。

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赤さん:湯円(タンユェン)


湯円:半球を合わせて球体を実現
3点スタンドで安定して設置している。

 赤さんの作品は前作の円柱状エンクロージャーをさらに発展させた球形スピーカー。今回は半球状の陶製植木鉢を組み合わせて表面は漆喰仕上げするアイデア。リアはターミナルを兼ねたバスレフポートカバーです。

 実際に見ると予想以上に大きく感じて存在感ありますね。陶器製なので重量感も相当ありそうです。製作が難しい球形スピーカーですがこの手法は幅広く応用できそうな気がしますね。

 ユニットはVisaton 10cm同軸型のPX10HFコイズミ無線で扱ってるものだと思いますが、同軸のツイーターがピエゾタイプなんですね。

 ピエゾツイーターはブザーなどで使われる圧電スピーカーと同じ方式ですが、オーディオ用としてはホーン一体型を良く見ますね。自分はホーンタイプを使ったことがありますが独特のキャラクターのある音という印象でした。

 ピエゾツイーターが同軸タイプで使われるのは初めて知ったので興味津々。ただ心配なのは特性図を見るとツイーター付きにしては高域の伸びが控えめなところ。それも含めて試聴ではどう聞こえるか楽しみでした。

表面は漆喰仕上げで凹凸の効果も狙う


【試聴してみて】

 試聴してみると高域の不足感は案外気にならないですね。これは選曲の妙もあるのですが、ボーカル帯域が厚く感じてすごく聴きやすい。ギターやボーカルが前に出る感じです。

 定位感の良さはさすが球形スピーカーボーカルメインの曲にはピッタリです。陶器ということで余計な響きがありそうですが前作同様全く感じません。今回はフエキ糊と綿で対策しているそうでそれも効いているのかもしれませんね。

 ピエゾツイーターについては確かに独特の音色を感じますが、ホーンが無いせいかそれほど主張はしないですね。ただサックスの音色はピエゾツイーターの音色とすごく合ってた気がします。リード楽器の発音に近いので妙にリアルに聞こえるのかもしれませんね。これは意外な発見でした。

 このユニットは同軸2wayに見えてフルレンジと表記してあって不思議だったのですが、もしかしたら高域を付加するのではなくて、この音色にするのが狙いなのかもしれませんね(想像ですが)。スーパーツイーターで10kHzオーバーを付加した音も聞いてみたい気がしました。

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_aka_2.pdf


FE203さん:ヒゴロモ


ヒゴロモ:スタイリッシュなデザイン。
外付けのフィルター回路でバランスを調整している。

 この独特の5角柱のスピーカー。この大きさでなんと1.8mの共鳴管方式なんですよね。FE203さんも昨年からの発展形で完成度の高いスピーカーです。

 見事に組み込まれた3角柱の音道に下向きのスリット開口。構造を活かしたデザインも美しいですね。

 共鳴管スピーカーは低音を効率よく鳴らせる魅力がありますが、余計な共鳴音の処理が課題です。前作ではサイドブランチ管などで消音していましたね。今回は詳しい音道構造はわからなかったのですが色々工夫がありそうです。

 さらに本作のユニットはフルレンジのFOSTEX FF105WKですが外付けフィルター回路で低域とのバランスを調整。自分も共鳴管は好きで何本も作ったことがあるのですが、工夫の多いFE203さんの作品には感心することが多いです。

専用ボードの上に乗せた状態。ターミナルは底面。
開口部は底面のスリットを通して低音が出るようです。


【試聴してみて】

 一聴して低域の厚さを感じますね。フィルターの悪影響は感じません。Fostexらしい音色の魅力を保ったまま調整している感じです。共鳴管のクセはほとんど感じず素直な音ですね。ボーカルに変な響きがつくこともなく安心して聴けます。共鳴管でボーカルをキレイに鳴らすのは結構大変なんですよね。

 中高音を抑えたフィルターの調整もいいバランスなんですが、そのせいかコーンの振幅はかなり大きめ。広い会場の大音量ではちょっとヒヤヒヤしましたが、自宅で鳴らす音量ならちょうどいい感じでしょうか。

中高域を減衰させ低音とのバランスを取る回路

 選曲もFE203さんらしさが出てましたね。1曲めの『天空カフェテリア』は自分もかけたかった曲ですがやっぱり来たか!って感じでした。

 2曲めにまさかの『やくしまるえつこ』の『ノルニル』自分もこの曲好きで良くリファレンスにしています。そこからの3曲目『チチをもげ!〜』の落差に笑いました。

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_fe203_02.jpg


タニヒロさん:キャンバストップ2020

キャンバストップ2020:極めて珍しい外観。

 今回初めて聴いたタニヒロさんの作品。従来から独特の構造を持つ後面解放スピーカーを発表されています。以前から興味深く見ていたので今回は非常に楽しみな参加者の一人でした。

 今回の作品はバッフル部に絵画用キャンバス、スタンド部にポリカ製の振動板を設置。16cmのフルレンジユニットからの共振を積極的に利用する珍しい構造になっています。キャンバス部材は以前の試作品からの流用のとのこと。あえて16cm用に穴を拡大せず使用しているそうです。

 後面解放の音は想像できますが、このキャビネットと組み合わさった時にどんな音になるのか。とても楽しみでした。

背面部。縦の振動板の後ろに拡散パネルが設置。
ユニットはフローティングマウントに近い吊り下げ型。

【試聴してみて】

 いい意味で予想外の音でしたね。付帯音の多い音になるかと思いきや、伸びやかで破綻のない音には正直驚きました。一部ボーカルには少々歪み感を感じるところもありますが、水樹奈々さんの歌声は伸びやか。鬼滅の刃の曲では激しい部分でも破綻しないのは感心しました。

 クラッシック系やハープのような響きのある楽器は予想通りキレイに聞かせてくれます。16cmとはいえ小さな平面バッフルの割に中低域のバランスは良好。もちろん低域は少なめですが後面解放としては十分でした。自分の位置からは上方に定位するような不思議な広がりを感じる音場感。

実際に設置すると意外とコンパクト

 後面解放では逆相の打ち消しが問題になりますが、背面のポリカ振動板が打ち消しを緩和してくれる効果があるのでしょうか?また様々な共振によってピークやディップを打ち消しあうということもあるのかも。

 本当のところはわかりませんが常識の殻を破ってくれるような体験でした。自分はこういう楽器のようなスピーカーが好きです。

 もちろん正確に再生する変換器としてのスピーカーも魅力なのですが、楽器のようなスピーカーは今ここで新たに演奏しているような面白さがあるんですよね。ある意味このスピーカーは楽器スピーカーの最右翼のような存在ですね。

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_tanihiro.pdf


χ't(カイト)さん:2way 平面バッフル


2way 平面バッフル:表面と裏面。
取り外し可能なスタンドで自立する

 χ't(カイト)さんは初参加。フルレンジ+ウーハーの2way平面バッフルスピーカーです。平面バッフルの伸びやかな音にジャンクで入手した20cmウーハーで低音を補うという構成。シンプルですが縦長の平面バッフルはカッコいいですね。

 バッフルは無補強ですが板厚24mmのMDFはかなり頑丈。ウーハーを下部にマウントすることで安定感もあります。フルレンジは定評あるマークオーディオ製 OM-MF5(Stereo付録品)で8cmとはいえワイドレンジです。

 ヘッドホンも含めて解放的な音が好みとのことで好みも近いかも。自分も最近オープンバッフルに興味あったので楽しみでした。

LANケーブルを流用した配線も特徴。
小さいコイルに驚いたけど大きい物と聴き比べてみたい。

【試聴してみて】

 まず平面バッフルらしい伸びやかな音が印象的。ボーカルも歪み感が少なくて聴きやすいです。フルレンジユニットが高い位置にマウントされているのも反射防止に効いてる気がしますね。定位感は前出のたにひろさんと同じくスピーカーの上部に定位する感じ。背面反射の影響なのかな?

背面に吸音材を被せたセッティングで試聴


 とはいえインスト曲がやっぱり合いますね。金管の音も良かったので吹奏楽も合っている気がします。開放的な響きを生かした曲がいいですね。ただフルートの音にちょっと歪み感を感じたのは部屋の影響かな?

 平面バッフルが苦手とする低音ですが、案外バランス良く極端な不足感は感じませんでした。横40cmと幅狭なバッフルですがウーハーの下部マウントの効果があるのかな?思ったより出てますね。ウーハーはテクニクスのジャンクだそうですが、こういったクラシカルなウーハーと相性が良い気がします。

 個人的にも色々参考になる作品でした!

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_x't.pdf


真空管のスワンチャンさん:オウムガイ


オウムガイ:床置きのセッティングで試聴

 かなりの力作となった真空管のスワンチャンさんスパイラル・バックロードホーンです。長岡鉄男氏のD-103を参考に1.8mの音道を曲線化。音道に丸棒を使うアイデア自由な曲線を実現しています。しかも丸棒の凹凸を全てパテ埋めする丁寧さ。Twitterでも製作過程を発表していましたがこれはかなりの労作ですね。

 実は自分も擬似曲線を使ったスパイラルホーンを構想していたのですが、このやり方は想定外。とはいえパテ埋めの量は半端なく簡単には真似できませんね

 さらにFostexの限定ユニットFE103Aの銘板を見せるためにサブバッフルと背面パネルをアクリルで透明化。塗装も漆に似たカシュー塗料※で仕上げるこだわりです。

※イベントではまだカシュー塗料は未使用だったようです。墨汁を利用した着色に2液ウレタンシーラーで表面を整えた状態での出品。カシュー仕上げは乾燥に時間を要するため今後進めていくとのことでした。失礼いたしました。

アクリルのサブバッフルが美しい。

【試聴してみて】

 試聴では開口部を外向きにして床置きのセッティング。まず量感のある低音が印象的。さらにFE103Aのキレのある中高音でガツンときます。

 バッフルの大きさもあってエネルギッシュさが強調されるんでしょうか。以前自分で作ったスパイラルホーンD-111(エスカルゴ)でも似た印象でした。

 FE103Aの元々の音色もあるんでしょうが。大編成のオーケストラとかも聴いてみたくなりますね。

開口部はかなり吸音材を使用。
曲線では中音域も出やすいのかもしれないですね。

 ただ当日はかなりひびき響きやすいライブな環境。床置きのため反射の影響も大きかったかもしれません。前方に座っていたので特にそう感じたのかも。もう少し台で持ち上げて、壁に近づけたセッティングとかでも聴いてみたい気がしますね。

 真空管のスワンチャンさんからは他に電源ケーブルの比較試聴もありました。楽曲も新旧織り交ぜた選曲もセンスが光りますね。楽しい試聴でした。

背面も透明なパネルで空気室が見える

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_swan.pdf


Atsuさん:作品名未定(3Dプリンタ出力エンクロージャー)

出力した部材を展示。
ウーハーを仮置きした状態。

 前回も3Dプリンタを使用した作品で話題になったAtsuさん。今回はエンクロージャー全てを3Dプリンタで出力した作品を製作。Twitterでリアルタイムに出力する様子を発信して楽しみでしたが、惜しくもマウント部分のプリントに問題があり完成に至りませんでした。

 当日は経緯と製作趣旨をカノン5Dさんとの対談形式で語るトークセッションに変更。実物のエンクロージャーは大型で非常に美しい仕上がり。単に箱型にするだけでなく内部構造も3Dプリンタならではの工夫があります。

 特に側面〜後面にセメント注入用のスペースを設置したアイデアは秀逸。軽量なPLA素材の欠点を補う事でスピーカー材料としての可能性を見せてくれました。

2分割で出力。側・背面にセメント注入スペースがある。

 白い部分が下部ウーハー部でオンキヨーのウーハーを使用予定。青い上部はツイーターとバスレフポートをマウント予定。出力時間は下部が5日上部が3日ほどとの事。下部は成功したのですが、上部は青フィラメントの性質の違いによる出力の難しさがあったようです。

 マウント部分は別パーツとして分割すれば解決できたかもと悔やんでいました。試聴できないのは残念でしたが、興味深い話と製作途中の内部構造を見ることができてよかったです。

問題のマウント箇所。
サポート材のバリ取りが難しく別パーツにすべきだったとの事。



zukinkunさん:Sony SS-AL3 改


SS-AL3 改 言われないと改造したと気づかない外観

 zukinkunさんの作品は市販スピーカーのエンクロージャーのみ利用して、ユニットからネットワークまで総入れ替えした作品。元はSONYの製品ですがイタリア製の非常に質の良いエンクロージャーを利用しています。

 ツイーターは独Visaton社のG20SC。ウーハーは15cm級のWavecor社のWF152BD04です。

 シミュレーションを利用したLR4 -24dB/ octの本格的なネットワークも内蔵。ピッタリサイズの新ユニットはとてもキレイに収まっています。


【試聴してみて】

 かぐや姫の物語の曲では声のリアリティーが印象的。外観から落ち着いた音色かと思ったのですが、意外にも華やかな音色ですね。もちろんやかましい派手さでは無くあくまで上品な感じ。3曲目のナディアの曲では空間表現の広さを感じました。この辺は-24dB/octのクロスオーバーの効果でしょうか。

自作イベンドでは逆に新鮮なオーソドックスな外観。


 最後はオネアミスの翼の曲。引き締まったタイトな低音が印象的。きっちりと設計されたネットワークの音を体験できました。

 あえて言えば1曲目のガンダムでは高音にキャラクターを感じる部分もあったのですが、これはライブな部屋の影響かもしれません。もっと普通のデッドな部屋で聞き込みたいスピーカーですね。

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_zukinkun.pdf


SGNさん:NF-1SIT


NF-1SIT:シルバーとブラックの力強いデザイン
オリジナルよりカッコイイかもしれない。

 芝工大サークルからの出品。この直前までコイズミ無線で展示試聴されていた作品です。

 大きな外付けネットワークが目を引きますが『自作スピーカーマスターブック』を参考に『スピーカー測定・Xover設計 講習会』ではこの作品を題材にシミュレーションの実践をしていました。

 私もZoomで拝見してたので実際の音が聞けるのが楽しみでした。

 FostexのNF-1をイメージした作品で、独特の外観の16cmウーハー『FW168HRが目を引きます。ツイーターはマグネシウム振動板T200Dとリッチな構成。ツイーター部は後ろにずらしたオフセットマウントも特徴。表面はシート仕上げで美しいです。

大型の外付けネットワークが目を引く
【試聴してみて】

 一聴して低音の迫力が印象的。外観のイメージ通りのエネルギッシュな印象でした。とはいえ無闇に強調されているのではなくバランスの良さを感じますね。

 高音域はメタリックな音色ですがクリアな印象。『宇宙より遠い場所』の曲ではボーカルのクリアな感じに良く合っていました。

 反面、終物語の曲では声が大きくなる所で歪み感を感じるところも。この辺はやっぱりライブな部屋の影響かな。もう少しデッドな環境で聞き込みたい作品かもしれません。

 癖が強く難しそうなユニットをよくまとめたなぁと感心しますね。ネットワーク初心者としてレポートの体験談もすごく参考になります。また楽曲のセレクションもセンスがよかったです。

'80年代ミニコンポ的というか、独特のカッコ良さがありますね。

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_sgn.pdf


Taskさん:Kepler -compact-


Kepler -compact-:美しいWG一体型バッフル
振動板形状まで考慮して精密にシミュレーションされている。

 Taskさんシミュレーションを活用して理論を重視したスピーカービルダーの一人。一般のアマチュアとは完全に一線を画すレベルですね。比較すべきはハイエンドオーディオの世界かもしれません。

 本作はDMM.makeの業務用3Dプリンタで出力した『楕円ウェーブガイド一体型バッフル』を持つ2Way+背面パッシブラジエータ式スピーカーです。

 バッフルはナイロン製で1枚あたりなんと3.7万円!高いですが一般用とはレベルの違う質感でした。時間の関係で塗装までは完成しなかったそうですがバッフルの美しさは目を見張りますね。

 ユニットは全てSB Acoustics製。ウーハーは16cmクラスパッシブラジエーターは5×8インチ(約12cm×20cm)の大型楕円ユニット。自分も前回はパッシブラジエーターのスピーカーを出品したのでその意味でも楽しみです。

 詳しくは公式資料を見ていただくとしてシミュレーションとの比較が素晴らしいです。ウェーブガイドの解説もすごく参考になりました。(とはいえ理解が難しい所も多いのですが)

背面の巨大なパッシブラジエーター

【試聴してみて】

 1曲目のSHOW BY ROCK!!の曲で音色の繋がりの自然さが印象的ですね。繋がりに全く違和感を感じません。音場感の良さはウェーブガイドの効果でしょうか。さすがに見事です。

 ガルパンの曲では金管の響きが美しく低音にもクセがない。4曲目のCLANNADの曲では解像度の高さが印象的でした。

 背面の巨大なパッシブラジーエターには驚きましたが、小型のBluetoothスピーカーにあるパッシブラジーエターとは意味合いがかなり違います。本作は十分な空気容量ですのでバスレフの方が低音の量感を出せますが、あえて低効率となるパッシブラジーエターを使うことでより質感の高い低音を狙っているのだと思います。

 密閉ではさすがに物足りなくなりますが、パッシブラジーエターなら中間的な特性になることが資料からわかりますね。今作の狙いから言っても量感より質感を重視したのでしょうか。

 バスレフのデメリットを排したおかげか、繋がりの良い中高音にピッタリの上品な低音だった気がします。パッシブラジーエターの振幅についての解説などもあり、とても学びの多い試聴となりました。

WGは結構深さがある。
MDF部は白く塗装したいとの事でした。
黒シートでツートンカラーも良さそうですね。

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_Task.pdf


カノン5Dさん:Concept-SOLA Grand Master 2


2年越しに完成形となったサブウーハー
自作ネットワークと試作した補強部品も展示。

 大トリは主催者であるカノン5Dさん。ネットでも試作を繰り返していた補強型コーンを使ったサブウーファーが今回の作品。昨年は竹ひごで補強コーンを試作していましたが当時はここまでの完成度を想像していませんでした。

3Dプリンタで出力した補強部材をコーンに装着。
外観も非常に美しいウーハー。

 サブウーハーなんて大きな箱重いウーハー用意すれば十分じゃないの?と思いがちですが、低音の質感を重視するカノン5Dさんは違います。2WayスピーカーのConcept-SOLAにマッチするマッシブな低音を求めて、コーンの剛性化からエンクロージャーまでトータルに研究。

 低音の質感といってもピンとこない人も多いかと思いますが、自分も正直ちゃんと理解できてない気がします。今回はConcept-SOLAと合わせたシステムとして試聴。単体のConcept-SOLAは一昨年、試作ウーハーシステムとしては昨年も聴いています。今回はどう変わったか楽しみです。

Concept-SOLAと合わせて試聴。


【試聴してみて】

 いやはや・・・お世辞じゃなくてこれはスゴイです。この厳しいライブな環境でここまでの音を出すとは。ちょっと感動ですね。

 元になるConcept-SOLAから低音が延長されたというだけでなく、Concept-SOLA自体の質感がさらに上がったような感覚になります。ホントに欠点を見つけるのが難しいほど。

 1曲目はルビィちゃんの曲。な、なんと、この環境でルビィちゃんの声が歪まないだと・・・すごい(笑)あとこの曲なんでこんなスゴイ低音入ってるんだ・・・。

 2曲目の家入レオさんの曲。さわやかなボーカルにウーハーの低音が心地いい。全く邪魔をしません。ただ出てるだけの低音ではなく質感の良い低音とはこういうことなんだと実感。

 そして『とある科学の超電磁砲』の『only my railgun』もスゴイ。ただでさえ再生の難しい曲ですがこの厳しい環境でギリギリ破綻なく再生しています。無難な曲でまとめるのではなくこういう限界を見せる選曲もさすがですね。

 サブウーハーというとピュアオーディオとは違うイメージを持つ方も多いでしょうが、そういった物とは次元が違いますね。まさにConcept-SOLAの『Grand Master』の名の通りシステム完成形の音だと感じます。


 低音の音色や質感まで追求できるきっかけになりました。低音と倍音との関係などの解説も参考になりました。自分も色々試したみたい意欲に駆られる試聴でしたね。

補強部品の試作の数々
とても興味深い資料を公開してくれました。

発表資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_kanon5d.pdf

技術資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_kanon5d_02%20.pdf

最後に:見える世界が広がる多様性

  本当にバラエティーに富んだ作品群でしたね。安価な部材から高いものまで、変わった構造から正統派なものまで、こういう幅広さってあまり見ないですよね。自作スピーカーとしては本当の意味で多様性がある気がします。

 そして出品者の皆さんのお話が本当に学びになり、たくさんのインスピレーションを得ることができました。まさに『世界が広がる』ような気持ちです。

 これもアニソンという世代を超えた繋がりのおかげですよね。幅広い世代が交流できる接点になっていると実感します。

 また大勢の方が参加できる日が到来して欲しいですね。主催されたカノン5Dさん。本当にお疲れ様です。ありがとうございました!

過去のイベントレポートです 

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自己紹介

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手の届く範囲で楽しんでいます。アニメ・自作スピーカー(長岡系)・オーディオ工作・Mac関係・・・などなど雑多ですがささやかな発表の場です。まどか☆マギカで目覚めて今は京アニ系ファン。40代既婚 自営 埼玉県在住 Hatena id:kato_19 ブクマ大歓迎 Twitter @id_kato_19です。詳細はブログの自己紹介エントリへ

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