2021年3月23日火曜日

書評:自作スピーカー マスターブック 3冊読んでみた感想とそれぞれの特徴。

 『自作スピーカー マスターブック』シリーズの3冊を読みました。

 自作スピーカー界隈ではかなり話題になったシリーズですね。どのくらい売れたんだろう?最近はコイズミ無線などでも販売され一層手に入りやすくなりました。

 今回3冊を読んでみての感想それぞれの特徴なんかを書いてみました。自分は自作経験だけは長いのですが、いわゆる文系卒で数学も苦手なので想定読者とはちょっと違うかもしれません。そういう視点での感想となる事をご容赦ください。

第一弾はKindle版で読みました。書籍版はA4の大判です。

 結論から言えばこのシリーズを読んで良かったです。得る事は多かったし、何と言っても視野が広がる思いがしました。とはいえ一読してピンとくるほど簡単じゃないですね。

 特に第一弾は難しいです。一見すると非常に平易に書いてあるように見えますが、理解するのは結構時間がかかりました。(今もちゃんと理解できてるとは言えませんが・・・)


中級以上向きとはいえ、第3弾は初心者にもオススメ!


 実際この本の対象者は『自作スピーカービルダー中級以上』とされています。ただ3冊それぞれ微妙に違いがある気がしますね。

 中級というのが具体的にどの程度かは議論があると思いますが、私が思うに自作スピーカーを数セット作ってみた人でしょうか?

 そう考えると第一弾の『測定・Xover設計法 』は明らかに経験者向きです。というのも、基本的に本書のスタンスが『従来の日本の一般的な設計法』に対するアンチテーゼとなっているからです。

 それに対して、第2弾・3弾はより広い読者層向けだと感じました。

 第2弾『エンクロージャー設計法』は本格的にスピーカー設計をしてみたい人に向けた教科書として最適に感じました。

 さらに第3弾『デザインレシピ集』は自作スピーカーに『興味はあるが経験はない人』にとっても見ているだけで楽しめる内容になっています。

 この3冊はそれぞれ補完関係にありますが、必ずしも第一弾から順番に読む必要はなく、各人の段階で読みやすいものから読み始めるのをお勧めしたいですね。

※次項から各本の書評になります。まだまだ読み込みが足りない部分も多いです。事実誤認などありましたらご指摘ください。


『自作スピーカー 測定・Xover設計法 マスターブック』感想

最初はピンとこなかったが、霞が晴れるようなカルチャーショック!

『自作スピーカー 測定・Xover設計法 マスターブック』
Kindle版、書籍版がある。

 シリーズ最初に刊行されたのが本作『 測定・Xover設計法 』です。Xoverと書いてクロスオーバーなんですね。最初はXoverという名前の設計法があるのかと勘違いしてました。

 実は本書はもう何年も前に読んでいたのですが、その当時はまだピンとこなかったんですよね。元々はユニットのT/Sパラメーターの測定法を期待して読んだのですが、目的と違っていたのでしばらく放置してしまいました。

 本書は2Wayスピーカーを前提としているのでフルレンジ派にはあまりピンとこなくて当然なのですが、そもそも当時は2Wayのメリットがイマイチわかってなかったというのもあります。

 レンジ的には十分高音まで伸びているのに、わざわざ費用と手間をかけて2Way化するメリットってあるのかなぁ?と当時は素朴に捉えていました。Fostexなどフルレンジの音が結構好きだったこともあって興味が薄かったんですよね。

 その後、必要にかられて2way化する経験があり、改めて本書を読み直すと「なるほど!」感じる点が多く、ようやく読むべき時に来たのだと感じました。

理論と測定方法が続く前半。目的を持たずに読むと迷子になった。

 前置きが長くなりましたが、本書の内容は大きく分けると『測定』と『クロスオーバー設計』の二つです。スピーカー設計には測定が欠かせないことを根拠を用いて説明しています。

 特徴はARTA(LIMP)Speaker Workshopなど海外でメジャーなソフトウェアを活用している点ですが、その前提として従来のクロスオーバー計算式による設計法を現実に合わないものとして否定します。

 これまでシンプルなネットワーク回路で2Wayを製作した経験のある方はわかると思うのですが、実際は設計どおりの特性にならなず完成後に試行錯誤するというのが半ば常識だった気がします。

 本書は冒頭からその理由を説明するとともに、現在では測定器やPC環境の向上によりはるかにに正確なシミュレーションができることを説明します。

 ちょっと驚いたのは、クロスオーバー設計のためユニットをエンクロージャーに取り付けて測定すること。まず先に箱を完成させて箱込みの測定値を前提に設計します。これは考えてみれば当然のことなのですが軽いカルチャーショックでした。

 でも従来でも、完成後にネットワークの調整をやってるのですからよく考えれば同じことなんですよね。Acoustic slopeElectrical slopeという概念に最初は面食らいますが、理解できるとこれまで霞がかっていた視界が開けたような感じがします。

測定方法は図や写真を用いて丁寧に解説している。

 また個人で『総合周波数特性』が算出できるのもとても魅力的に感じました。従来は部屋の影響込みでしか測定できませんでしたが、本書の擬似無響室測定を組み合わせることでメーカー品と同じように素の特性を比べることができます。

 とはいえ、本書はあくまでマルチウェイ経験のある(あるいは関心の高い)スピーカー製作者向けです。特に前半は理論や測定方法が中心なので入門レベルの人には退屈でしょう。また測定機材も安いとはいえ合計2万円を超えますのでハードルは高いです。

 しかし個人でもメーカー製と勝負できるレベルのマルチウェイスピーカーが製作できるという点ではとても夢がありますね。

 ただ、私のような自作経験が長いだけの中高年の読者にとっては少し刺激的かもしれません。馴染みのある従来の設計法やシンプルな1次フィルタに対する否定の仕方は容赦なく、自分が否定されたような気分になります(笑)

 また、測定治具の自作も回路図や写真は丁寧で読みやすいのですが、いざ作ろうと思うと意外と面倒です。部材の調達実際の配線図は省略があり慣れない人は注意が必要です。

 内容自体は従来の書籍やネットでも断片的に記述されているものもあるかもしれせん。でも実践的に1冊にまとめたという点で非常に得難い書籍です。

 正直言うと自分にはまだまだ理解できていない部分は多いのですが、それでも本書の『考え方』を知るだけでもとてもメリットがありました。自己の段階に応じて長く読み直したい書籍ですね。

2017年4月刊/価格 1,500円(税抜)/A4モノクロ114ページ
著者 Iridium17/発行 SK Audio(同人誌)
URL: https://diy-audiospeaker.sub.jp/product/vol-1/


『自作スピーカー エンクロージャー設計法 マスターブック』

基礎から製作まで。スピーカー製作の最新教科書。

『自作スピーカー エンクロージャー設計法 マスターブック』
Kindle版、書籍版がある

 マスターブック第2弾となる本書も対象者は中級者以上となっていますが、ただ、こちらは第1弾より幅広い読者層を想定しているようです。

 タイトルこそ『エンクロージャー設計法』となっていますが、実際には音響の基礎から製作・測定まで幅広く説明されています。前半は理論中心の解説、後半は実際の製作で学びます。まさに自作スピーカーの教科書という雰囲気です。

 もし最初にシリーズを読み始めるとしたらこちらを先に読んだ方が良いかもしれません。第一弾は明らかにハイアマチュア向けで本書の内容を前提としている所があります。

 逆に第一弾をちょっと難しすぎると感じた人は、ぜひこの第2弾をオススメしたいですね。とはいえ理論部分は、全くの初級者には難しい・・・というか、詳しすぎてやる気を削ぐかもしれません。

 フルレンジやバックロードなどを1、2セット作ってみたけど、今度はオーソドックスな2Wayを設計してみたいと考えている人にはピッタリです。知りたいと思った情報や、理論的裏づけが面白く感じると思います。

自分で調べるのは大変な情報も多く参考になります。

 理論編の後は、実際の2Wayスピーカーを製作する過程を追うように構成されています。こちらは、中級者以上の方には実践的な設計の参考になりますし、初級者でもこのまま製作をして完成させることもできます。製作過程も非常に丁寧に説明されています。

 ネットワーク設計や測定についても説明がありますが、当然ながら第一弾の方が圧倒的に丁寧に説明されています。こちらについては第一弾と合わせて読みたいところです。個人的にはT/Sパラメーターの算出法が丁寧でありがたい所でした。

 また、実際に製作したスピーカーのインプレッションもあり、作りたいという気持ちにさせるのも良いですね。言葉は知っているけれどよく分からない用語の理解の助けになります。中級者以上の人には既知の事項もありますが教科書として手元に置いておきたい書籍です。



※Kindle版はありますが読み放題対象ではありません。

2018年9月刊/価格 2,000円(税抜)/A4モノクロ160ページ
著者 Iridium17 だし 熊谷健太郎/発行 SK Audio(同人誌)
URL: https://diy-audiospeaker.sub.jp/product/vol-2/


『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』

読むだけで楽しく学べる。初心者にもオススメの作例集。

『自作スピーカー デザインレシピ集 マスターブック』
書籍版のみ


 マスターブック第3弾
は『デザインレシピ集 』として5種のオリジナル設計の作例集となっています。ある意味上記2冊の総決算ですが、逆にこれが一番初心者向けかもしれません。

 小型フルレンジから本格3Wayまで単なる設計図ではなく、実際の設計・製作・測定・インプレッションまで丁寧に解説。読むだけで自然と設計の流れや知識が学べます。

 自作スピーカーに興味はあるけど・・・という方でも無理なく理解できるという点ではむしろ初心者向きです。これ単体で設計・測定は難しいですが、本書を読んだ後なら、他の書籍を読んでもスムーズに理解できると感じました。

 もちろん、最初から完成された設計図が欲しいという人にも最適です。間違いのない答えがここにはありますし、完成した後にユニット交換再調整などの自作ならではの楽しみもあります。

 また、木材カットの外注を前提とした作例となっているので、自作スピーカーに興味はあるけど木工に興味はないという層には得難い作例だと思います。

作例はネジや端子の必要数まですべてリストにしてくれている。

 昔は自分も長岡鉄男氏の作例集を読んでは、実際には作れなくてもどんな音かと思いを馳せて楽しんでいました。本書もたとえ製作しなかったとしても読んでいるだけで楽しく学べる設計集となっています。

 またフルレンジの作例があるのがちょっと驚きだったのですが、高域調整のノッチフィルターの解説をする過程で、フルレンジの難点が分かりやすく理解できるようになっています。この辺もマスターブックらしい方向性だなぁと思いました。

 オールカラーでちょっと高いのが難点ですが幅広く楽しめる書籍ですね。


※Kindle版はありません。

2020年8月刊/価格 3,000円(税抜)/A4オールカラー160ページ
著者 Iridium17 , だし , 髙山秀成 , 大矢秀真 , 熊谷健太郎/発行 SK Audio
URL: https://diy-audiospeaker.sub.jp/product/vol-3/


最後に:製作の指針になる書籍


 難解な部分も多いですが、初学者への配慮もあり、ある程度は自分レベルでも理解できたように思いました。今は自分も測定の準備を進めているところです。

 TwitterBlogで活動している方も多く、公式ページでの補足情報なども積極的に発信しているのもありがたいですね。

 現在、スピーカー工作の環境は昔に比べて非常に良くなっています。ユニットや部材の種類が豊富で非常に手に入りやすくなり、安価な工具請負業者など製作環境もずっと向上しています。結果として自作スピーカーのレベルも向上しやすくなりました。

 そんな中、工作技術だけでなく理論的な向上を支える本書のような書籍や、それを支える人たちが現れた事は素晴らしいと思います。自作ファンとしてはこの波に乗らなきゃもったいないですね(笑)

 もちろん個人的には昔ながらのフルレンジバックロードなども好きです。むしろ自分はあまりオードックスなスピーカーには興味が薄かったりします。それでもこのような技術的な考えは役に立ちますし製作する上での指針になります。

 ぜひ多くの方に手にとって欲しい書籍ですね。

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2021年3月14日日曜日

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』感想: 感動というより慟哭。見事な着地点。(ネタバレ注意)

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を映画館で見てきました。

 素晴らしかったです。もうとにかく終盤はなんだか涙がボロボロ出ちゃって・・・エンディングは嗚咽を堪えるだけ。しばらく言葉が出ませんでしたね。

 なんだろうね。悲しさとか感動とかそういうのを超えてるというか。 TV放送から25年余り。ああ、本当に終わらせたんだ・・・という衝撃なのかな。よくわからない点も含めて、もうグゥの音も出ないほどの完璧すぎる終劇

 心のどこかで『わかりやすく終わるはずがない』ってタカをくくってたんだけど、次々と広げた風呂敷をたたみ出す展開に『ちょ、ちょっと待て・・・マジで?本当に終わらせる気?』って・・・いや終わるのは知ってたけどさ。

 ここまでストレートな『最終回』になるとは思ってなくて混乱してしまった。

※以下全てネタバレ全開です。考察は個人的な解釈で公式なものではありません。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』予告編より
©カラー/EVA製作委員会
当ブログの画像引用について

 綾波が消えて、冬月が消えて、ミサトさんが死んで・・・そして作品自体が分解されて消滅していくような終盤の構成に、ただ、ただ涙が止まらなかった。もはや感動って言っていいのかすらわからない涙。

 そしてあのラストシーン。ある意味旧劇の焼き直しのようにも見えるけど、自分は全然意味が違うと感じたな。『現実に戻れ』ではない。もっとずっとポジティブ今の時代だからこそわかる意味

 シンジ君ゲンドウにカタをつけに行くように、庵野監督はどうケリをつけたのか?25年の時間を超えたからこそ成立する回答。それを見せてくれた気がする。素晴らしい作品でした。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告・改2【公式】
この予告はホントに素晴らしくって目頭が熱くなった。
いろんな連想を誘う宇多田ヒカルの歌詞の力も凄まじい。


最初の2時間はとにかく面白い


 公開延期には慣れっこになってる身としては、突然の公開日再決定にびっくりして落ち着かない気持ちでしたね。正直もう少し先でいいかなぁ・・・と思ったのですがネタバレしたくないのでちょっと無理して初日に鑑賞!

 期待と不安が入り混じるなか、なんと映画館の帰り客の会話でネタバレを食らうというショックな事件(でも大したネタバレじゃなくて良かった)もありましたが、どうせ初見では理解できないんだろうなぁ・・・なんてある意味達観しながら鑑賞開始しました。

洗練された映像なのに懐かしさを感じる雰囲気作りがうまい。
(本編12分映像より)©カラー/EVA製作委員会

 本編前に振り返り映像入ると思わなくてビックリしたけどあれ良かったですね。Yotubeにも上がってたけど全然知らなかった。

 ナレーションなしでセリフの切り貼りだけなのに見事に再現してるんだよね。映画館で見るとさらに良くて、アレだけでちょっと涙腺緩んじゃった。緊張感も高まるし最高の導入になってたと思う。

 最初の2時間近くは変な言い方だけど普通に面白かったなぁ。155分の長尺ということでダレたりするんじゃないかと心配してたけど全然飽きなかった

 戦闘シーンから風景まで全てハイレベルな美しさ。ホント現代的に洗練されているんだけど違和感はないんだよね。序盤からガッツリ集中させてくるしTVシリーズや破のような爽快感がありましたね。


時間を逆手に取り『今』の作品にした構成に驚き


 そして前半のもう一つの柱。第3村のエピーソード。この構成はホントやられた!って感じ。

 もはや時代は移りいろんな状況が変わった今、正直言うとエヴァという作品とどう向き合えばいいのかわからなかったんだよね。

 少なくとも序・破まではリバイバル感覚で見ていたし、Qだってまだそんな気持ちが抜けてなくって戸惑いがあった。

 でもこの構成でいきなり『』に引き寄せられた。

 もはやリバイバルリメイクのような懐古趣味の作品じゃない。まさに現代の、今の自分の作品にしてくれた。

このカットだけでなんとも言えない気持ちになる。
©カラー/EVA製作委員会

 破から14年の時間が経過し大人になったかつてのキャラクター達。彼らの視点はまさに今の自分たちの視点とシンクロする。

 突然現れたあの頃のままのシンジ達を見る彼らは、日々の生活に追われエヴァのことは心の片隅の思い出となっていた自分だ。

 かつての思い出がまた戻ってきたかのように耽溺する日常シーン。そして自分たちの知る綾波がまた戻ってきてくれた気がしてほっこりしたとき夢は終わる

 動と静。とにかく面白い2時間。そりゃわからないことも多いけど、細かいことは気にせず、すばらしい力技でねじ伏せられる感じ。

 普通の作品ならこの時点で満点・・・でもまだなんか足りない。ただ面白いだけで終わったらエヴァじゃないような・・・そんな気持ちに気付いた時。唐突にレールが切り替わった。


ラスト30分。急激にくるギアチェンジ。


 残すところラスト30分。急激にくるギアチェンジ!きた!きた!エヴァが来た!。

 妙に違和感のある3D映像。陳腐な舞台。すべてが作り物であるということを強く暗示させる演出。メタフィクションとして物語が次々に分解されて・・・そして最後は原画にまで

 ああ、やっと来た。これがなくっちゃエヴァじゃないあざとい?確かにそうかもしれない。でもここからだ。ここから監督はどうするんだ?

 ゲンドウを追って人智の及ばない世界に向かうシンジ覚悟を決めたシンジの言葉が監督の思いと重なって聞こえた。

ここからのゲンドウの展開には良くも悪くも驚いた
©カラー/EVA製作委員会

 そこからのゲンドウの独白。えっ?えっ?そこまで分かりやすくやっちゃうの?わかってる、わかってるけど・・・・え?さらに各キャラの丁寧なまでの解説!

 うそ・・・ちょっと、マジで、これは・・・本気で終わらせにかかってる?監督が責任を取って、全てにケリをつけるような猛烈な回収

 意味のわからないレベルで涙が止まらなくなるこれを感動って言っていいのか?そういうのとはなんか違うのかもしれない。でもとにかく涙が出る。この20年余りの自分の思い出どんどん回収されていくような。

 呪縛からの解放?そもそも解放なんてされたかったのか俺?

 そうだった。自分はまだ『覚悟』ができてなかった。答えはとっくに決まってるのに・・・そんな自分に監督は有無を言わせず突き進んでいく。

 心の準備ができないまま大切なものがどんどん消えていく・・・感動というより慟哭といったほうがふさわしい嗚咽・・・終着駅が近づいている


自分は『現実へ戻れ』とは解釈しない


 そして、全てにカタがついた後。駅のプラットホーム

 あれはどうなって、何を意味しているのか。まだわからない。ちらりと見えたカヲル君綾波みたいなカップル。あれは幻だろうか。アスカは多分いないんだろう・・・そして成長した姿のシンジマリ

予告編では全く気付かなかったね。
©カラー/EVA製作委員会

 ラストシーンの駅前の風景。二人は明るい駅の外へ出て行く。旧劇を連想させるラストシーンだけど、自分はそれを『現実へ戻れ』とは解釈しない。

 もはや現実とアニメを区別する意味などなくなった。

 25年前。アニメおたくだった彼らは、今や社会の主要を構成し、アニメはごく一般的な娯楽ジャンルとなった。

 いまや『アニメおたくが現実に戻る』なんて概念自体がナンセンスなものになった。

  だって、あの駅前の風景。リアルだけど3DCG併用のハイパーリアルな映像。あれこそが『アニメとリアルに境目なんかない』という現実を物語っているのだと思う。


 時代は変わった。それを自覚させてくれる見事な着地点。

 

 かつて『 ATフィールド』という概念は個人の関係のみならず、アニメおたくと現実社会の軋轢をも表現していたと思う。

 だから旧劇の時代では、この新劇の解釈は通用しなかったはず。あの頃の未来。2021年の今だからこそ成立する回答。これは『待たされた』のではなく『機が熟した』というべきだったのかもしれない。

  それと同時に終わってはいけないものが終わったような、失いたくなかった大切なものが消えてしまったような・・・そんな大きな喪失感を感じてしまう。

 エヴァファンがまだ奇異な目で見られていた時代。それでもあの時代だからこそ感じる風があった。

 長い長い祭りは終わり、一つの時代が過去のものになった。エヴァが終わらない限り、自分はそれに気づかないフリができたのかもしれない。でも終わってしまった。

 だから宇多田ヒカルOne Last Kiss』の歌詞が本当に心に沁みる。たくさんの『忘れたくないこと』をありがとう。

 素晴らしい作品。傑作でした!

宇多田ヒカル『One Last Kiss』(公式)


「残酷な天使のテーゼ」MUSIC VIDEO(HDver.)KING RECORDS 公式
TV版のダイジェスト こちらも見たくなりますね。

シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 公式サイト:https://www.evangelion.co.jp/final.html


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2021年2月10日水曜日

『アニソンオーディオフェス 2020』に参加しました。自作スピーカー11作品を全レビュー!

  今年もカノン5Dさん主催の『アニソンオーディオフェス 2020』に参加してきました!自作出品者も前回の7名から11名に増加。学びが多く非常に充実した試聴会となりました。ホントに楽しかったです!


 本来は夏にも予定されていましたが自粛ということで中止に・・・冬もどうなるか?と心配されましたが12/22日非常事態宣言前ということで、人数制限や各種対策を万全にして開催の運びとなりました。

 せっかく大きな会場なのに試聴人数が少ないのは残念ですが、それとは対象的に参加作品は過去最大の11作品。アニソンオーディオフェスらしくバラエティーに富んだ作品で大変充実したイベントになりました。

アニソンオーディオフェス』は自作オーディオ(アンプ・スピーカー・アクセサリ等)の発表のイベントです。主催者のカノン5Dさんは個人ブランドAudiFillを運営する経験豊富なスピーカービルダー。

 自作イベントには使用部材にレギュレーション(縛り)がある事が多いのですが、このイベントは試聴曲にアニソン縛りがあるというのが特徴。試聴だけの参加もOKのとても自由なイベントです。

過去のイベントレポートです。 

関連記事  『アニソンオーディオフェス 2019 冬』に参加しました!各作品の感想レポートも。:アニメとスピーカーと‥

関連記事  『アニソン試聴会2019夏』レポート:自作ホーンスピーカーの初発表!:アニメとスピーカーと‥


もくじ



当日の模様:少人数でも充実したイベント


 当日は穏やかな晴天。会場は昨年同様、東京都小金井市の東小金井マロンホールです。今回は3回目の参加ということで多少慣れてきたとはいえやっぱり緊張しますね〜

 今回は出品者が増えたので午前中からのスタートです。今回はなんとトップバッターの発表になりました。昨夜は遅くまで発表の準備で寝不足気味(汗)

 当日は準備も含めて20分の持ち時間なんですが、今回はどうしてもかけたい曲が多くてですね〜トークも含めて秒単位の台本を書きました(笑)でもやっぱり無理がありますよね。電車の中で練習してましたがなかなか厳しい・・・。

 会場では前日から設営に入っていたカノン5Dさん初め、出品者の皆さんと久しぶりの挨拶。今年からの参加の方とも話が弾みました。(マスクソーシャルディスタンスには気をつけながらですが)

 世間話は苦手ですが作品を前にしての会話は楽しいですね。参考になる発言を聞き逃さないように必死でした(笑)今回はカノン5Dさんの計らいで出品者には名札が配られたので非常に助かりました。

 完全無料イベントではありますがカノン5DさんよりJASRACへ許諾申請を行ったとのこと。せっかく許諾を受けても観客数が制限されてホント残念ですね。せっかくですので今回は事前に試聴曲のレビューなどを発表して盛り上げてみました。

 当日の流れは下記公式ページの資料も合わせてお読みください。

タイムテーブルと発表資料AudiFill 公式)

http://www.audifill.com/event/011_020/event_016_3time.html

公式開催レポート

http://www.audifill.com/event/011_020/event_016_5guide.html

 それでは次節より各作品の紹介簡単なレビューになります。

 当日は観客が少ないこともあってかなり響きやすい環境。試聴には少々厳しい条件です。しかも短時間の試聴です。もし事実誤認などあればお気軽にご指摘ください!私の着座位置は前方2列目右側でした。


kato19:天面ウーハー2way


天面ウーハー2way:フロントはツイーターのみを設置
90度以上に曲げた天面にウーハーをマウント。

 まず最初はなんと私・・・kato19です。ユニットの大きさ順とのことで8cmウーハーの自分がトップバッターとなりました。

 本作はウーハーを天面にマウントして前面にはウェーブガイド付きのツイーターのみを配置した2Wayスピーカーです。ユニットはStereo2014年付録品ですが、かんすぴ 2Way用のPW80KPT20Kと同一製品。FOSTEXで最もベーシックなPシリーズを使っています。

 ウーハーを横向きに聴くことで中高音を減衰させる狙いでしたが、このユニットはウーハーとはいうものの20kHzまで伸びるフルレンジ的特性。真横以下にしても高域のピークを十分に落とせません。コイルのみの1次フィルタで満足できる減衰になりました。

 ウーハーは20kHzまで伸びているとは言えスルー接続では高音に粗さを感じます。2way化でずいぶんと端正な音になりました。ボーカルもクセが少なく安心して鳴らすことができます。FoxtexのFEシリーズに比べるとおとなしい感じですが、アニソンについては楽曲を選ばないのがメリットかも。

カバーを外して8cmウーハーが見える状態
ネットワークはターミナル部に外付けしている
【当日の様子】

 当日は『自分の作品こんな小さかったっけ!』って我ながら驚くほど。他の作品と並ぶとその小ささが際立ちますね。会場が広いだけになんとも心もとないです・・・。

 ただ今回かなり響きやすい環境ですのでおとなしい音色はむしろラッキーでした。低音はそれほど下は伸びてないのですが量感があるので不足を感じない曲が多いです。見た目の小ささからくるイメージとのギャップもあり意外と出てるじゃん!という印象を持っていただけたようです。

 ツイーターのウェーブガイドデザイン的なインパクトもありますが、変な癖もつかず一定の評価をしていただけたのは嬉しかったです。今後もウェーブガイドのバリエーションを作ってみたいですね。

 この作品はニアフィールドで試聴すると上下位置によってバランスが変わるというデメリットがあるのですが、広い会場だと相対的に気にならないですね。自画自賛というのもアレですが予想以上にいい感触をいただけて嬉しかったです。

 なお、当日の楽曲紹介は下記をご覧ください。楽曲を長く流したかったので今年は事前配布にしました。やっぱりヴァイオレットの曲で言葉が詰まりそうになってしまったので用意しておいてよかった・・・とはいえ、ちょっと時間オーバーしちゃいましたね。開始時刻が早かったのでご愛嬌ということで・・!

関連記事  kato19_楽曲紹介:アニソンオーディオフェス2020 リンク集

今回のスピーカーの製作記事です。順次追記予定です。

関連記事  ウーハーを天板に配置した2way+自作ショートホーンの自作スピーカー:Fostex PW80/PT20 使用:アニメとスピーカーと‥


赤さん:湯円(タンユェン)


湯円:半球を合わせて球体を実現
3点スタンドで安定して設置している。

 赤さんの作品は前作の円柱状エンクロージャーをさらに発展させた球形スピーカー。今回は半球状の陶製植木鉢を組み合わせて表面は漆喰仕上げするアイデア。リアはターミナルを兼ねたバスレフポートカバーです。

 実際に見ると予想以上に大きく感じて存在感ありますね。陶器製なので重量感も相当ありそうです。製作が難しい球形スピーカーですがこの手法は幅広く応用できそうな気がしますね。

 ユニットはVisaton 10cm同軸型のPX10HFコイズミ無線で扱ってるものだと思いますが、同軸のツイーターがピエゾタイプなんですね。

 ピエゾツイーターはブザーなどで使われる圧電スピーカーと同じ方式ですが、オーディオ用としてはホーン一体型を良く見ますね。自分はホーンタイプを使ったことがありますが独特のキャラクターのある音という印象でした。

 ピエゾツイーターが同軸タイプで使われるのは初めて知ったので興味津々。ただ心配なのは特性図を見るとツイーター付きにしては高域の伸びが控えめなところ。それも含めて試聴ではどう聞こえるか楽しみでした。

表面は漆喰仕上げで凹凸の効果も狙う


【試聴してみて】

 試聴してみると高域の不足感は案外気にならないですね。これは選曲の妙もあるのですが、ボーカル帯域が厚く感じてすごく聴きやすい。ギターやボーカルが前に出る感じです。

 定位感の良さはさすが球形スピーカーボーカルメインの曲にはピッタリです。陶器ということで余計な響きがありそうですが前作同様全く感じません。今回はフエキ糊と綿で対策しているそうでそれも効いているのかもしれませんね。

 ピエゾツイーターについては確かに独特の音色を感じますが、ホーンが無いせいかそれほど主張はしないですね。ただサックスの音色はピエゾツイーターの音色とすごく合ってた気がします。リード楽器の発音に近いので妙にリアルに聞こえるのかもしれませんね。これは意外な発見でした。

 このユニットは同軸2wayに見えてフルレンジと表記してあって不思議だったのですが、もしかしたら高域を付加するのではなくて、この音色にするのが狙いなのかもしれませんね(想像ですが)。スーパーツイーターで10kHzオーバーを付加した音も聞いてみたい気がしました。

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_aka_2.pdf


FE203さん:ヒゴロモ


ヒゴロモ:スタイリッシュなデザイン。
外付けのフィルター回路でバランスを調整している。

 この独特の5角柱のスピーカー。この大きさでなんと1.8mの共鳴管方式なんですよね。FE203さんも昨年からの発展形で完成度の高いスピーカーです。

 見事に組み込まれた3角柱の音道に下向きのスリット開口。構造を活かしたデザインも美しいですね。

 共鳴管スピーカーは低音を効率よく鳴らせる魅力がありますが、余計な共鳴音の処理が課題です。前作ではサイドブランチ管などで消音していましたね。今回は詳しい音道構造はわからなかったのですが色々工夫がありそうです。

 さらに本作のユニットはフルレンジのFOSTEX FF105WKですが外付けフィルター回路で低域とのバランスを調整。自分も共鳴管は好きで何本も作ったことがあるのですが、工夫の多いFE203さんの作品には感心することが多いです。

専用ボードの上に乗せた状態。ターミナルは底面。
開口部は底面のスリットを通して低音が出るようです。


【試聴してみて】

 一聴して低域の厚さを感じますね。フィルターの悪影響は感じません。Fostexらしい音色の魅力を保ったまま調整している感じです。共鳴管のクセはほとんど感じず素直な音ですね。ボーカルに変な響きがつくこともなく安心して聴けます。共鳴管でボーカルをキレイに鳴らすのは結構大変なんですよね。

 中高音を抑えたフィルターの調整もいいバランスなんですが、そのせいかコーンの振幅はかなり大きめ。広い会場の大音量ではちょっとヒヤヒヤしましたが、自宅で鳴らす音量ならちょうどいい感じでしょうか。

中高域を減衰させ低音とのバランスを取る回路

 選曲もFE203さんらしさが出てましたね。1曲めの『天空カフェテリア』は自分もかけたかった曲ですがやっぱり来たか!って感じでした。

 2曲めにまさかの『やくしまるえつこ』の『ノルニル』自分もこの曲好きで良くリファレンスにしています。そこからの3曲目『チチをもげ!〜』の落差に笑いました。

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_fe203_02.jpg


タニヒロさん:キャンバストップ2020

キャンバストップ2020:極めて珍しい外観。

 今回初めて聴いたタニヒロさんの作品。従来から独特の構造を持つ後面解放スピーカーを発表されています。以前から興味深く見ていたので今回は非常に楽しみな参加者の一人でした。

 今回の作品はバッフル部に絵画用キャンバス、スタンド部にポリカ製の振動板を設置。16cmのフルレンジユニットからの共振を積極的に利用する珍しい構造になっています。キャンバス部材は以前の試作品からの流用のとのこと。あえて16cm用に穴を拡大せず使用しているそうです。

 後面解放の音は想像できますが、このキャビネットと組み合わさった時にどんな音になるのか。とても楽しみでした。

背面部。縦の振動板の後ろに拡散パネルが設置。
ユニットはフローティングマウントに近い吊り下げ型。

【試聴してみて】

 いい意味で予想外の音でしたね。付帯音の多い音になるかと思いきや、伸びやかで破綻のない音には正直驚きました。一部ボーカルには少々歪み感を感じるところもありますが、水樹奈々さんの歌声は伸びやか。鬼滅の刃の曲では激しい部分でも破綻しないのは感心しました。

 クラッシック系やハープのような響きのある楽器は予想通りキレイに聞かせてくれます。16cmとはいえ小さな平面バッフルの割に中低域のバランスは良好。もちろん低域は少なめですが後面解放としては十分でした。自分の位置からは上方に定位するような不思議な広がりを感じる音場感。

実際に設置すると意外とコンパクト

 後面解放では逆相の打ち消しが問題になりますが、背面のポリカ振動板が打ち消しを緩和してくれる効果があるのでしょうか?また様々な共振によってピークやディップを打ち消しあうということもあるのかも。

 本当のところはわかりませんが常識の殻を破ってくれるような体験でした。自分はこういう楽器のようなスピーカーが好きです。

 もちろん正確に再生する変換器としてのスピーカーも魅力なのですが、楽器のようなスピーカーは今ここで新たに演奏しているような面白さがあるんですよね。ある意味このスピーカーは楽器スピーカーの最右翼のような存在ですね。

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_tanihiro.pdf


χ't(カイト)さん:2way 平面バッフル


2way 平面バッフル:表面と裏面。
取り外し可能なスタンドで自立する

 χ't(カイト)さんは初参加。フルレンジ+ウーハーの2way平面バッフルスピーカーです。平面バッフルの伸びやかな音にジャンクで入手した20cmウーハーで低音を補うという構成。シンプルですが縦長の平面バッフルはカッコいいですね。

 バッフルは無補強ですが板厚24mmのMDFはかなり頑丈。ウーハーを下部にマウントすることで安定感もあります。フルレンジは定評あるマークオーディオ製 OM-MF5(Stereo付録品)で8cmとはいえワイドレンジです。

 ヘッドホンも含めて解放的な音が好みとのことで好みも近いかも。自分も最近オープンバッフルに興味あったので楽しみでした。

LANケーブルを流用した配線も特徴。
小さいコイルに驚いたけど大きい物と聴き比べてみたい。

【試聴してみて】

 まず平面バッフルらしい伸びやかな音が印象的。ボーカルも歪み感が少なくて聴きやすいです。フルレンジユニットが高い位置にマウントされているのも反射防止に効いてる気がしますね。定位感は前出のたにひろさんと同じくスピーカーの上部に定位する感じ。背面反射の影響なのかな?

背面に吸音材を被せたセッティングで試聴


 とはいえインスト曲がやっぱり合いますね。金管の音も良かったので吹奏楽も合っている気がします。開放的な響きを生かした曲がいいですね。ただフルートの音にちょっと歪み感を感じたのは部屋の影響かな?

 平面バッフルが苦手とする低音ですが、案外バランス良く極端な不足感は感じませんでした。横40cmと幅狭なバッフルですがウーハーの下部マウントの効果があるのかな?思ったより出てますね。ウーハーはテクニクスのジャンクだそうですが、こういったクラシカルなウーハーと相性が良い気がします。

 個人的にも色々参考になる作品でした!

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_x't.pdf


真空管のスワンチャンさん:オウムガイ


オウムガイ:床置きのセッティングで試聴

 かなりの力作となった真空管のスワンチャンさんスパイラル・バックロードホーンです。長岡鉄男氏のD-103を参考に1.8mの音道を曲線化。音道に丸棒を使うアイデア自由な曲線を実現しています。しかも丸棒の凹凸を全てパテ埋めする丁寧さ。Twitterでも製作過程を発表していましたがこれはかなりの労作ですね。

 実は自分も擬似曲線を使ったスパイラルホーンを構想していたのですが、このやり方は想定外。とはいえパテ埋めの量は半端なく簡単には真似できませんね

 さらにFostexの限定ユニットFE103Aの銘板を見せるためにサブバッフルと背面パネルをアクリルで透明化。塗装も漆に似たカシュー塗料※で仕上げるこだわりです。

※イベントではまだカシュー塗料は未使用だったようです。墨汁を利用した着色に2液ウレタンシーラーで表面を整えた状態での出品。カシュー仕上げは乾燥に時間を要するため今後進めていくとのことでした。失礼いたしました。

アクリルのサブバッフルが美しい。

【試聴してみて】

 試聴では開口部を外向きにして床置きのセッティング。まず量感のある低音が印象的。さらにFE103Aのキレのある中高音でガツンときます。

 バッフルの大きさもあってエネルギッシュさが強調されるんでしょうか。以前自分で作ったスパイラルホーンD-111(エスカルゴ)でも似た印象でした。

 FE103Aの元々の音色もあるんでしょうが。大編成のオーケストラとかも聴いてみたくなりますね。

開口部はかなり吸音材を使用。
曲線では中音域も出やすいのかもしれないですね。

 ただ当日はかなりひびき響きやすいライブな環境。床置きのため反射の影響も大きかったかもしれません。前方に座っていたので特にそう感じたのかも。もう少し台で持ち上げて、壁に近づけたセッティングとかでも聴いてみたい気がしますね。

 真空管のスワンチャンさんからは他に電源ケーブルの比較試聴もありました。楽曲も新旧織り交ぜた選曲もセンスが光りますね。楽しい試聴でした。

背面も透明なパネルで空気室が見える

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_swan.pdf


Atsuさん:作品名未定(3Dプリンタ出力エンクロージャー)

出力した部材を展示。
ウーハーを仮置きした状態。

 前回も3Dプリンタを使用した作品で話題になったAtsuさん。今回はエンクロージャー全てを3Dプリンタで出力した作品を製作。Twitterでリアルタイムに出力する様子を発信して楽しみでしたが、惜しくもマウント部分のプリントに問題があり完成に至りませんでした。

 当日は経緯と製作趣旨をカノン5Dさんとの対談形式で語るトークセッションに変更。実物のエンクロージャーは大型で非常に美しい仕上がり。単に箱型にするだけでなく内部構造も3Dプリンタならではの工夫があります。

 特に側面〜後面にセメント注入用のスペースを設置したアイデアは秀逸。軽量なPLA素材の欠点を補う事でスピーカー材料としての可能性を見せてくれました。

2分割で出力。側・背面にセメント注入スペースがある。

 白い部分が下部ウーハー部でオンキヨーのウーハーを使用予定。青い上部はツイーターとバスレフポートをマウント予定。出力時間は下部が5日上部が3日ほどとの事。下部は成功したのですが、上部は青フィラメントの性質の違いによる出力の難しさがあったようです。

 マウント部分は別パーツとして分割すれば解決できたかもと悔やんでいました。試聴できないのは残念でしたが、興味深い話と製作途中の内部構造を見ることができてよかったです。

問題のマウント箇所。
サポート材のバリ取りが難しく別パーツにすべきだったとの事。



zukinkunさん:Sony SS-AL3 改


SS-AL3 改 言われないと改造したと気づかない外観

 zukinkunさんの作品は市販スピーカーのエンクロージャーのみ利用して、ユニットからネットワークまで総入れ替えした作品。元はSONYの製品ですがイタリア製の非常に質の良いエンクロージャーを利用しています。

 ツイーターは独Visaton社のG20SC。ウーハーは15cm級のWavecor社のWF152BD04です。

 シミュレーションを利用したLR4 -24dB/ octの本格的なネットワークも内蔵。ピッタリサイズの新ユニットはとてもキレイに収まっています。


【試聴してみて】

 かぐや姫の物語の曲では声のリアリティーが印象的。外観から落ち着いた音色かと思ったのですが、意外にも華やかな音色ですね。もちろんやかましい派手さでは無くあくまで上品な感じ。3曲目のナディアの曲では空間表現の広さを感じました。この辺は-24dB/octのクロスオーバーの効果でしょうか。

自作イベンドでは逆に新鮮なオーソドックスな外観。


 最後はオネアミスの翼の曲。引き締まったタイトな低音が印象的。きっちりと設計されたネットワークの音を体験できました。

 あえて言えば1曲目のガンダムでは高音にキャラクターを感じる部分もあったのですが、これはライブな部屋の影響かもしれません。もっと普通のデッドな部屋で聞き込みたいスピーカーですね。

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_zukinkun.pdf


SGNさん:NF-1SIT


NF-1SIT:シルバーとブラックの力強いデザイン
オリジナルよりカッコイイかもしれない。

 芝工大サークルからの出品。この直前までコイズミ無線で展示試聴されていた作品です。

 大きな外付けネットワークが目を引きますが『自作スピーカーマスターブック』を参考に『スピーカー測定・Xover設計 講習会』ではこの作品を題材にシミュレーションの実践をしていました。

 私もZoomで拝見してたので実際の音が聞けるのが楽しみでした。

 FostexのNF-1をイメージした作品で、独特の外観の16cmウーハー『FW168HRが目を引きます。ツイーターはマグネシウム振動板T200Dとリッチな構成。ツイーター部は後ろにずらしたオフセットマウントも特徴。表面はシート仕上げで美しいです。

大型の外付けネットワークが目を引く
【試聴してみて】

 一聴して低音の迫力が印象的。外観のイメージ通りのエネルギッシュな印象でした。とはいえ無闇に強調されているのではなくバランスの良さを感じますね。

 高音域はメタリックな音色ですがクリアな印象。『宇宙より遠い場所』の曲ではボーカルのクリアな感じに良く合っていました。

 反面、終物語の曲では声が大きくなる所で歪み感を感じるところも。この辺はやっぱりライブな部屋の影響かな。もう少しデッドな環境で聞き込みたい作品かもしれません。

 癖が強く難しそうなユニットをよくまとめたなぁと感心しますね。ネットワーク初心者としてレポートの体験談もすごく参考になります。また楽曲のセレクションもセンスがよかったです。

'80年代ミニコンポ的というか、独特のカッコ良さがありますね。

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_sgn.pdf


Taskさん:Kepler -compact-


Kepler -compact-:美しいWG一体型バッフル
振動板形状まで考慮して精密にシミュレーションされている。

 Taskさんシミュレーションを活用して理論を重視したスピーカービルダーの一人。一般のアマチュアとは完全に一線を画すレベルですね。比較すべきはハイエンドオーディオの世界かもしれません。

 本作はDMM.makeの業務用3Dプリンタで出力した『楕円ウェーブガイド一体型バッフル』を持つ2Way+背面パッシブラジエータ式スピーカーです。

 バッフルはナイロン製で1枚あたりなんと3.7万円!高いですが一般用とはレベルの違う質感でした。時間の関係で塗装までは完成しなかったそうですがバッフルの美しさは目を見張りますね。

 ユニットは全てSB Acoustics製。ウーハーは16cmクラスパッシブラジエーターは5×8インチ(約12cm×20cm)の大型楕円ユニット。自分も前回はパッシブラジエーターのスピーカーを出品したのでその意味でも楽しみです。

 詳しくは公式資料を見ていただくとしてシミュレーションとの比較が素晴らしいです。ウェーブガイドの解説もすごく参考になりました。(とはいえ理解が難しい所も多いのですが)

背面の巨大なパッシブラジエーター

【試聴してみて】

 1曲目のSHOW BY ROCK!!の曲で音色の繋がりの自然さが印象的ですね。繋がりに全く違和感を感じません。音場感の良さはウェーブガイドの効果でしょうか。さすがに見事です。

 ガルパンの曲では金管の響きが美しく低音にもクセがない。4曲目のCLANNADの曲では解像度の高さが印象的でした。

 背面の巨大なパッシブラジーエターには驚きましたが、小型のBluetoothスピーカーにあるパッシブラジーエターとは意味合いがかなり違います。本作は十分な空気容量ですのでバスレフの方が低音の量感を出せますが、あえて低効率となるパッシブラジーエターを使うことでより質感の高い低音を狙っているのだと思います。

 密閉ではさすがに物足りなくなりますが、パッシブラジーエターなら中間的な特性になることが資料からわかりますね。今作の狙いから言っても量感より質感を重視したのでしょうか。

 バスレフのデメリットを排したおかげか、繋がりの良い中高音にピッタリの上品な低音だった気がします。パッシブラジーエターの振幅についての解説などもあり、とても学びの多い試聴となりました。

WGは結構深さがある。
MDF部は白く塗装したいとの事でした。
黒シートでツートンカラーも良さそうですね。

作品資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_Task.pdf


カノン5Dさん:Concept-SOLA Grand Master 2


2年越しに完成形となったサブウーハー
自作ネットワークと試作した補強部品も展示。

 大トリは主催者であるカノン5Dさん。ネットでも試作を繰り返していた補強型コーンを使ったサブウーファーが今回の作品。昨年は竹ひごで補強コーンを試作していましたが当時はここまでの完成度を想像していませんでした。

3Dプリンタで出力した補強部材をコーンに装着。
外観も非常に美しいウーハー。

 サブウーハーなんて大きな箱重いウーハー用意すれば十分じゃないの?と思いがちですが、低音の質感を重視するカノン5Dさんは違います。2WayスピーカーのConcept-SOLAにマッチするマッシブな低音を求めて、コーンの剛性化からエンクロージャーまでトータルに研究。

 低音の質感といってもピンとこない人も多いかと思いますが、自分も正直ちゃんと理解できてない気がします。今回はConcept-SOLAと合わせたシステムとして試聴。単体のConcept-SOLAは一昨年、試作ウーハーシステムとしては昨年も聴いています。今回はどう変わったか楽しみです。

Concept-SOLAと合わせて試聴。


【試聴してみて】

 いやはや・・・お世辞じゃなくてこれはスゴイです。この厳しいライブな環境でここまでの音を出すとは。ちょっと感動ですね。

 元になるConcept-SOLAから低音が延長されたというだけでなく、Concept-SOLA自体の質感がさらに上がったような感覚になります。ホントに欠点を見つけるのが難しいほど。

 1曲目はルビィちゃんの曲。な、なんと、この環境でルビィちゃんの声が歪まないだと・・・すごい(笑)あとこの曲なんでこんなスゴイ低音入ってるんだ・・・。

 2曲目の家入レオさんの曲。さわやかなボーカルにウーハーの低音が心地いい。全く邪魔をしません。ただ出てるだけの低音ではなく質感の良い低音とはこういうことなんだと実感。

 そして『とある科学の超電磁砲』の『only my railgun』もスゴイ。ただでさえ再生の難しい曲ですがこの厳しい環境でギリギリ破綻なく再生しています。無難な曲でまとめるのではなくこういう限界を見せる選曲もさすがですね。

 サブウーハーというとピュアオーディオとは違うイメージを持つ方も多いでしょうが、そういった物とは次元が違いますね。まさにConcept-SOLAの『Grand Master』の名の通りシステム完成形の音だと感じます。


 低音の音色や質感まで追求できるきっかけになりました。低音と倍音との関係などの解説も参考になりました。自分も色々試したみたい意欲に駆られる試聴でしたね。

補強部品の試作の数々
とても興味深い資料を公開してくれました。

発表資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_kanon5d.pdf

技術資料http://www.audifill.com/event/011_020/016_kanon5d_02%20.pdf

最後に:見える世界が広がる多様性

  本当にバラエティーに富んだ作品群でしたね。安価な部材から高いものまで、変わった構造から正統派なものまで、こういう幅広さってあまり見ないですよね。自作スピーカーとしては本当の意味で多様性がある気がします。

 そして出品者の皆さんのお話が本当に学びになり、たくさんのインスピレーションを得ることができました。まさに『世界が広がる』ような気持ちです。

 これもアニソンという世代を超えた繋がりのおかげですよね。幅広い世代が交流できる接点になっていると実感します。

 また大勢の方が参加できる日が到来して欲しいですね。主催されたカノン5Dさん。本当にお疲れ様です。ありがとうございました!

過去のイベントレポートです 

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2020年11月29日日曜日

ウーハーを天板に配置した2way+自作ショートホーンの自作スピーカー:Fostex PW80/PT20 使用

 カノン5Dさん主催の『アニソンオーディオ フェス 2020』(12月27日開催予定)に今回も自作スピーカーを出品します!

 カノン5Dさん主催イベントでは3作目となるスピーカーです。今作はステレオ誌付録のFostex製2wayユニットを使用した、ちょっと変わった2wayスピーカーです。ウーハー+ツイーターの2wayは初めてなので色々試しながら製作しました。

作品タイトルは『天面ウーハー2way』です。


※製作の詳細や情報を随時追記予定です。今しばらくお待ちください。(2020/11/29)


作品概要 

  ウーハーを天板に配置しフロントバッフルにはツイーターのみを配置した2wayスピーカーです。ウーハーを90度以上の配置にすることで高域を減衰させツイーターと繋ぎます。実験的要素も多いのですが、小型で視覚的にも可愛いスピーカーを狙いました。
ウーハーはインド麻を使ったカバーで保護します。


主な特徴 

・ウーハーの天面配置による高域減衰
・棒状材と和紙を併用した擬似曲線の技法
・布張りのフロントバッフル
・MDF削り出しのショートホーン
・調整可能な背面スリットダクト

使用ユニット(ステレオ誌2014版 付録 Fostex PW80/PT20)


・アウトレット品として4個セット2,200円。
 PW80 (メーカー資料より)
https://ontomo-shop.com/?pid=139126646
・Fostexのかんすぴ向けレギュラー品であるPW80K/PT20Kとスペック上は同一製品。
・PW80はかなりフルレンジ寄りのユニットで単体でも20kHzまで伸びており、むしろ低域が物足りないくらい。試聴すると元気のいい音で不足感はないが高域は少し荒さも感じる。
・PT20はソフトドームらしい穏やかな音。コニカルホーン付きのバッフルを簡単に外すことができるので自作ショートホーンに交換した。

諸元


容積・サイズ

内容量 約3.2L/H 25.5cm /W 15cm /D 18cm(突起部除く)

形式

2way 2スピーカーユニット

ウーハー  Fostex PW80

8cmコーン形 (パルプコーン ウレタンエッジ)8Ω/83dB

f0:130Hz/m0:2.3g/Q0:1.08(メーカー資料より)

ツイーター Fostex PT20

2cmソフトドーム型 8Ω/84dB/3kHz~32kHz

材質

MDF材 12mm/4mmの組み合わせ。水性ペイント・ニス仕上げ

参考資料

ホーンスピーカー設計・製作法(新井悠一 著)



製作と内部構造


内部概要


 天板は90度以上に角度をつけて正面からユニットが直接見えなくなるようにした。さらに天面バッフルは一段落としてカバーで保護します。
バスレフダクトは補強を兼ねた背面スリットダクト。追加の板厚と幅で調整可能にしています。

新しい曲げ技法による擬似曲面

 1作目で溝曲げ技法(1mmほど残して溝を掘って曲げる)を試しましたが製作が難しいという難点がありました。
 今回はさらに容易に製作できる技法として棒状にカットした板を障子紙に貼り付ける技法を試しました。(左写真)溝を三角形の底辺として角度を計算します。ボンドを流し込んで接着と充填を兼ねます。

自作ショートホーン(ウェーブガイド)の製作

 リング状に加工した4mmMDF4枚を貼り合わせて(左画像)ホーン曲線の型に合わせて削り出しました。今回は型の厚みを考慮せず、予定より一回り大きな穴となってしまったのが失敗でした。
 しかしこの技法では短いWaveguideから数センチ程度のショートホーンまで比較的容易に製作できる可能性を感じました。


ネットワークと簡易測定 


 ネットワークは測定・シミュレーション環境が未整備のため、減衰を実測して聴感で確認する方法で調整しました。ウーハーの10kHzのピークを避けて6kHz前後でクロスオーバーさせたいという考えです。いくつかの組み合わせで試しましたが代表的なものが下記の2種


W スルー接続/TW 1.5μF
 高域は減衰するもののユニットの特徴である10kHzのピークが残る。ツイーターを繋ぐと一見フラットに見えても雑味が多めで解像感がイマイチ。逆相に繋いだ方が聴きやすい


W 0.47mH/TW 1.5μF
 10kHzのピークも-10dBほどに抑えられた。正相に繋いだ方がフラットに見える。スルーに比べて格段に見通しが良い音になる。



2次フィルターも時間が許せば試してみる予定です。


製作した感想と今後の課題


当初はウーハーのスルー接続も考えていましたがピークを十分に抑えることができず断念。しかし天面配置によって予め高域を低減しているので簡易なフィルターでも大きく減衰できるのはメリットかもしれません。ただ、ユニットの位置による位相ズレの調整や、ショートホーンの効果については高度な測定が必要なので今後の課題です。

 最近『自作スピーカー マスターブック』を購入し講座にも参加しましたが、今作では時間的に情報を充分に活かせませんでした。しかしネットワーク設計の基本的な考え方は非常に手助けになりました。今回は素朴な方法で調整しましたが、高域を調整できる面白さやフルレンジに比べたメリットを体感できたのはいい経験でした。とはいえ、この方法では限界を感じたのも事実。時間がいくらあっても足りない気がします。

 今回は新しい技法も試すことができて、今後の製作アイデアにもすごく役立ちました。当初は思いつきの実験機でしたがこの形式でもっと詰めてみたい気もします。

※追加情報を随時更新予定です。完成まで今しばらく待ちください(2020/11/29)
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