2020年11月29日日曜日

ウーハーを天板に配置した2way+自作ショートホーンの自作スピーカー:Fostex PW80/PT20 使用

 カノン5Dさん主催の『アニソンオーディオ フェス 2020』(12月27日開催予定)に今回も自作スピーカーを出品します!

 カノン5Dさん主催イベントでは3作目となるスピーカーです。今作はステレオ誌付録のFostex製2wayユニットを使用した、ちょっと変わった2wayスピーカーです。ウーハー+ツイーターの2wayは初めてなので色々試しながら製作しました。

作品タイトルは『天面ウーハー2way』です。


※製作の詳細や情報を随時追記予定です。今しばらくお待ちください。(2020/11/29)


作品概要 

  ウーハーを天板に配置しフロントバッフルにはツイーターのみを配置した2wayスピーカーです。ウーハーを90度以上の配置にすることで高域を減衰させツイーターと繋ぎます。実験的要素も多いのですが、小型で視覚的にも可愛いスピーカーを狙いました。
ウーハーはインド麻を使ったカバーで保護します。


主な特徴 

・ウーハーの天面配置による高域減衰
・棒状材と和紙を併用した擬似曲線の技法
・布張りのフロントバッフル
・MDF削り出しのショートホーン
・調整可能な背面スリットダクト

使用ユニット(ステレオ誌2014版 付録 Fostex PW80/PT20)


・アウトレット品として4個セット2,200円。
 PW80 (メーカー資料より)
https://ontomo-shop.com/?pid=139126646
・Fostexのかんすぴ向けレギュラー品であるPW80K/PT20Kとスペック上は同一製品。
・PW80はかなりフルレンジ寄りのユニットで単体でも20kHzまで伸びており、むしろ低域が物足りないくらい。試聴すると元気のいい音で不足感はないが高域は少し荒さも感じる。
・PT20はソフトドームらしい穏やかな音。コニカルホーン付きのバッフルを簡単に外すことができるので自作ショートホーンに交換した。

諸元


容積・サイズ

内容量 約3.2L/H 25.5cm /W 15cm /D 18cm(突起部除く)

形式

2way 2スピーカーユニット

ウーハー  Fostex PW80

8cmコーン形 (パルプコーン ウレタンエッジ)8Ω/83dB

f0:130Hz/m0:2.3g/Q0:1.08(メーカー資料より)

ツイーター Fostex PT20

2cmソフトドーム型 8Ω/84dB/3kHz~32kHz

材質

MDF材 12mm/4mmの組み合わせ。水性ペイント・ニス仕上げ

参考資料

ホーンスピーカー設計・製作法(新井悠一 著)



製作と内部構造


内部概要


 天板は90度以上に角度をつけて正面からユニットが直接見えなくなるようにした。さらに天面バッフルは一段落としてカバーで保護します。
バスレフダクトは補強を兼ねた背面スリットダクト。追加の板厚と幅で調整可能にしています。

新しい曲げ技法による擬似曲面

 1作目で溝曲げ技法(1mmほど残して溝を掘って曲げる)を試しましたが製作が難しいという難点がありました。
 今回はさらに容易に製作できる技法として棒状にカットした板を障子紙に貼り付ける技法を試しました。(左写真)溝を三角形の底辺として角度を計算します。ボンドを流し込んで接着と充填を兼ねます。

自作ショートホーン(ウェーブガイド)の製作

 リング状に加工した4mmMDF4枚を貼り合わせて(左画像)ホーン曲線の型に合わせて削り出しました。今回は型の厚みを考慮せず、予定より一回り大きな穴となってしまったのが失敗でした。
 しかしこの技法では短いWaveguideから数センチ程度のショートホーンまで比較的容易に製作できる可能性を感じました。


ネットワークと簡易測定 


 ネットワークは測定・シミュレーション環境が未整備のため、減衰を実測して聴感で確認する方法で調整しました。ウーハーの10kHzのピークを避けて6kHz前後でクロスオーバーさせたいという考えです。いくつかの組み合わせで試しましたが代表的なものが下記の2種


W スルー接続/TW 1.5μF
 高域は減衰するもののユニットの特徴である10kHzのピークが残る。ツイーターを繋ぐと一見フラットに見えても雑味が多めで解像感がイマイチ。逆相に繋いだ方が聴きやすい


W 0.47mH/TW 1.5μF
 10kHzのピークも-10dBほどに抑えられた。正相に繋いだ方がフラットに見える。スルーに比べて格段に見通しが良い音になる。



2次フィルターも時間が許せば試してみる予定です。


製作した感想と今後の課題


当初はウーハーのスルー接続も考えていましたがピークを十分に抑えることができず断念。しかし天面配置によって予め高域を低減しているので簡易なフィルターでも大きく減衰できるのはメリットかもしれません。ただ、ユニットの位置による位相ズレの調整や、ショートホーンの効果については高度な測定が必要なので今後の課題です。

 最近『自作スピーカー マスターブック』を購入し講座にも参加しましたが、今作では時間的に情報を充分に活かせませんでした。しかしネットワーク設計の基本的な考え方は非常に手助けになりました。今回は素朴な方法で調整しましたが、高域を調整できる面白さやフルレンジに比べたメリットを体感できたのはいい経験でした。とはいえ、この方法では限界を感じたのも事実。時間がいくらあっても足りない気がします。

 今回は新しい技法も試すことができて、今後の製作アイデアにもすごく役立ちました。当初は思いつきの実験機でしたがこの形式でもっと詰めてみたい気もします。

※追加情報を随時更新予定です。完成まで今しばらく待ちください(2020/11/29)
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2020年11月12日木曜日

劇場アニメ『どうにかなる日々』感想:儚い感覚をすくい取った心に残る小品。

 『どうにかなる日々』を映画館で見てきました。

 4本の短編で合計60分という小品。性愛をテーマに扱いながらも、なんともふんわりした感じで、恋愛とセックスの間のぼんやりした部分を上手にすくい取って描いたような作品。

 パッと見ただけだと物足りなく感じるんだけど・・・なんか心に残ってしまって。そこに垣間見えるそこはかとない不安感に気づいた時この作品が好きになりました。


劇場アニメ「どうにかなる日々」本予告(PONY CANYON公式配信)


エモすぎず、じんわり心に残る作品


 この作品、志村貴子さんの原作漫画は全然知らなかったんだけど、予告編がすごく良い感じだったんですよね。でも鬼滅人気の大波であっという間に上映が縮小。遠くの映画館までわざわざ行ってしまいました。

 一緒に行った奥さんは「悪くないけどTVシリーズでも良いんじゃない?」って感想。確かにTVシリーズだったら人気が出そうな気もするね。でもローティーンの話なんかはちょっと地上波では難しいのかな?って思ったり。

 実を言うと自分も予告編のエモさが気に入って見に行ったので肩透かし感はあったんですよね。思ったほど露骨な性描写もないし、短時間だし、感動のドラマもないし・・・とかね。

 でも、じんわり心に残るというか。逆にエモすぎないのが良いというか。短編の良さを活かしたアニメになってる気がします。原作だともっと性描写が露骨なのかもしれないけどアニメだと少し強くなりすぎるしね。

オープニング
静かだけど印象的なオープニング
主題歌以外も担当したクリープハイプの劇伴も良かった。
©志村貴子/太田出版・「どうにかなる日々」製作委員会
冒頭映像/予告編より画像引用(当ブログの画像引用について

 この冒頭の雑踏とギター曲の入り混じったオープニングがすごく良かったなぁ。かすかに聞こえるセリフの声が絶妙

 可愛らしい字体のクレジットと合わせてすごく魅力的で。このOPのおかげで短編集が一つの作品としてまとまった気がする。


『どうにかなる日々』冒頭映像(シネマトゥデイ公式配信)


※次章よりネタバレのレビュー・考察となりますのでご注意ください。


エピソード1 えっちゃんとあやさん


 最初は百合ちゃんというボーイッシュな女の子をめぐる二人の女性の物語。高校時代の彼女であるえっちゃんと、短大時代の彼女であるあやさん

えっちゃんとあやさん
えっちゃんとあやさん
©志村貴子/太田出版・「どうにかなる日々」製作委員会

 この作品、戯曲『ゴドーを待ちながら』じゃないけど、肝心の百合ちゃんがあまり出てこないのがすごく好き。

 ボーイッシュで多分キスをした後に走り去っていく『姿』だけなのが『過去』。そして『現在』は打って変わって新婚さんとなった可愛らしい『』だけ。

百合ちゃん
こんなボーイッシュで積極的な印象の百合ちゃん
でも電話では全然印象が違うのが面白い
©志村貴子/太田出版・「どうにかなる日々」製作委員会

 ある意味、二人の運命を大きく変えたくせにね(笑)でもそれを恨むでもなく、忘れるでもなく、新たな関係になる二人。

 最後の『百合ってなんだったんだろうね』ってセリフ。思わず笑ってしまったけど、なんかすごく良いんだよなぁ。二人の青春を走り抜けていく百合ちゃんの姿を思い浮かべてしまいました。


エピソード2 澤先生と矢ヶ崎くん


 男子校の教師である澤先生が卒業する矢ヶ崎くんから告白されるシーンから始まる物語。

 矢ヶ崎くんとの関係が深まるのかと思いきや、澤先生の日常を中心に心の変化を淡々と追っていくストーリーだったのは意外!

 ドロドロ感も社会的苦悩とかも起きそうで起きない。まるで声優の櫻井さんによる朗読劇を見てるような気分になりました。

澤先生と矢ケ崎くん
矢ヶ崎くんのさっぱりした告白
ここから話が展開するのか・・・と思いきや
©志村貴子/太田出版・「どうにかなる日々」製作委員会

 滝先生がゲイなのかどうかもぼんやりしていて、男子校のホモソーシャルな関係を背景としながらほのかな性愛を匂わせる。なんとも味わい深い作品。

 これはいかにも文学的というか、ストーリーではなく行間で読ませる感じが短編らしくてい良いよね。最後のほっこりとした終わり方も良かった。


エピソード3 しんちゃんと小夜子


 セクシービデオに出演した従姉の小夜子が勘当されてしんちゃんの家に居候する物語。

しんちゃんと小夜子
特典映像のファイルーズあいさん
予想以上に小夜子に似てて笑ってしまった。
©志村貴子/太田出版・「どうにかなる日々」製作委員会

 しんちゃんに性的関係をけしかける小夜子小学生男子の潔癖さで拒絶するしんちゃんとは逆に、幼馴染のみかちゃんが目覚めてしまうわけだけど、ビデオを見た時のみかちゃんの顔が最高でしたね(笑)

 センシティブなテーマを扱いながらも両親のあっけらかんさはすごいよね。親が開放的だと子供は逆に慎重になるというか。ある意味信頼してるわけだけどね。まあこの辺は自分に子供がいたらそんな落ち着いても見ていられないかな?

しんちゃんとみかちゃん
恋愛も性愛も未分化の少年と目覚めた少女
微笑ましくも楽しいエピソード
©志村貴子/太田出版・「どうにかなる日々」製作委員会

 こんな小学生時代だったらとっても楽しかっただろうなって。ローティーンの性愛というセンシティブなテーマだけど、なんともふんわり味わい深く描いている。

 ここからのEp 04への繋がり方も良かったな。


エピソード4 みかちゃんとしんちゃん


 しんちゃんみかちゃんが中学生になった時の物語。

 小夜子に未だに囚われてる二人なんだけど、数年経ってようやく小夜子のプッシュが効いてくるというか・・・Hのキッカケになってるんだよね。

 しかも肝心の小夜子は結婚して我関せずなのがエピソード1と似てて面白い。

 性愛について本格的に意識しはじめた高揚感と緊張感。露骨なのに直接描かない。このへんのさじ加減はホント上手い。いわゆるHなアニメにならない文学的な感じね。まあ、それはこのエピソードに限らないんだけど。

しんちゃんとみかちゃん中学時代
あえて露骨なシーンを外したのは良かった。
直接見せないほうがぼんやりした部分がより伝わる気がする。
©志村貴子/太田出版・「どうにかなる日々」製作委員会

 あと、文化祭に合わせて非公式のベストカップル賞があるような学校。なんか良いなぁ・・・そういうの好き。

 それで友人が『ハッ!』って気づいて二人で飛び込んでいくのも良いよね。コラコラ!本当にやってる最中だったらどうすんの!って(笑)興奮で後先考えない感じ。

 あれさ、ミカちゃんも『お化け屋敷』ってことは・・・チャンス!って思ったってことだよね。そこも面白いんだけど中学生らしいムラムラした空気感が伝わってきて良かった。


そこはかとない不安感と、タイトルの意味


 この作品のタイトル『どうにかなる日々』ってピンとこなかったんですよね。なんでこのタイトルなんだろう・・・って。

 でも見終わって、なんか心に残って、なんとなく作品を思い返していたら気づきました。

 この作品ってパッと見、ふんわり幸せな印象なんだけど、どのエピソードをみてもそこはかとない不安感とか、なんともはかない感じがするんですよね。

 Ep 01の二人はこれからの人生どう進むにしても別れや困難がありそうだなぁ・・・とか、Ep 02の澤先生のなんとも危うい感じとか・・・とか、Ep3,4の二人だって長いこの先ずっと仲良しとは行かないだろうし、小夜子だってなんか色々ありそう・・・とか。

 どのエピソードもハッピーエンドなのにかすかに感じる不安・・・でも、まあどうにかなるよね・・・って。

 あ!だから『どうにかなる日々』ってことかぁ・・・って妙に納得してしまいました。

 まあ、誤読かもしれないけどね。


最後に:はかなく消えていく感覚


痛いほどの好きは きっといつか愛しくなる』っていうキャッチコピー。これは誰が作ったのか知らないけど・・・沁みますね。

 きっといつか・・・の『いつか』を生きている自分には沁みます。でもこの作品はきっとこの視点を大切にしてるんだと思う。

 冒頭のOPでも聞こえる『今だから言うけど・・・』というセリフ。きっとこの作品の視点は現在からみた過去

 だからあえて舞台を少し昔の世代のままにしてある気がする。今見ている私たちが、ちょっと前にあったような世界。そんなはかなく消えていく感覚を思い出させてくれる作品でした。

原作:志村貴子

監督:佐藤卓哉/演出:有冨興二

脚本:佐藤卓哉、井出安軌、冨田頼子

キャラクターデザイン:佐川遥/色彩設計:仲村祐栄

美術監督:齋藤幸洋/音楽:クリープハイプ

アニメーション制作:ライデンフィルム京都スタジオ

劇場アニメ「どうにかなる日々」公式サイト:https://dounikanaruhibi.com

関連記事 映画『あさがおと加瀬さん。』感想:百合アニメの概念を壊してくれた青春ラブストーリー! - アニメとスピーカーと‥‥ 

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2020年11月7日土曜日

書評『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』感想:つい語りたくなる平成アニメ史は『劇場版 物語る亀』だ。

 『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』を読みました。

 映画・アニメ感想ブログの『物語る亀』を運営する井中カエル氏の初書籍。平成以降のアニメ史を非常に読みやすくまとめた完全書き下ろしの1冊です。

『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』
井中カエル 著/KADOKAWA刊

 単調な知識の羅列になるのを避け、キャラクターの会話劇でサクサク読ませるのは著者の作劇の力量があってのこと。俯瞰的な視点と、著者の個人的な視点のバランスもいいですね。

 アニメの歴史を知らない若い人たちはもちろん、アニメから離れた旧エヴァ世代初代ガンダム世代にとっても一読の価値あり。時代の空白を埋めるだけでなく、アニメ文化の立ち位置アニメ業界のダイナミックな変化も含めて知ることのできる書籍です。

注意】本書は『はてなブックマーク』の書籍プレゼントに応募して当選した商品ですが、当記事はPRや広告記事ではありません。業務としての依頼や義務は一切なく好き勝手に書いている記事です。


ブログ『物語る亀』の運営者


 著者の井中カエル氏は、映画・アニメ感想ブログ『物語る亀』の運営者。会話形式の映画レビューが特徴で、個人系としてはかなりの大手なので知っている人も多いですよね。

(ちなみにブロガーとしてはずっと『カメ』さんって呼んでたけど・・・カエルだったのね)

 ブログでは運営者である『主』に対して『カエルくん』などキャラクターのツッコミ形式で話が進んでいきます。

 でも書籍では会話形式ではあるものの、キャラクターとしての『』は登場せず、著者の主張はコラム的に分けられて、あくまでキャラ同士の物語で進行していきます。

ブログではブログ主と素朴なキャラクターの会話調が特徴
長文でもサクサク読み進められる
ブログ『物語る亀』より

 ブログ読者としては、その辺のノリの違いを感じて最初はちょっと戸惑うんですよね。それはブログがあくまで『映画作品のレビュー』であるのに対して、本書は『完結する物語』として描かれているからなのかな。

 本書では平成アニメ史の解説と同時に『カエルくん』を主人公にしたオリジナルの物語が展開。さらにブログでは登場しないヒロイン新キャラが多数登場。単なるレビューのための会話劇ではない完結する物語が展開されます。

 ブログファンとしてはこの辺の書き方の違いにも注目ですね。もちろんブログ未読の人でも全く問題なく楽しめますよ。


作家志望だった著者の実力。だから読みやすい。


 ところでブログで会話形式っていうのは最近でこそ珍しくないけど、面白く読ませるのは実は簡単じゃないんですよね。

 読みやすさという点ではメリットがあるんだけど、長文で会話形式をやろうと思うとこれが意外と難しい。冗長になって却って読みにくくなったり、長いだけでスカスカの文章になったりしちゃうんだよね。

 そこが著者である井中氏のすごいところ。というのも『あとがき』にも書いてあるんだけど、彼はもともと作家志望だったんだよね。当初はブログをオリジナル小説を発表する場と兼ねていたみたい。

 井中氏のブログを長く読んでいる人は知ってると思うけど、今でもたまにオリジナル作品を発表することもあるんですよね。氏の作品を一言でくくるのは難しいけど『映像化したくなるような作品』という印象。シナリオ的というか作劇ができる人なんだよね。

外部サイト  一覧を見ると毎年新作を発表していますね!オリジナル小説リスト - 物語る亀


『劇場版 物語る亀』のようなチャレンジ


 ブログでは各キャラを上手に書き分けつつも全てが『著者の一部分』という感じで、全体として著者の主張となるように書かれているんだよね。それに対して本作では著者の主張を一旦離れて一つの物語になっている感じがする。

 だから本書ではより物語的にキャラがキャラ自身を演じている印象ですね。これまでレビューのために演じていたキャラクターが一つの大きな物語を紡ぎ出す。だからこれは言ってみれば『劇場版 物語る亀』ともいえるチャレンジなんですよ。

書籍版で登場するキャラクターたち
『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』より

 そして今回『』がいない代わりに『カエル』というキャラに著者自身が投影されている。あの哀愁を感じるラストシーンはいかにも著者らしいよね。

 本書のタイトル『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』っていうのも、最近流行の異世界転生ものアニメをイメージしているんだけど、それと同時に自分自身の思いをオーバーラップさせている所があるんだろうなと思う。

 いずれにせよ本書は知識だけのブロガーがマネできるレベルじゃないよなぁ。ブログと似たように見えて実は非常にチェレンジングな作品。もちろん編集サイドの支援もあったんだろうけど、彼自身の作家志望としてオリジナルの物語を紡いできた経験が効いてるんだよね。

 まあ「そこメインじゃないから!」って言われそうだけど、ブロガー視点ではそういう所にすごい注目しちゃうんだよね。


エヴァンゲリオンから始めるアニメ史


 そういった物語に乗せて紹介される平成アニメ史なわけですが、最初は『新世紀エヴァンゲリオン』の紹介から始まる。これは近代を明治維新から始めるようなもので非常にわかりやすいよね。

 アラサー世代(おそらく30歳くらい?)である著者から見たエヴァンゲリオンは、非常に整理されていて若い人たちにも理解しやすいだろうなと感じました。

 自分は40代後半なので、当時少年だった著者とは当然見えかたも違うのだけど、もはやエヴァも歴史の1ページになったんだなぁという感慨を感じましたね。

初見では理解が難しい考察も会話形式でわかりやすく解説
新劇場版への予習としても便利
『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』より

 エヴァ放映当時はもう20歳を超えた大学生だったけど、オタク系の友人に勧められて鑑賞したエヴァはとにかく面白くてね。それだけに最終回のガッカリ感はすごかった(笑)ものすごい不完全燃焼だったなぁ。

 自分みたいなライトオタクにはエヴァの世界観を理解するのは難しかったんだよね。当時はネットで考察も難しかったし。あの最終回を見てATフィールドの解釈をするのはライト層にはなかなか難しいわけで・・・一緒に見てたオタク仲間でも『風呂敷広げすぎてブン投げたのかな〜』くらいの感覚でしたね。

 こうやって整理された記述を見ると、その通り!と思う反面、なんか違うんだよなぁ・・・と相反する思いもあって、この辺のめんどくささがリアルタイム世代の悪い所。そういう意味でも少し後の世代からの整理された視点はわかりやすいんだよね。


オタクカルチャーの境目が融解するキッカケ


 ちょっと個人的な話になるけど、そもそも自分にとってロボットアニメの流れは、ガンダムから始まってパトレイバーまでで、その後にエヴァが繋がらなかったんだよね。いまでもエヴァをロボットアニメの系列に乗せるのに違和感があるくらい。

 当時の空気としてオタク向けアニメと、非オタ向けアニメの境目っていうのはなんとな〜くあって、だからエヴァはどちらかというとコアなオタク向け作品として出てきたというイメージだった。

単なる作品紹介でなく時代性とアニメの関係を掘り下げている
『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』より

 でも当時驚いたのは、これまでアニメとは距離があると思われたサブカル系女子の人たちまでエヴァに吸い寄せられていったことなんだよね。

 実際自分の知人でもこれまでアニメの話題なんか全くなかった人たちが、急にエヴァに熱中してて驚いたのを覚えてる。サブカルチャーの一部であったオタクカルチャーの境目が融解して、急速にサブカル全体を飲み込んでいく様子を見ていたんじゃなかいかな・・・と今振り返ると思うんだよね。

 その後、オタクと一般人の境目すら融解して現在につながっていくわけだけど、エヴァ現象はその端緒だったのかな。そういう意味でもエヴァから始めるのは良い選択だと思うし、リアルタイム世代からずれている著者の視点は歴史として語るのにちょうど良い気がしますね。


オタクとアニメのダイナミックな変化を丁寧に説明


 本書に戻ると、エヴァの後にしっかりエヴァ以前のアニメの歴史をさらっと紹介するのがウマイ。そして、新海誠細田守など新しい世代の監督を紹介して、アニメやオタクの立ち位置が変わっていく過程を解説していくのですが、この辺から著者自身のリアルタイム性が強くなっていきます。

 ここは世代こそ違いますが、自分も同時期に経験したものとしてその空気感を感じますね。当時自分も『秒速5センチメートル』や『時をかける少女』に熱中してて、同じ映画を何度も見に言ったのもこの頃が最初だったな。アニメ映画が持つすごいポテンシャルを肌で感じてたんだと思う。

日本アニメの大きな流れだけでなく世界のアニメに関しても紹介されている
『現実で勇者になれないぼくらは異世界の夢を見る』より

 その反面、当時の自分は深夜アニメにかなり偏見があって全くスルーしていたんだよね。オタクカルチャーが広がったとはいえ、従来のオタク向け作品はより深化して深夜帯へ移行していた。瞳はさらに巨大化するし、高度なコンテクストの共有が必要になって、興味はあっても手が出せない感じ。

涼宮ハルヒの憂鬱』『らき☆すた』『けいおん!』など人気のタイトルの評判は伝わってくるのですが「ああいうものに手を出したら終わり」くらいの偏見は持ってましたね。まさに見てもいないのに食わず嫌いで判断してたわけだけど、かりに当時そんな色眼鏡で見たとして正当に評価できたかどうか・・・。

 40代後半(団塊Jr./氷河期世代)にはそういう人も多いんじゃないかな?まさにかつての自分がそうだったんだけど。そういった人にとっても、抜けているアニメ史を補うにはちょうど良い本になっていると思います。

 ちなみに自分は2012年の『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』で目覚めたのですが、2000年代後半の作品群はかなり後になってから鑑賞してすごさを理解しました。

関連記事 2015年に『涼宮ハルヒの憂鬱』を初めて見た感想:まさかここまで面白いとは!- アニメとスピーカーと‥‥


異彩を放つ第6章・・・京アニについて


 そして本書で特に白眉なのは京アニに関する記述でしょうね。自分も屈指の名作と思う『映画 聲の形』への言及。この辺りから時間軸は完全に自分とかみ合ってきます。

 そして、1章を割いたあの事件の記述。リアルタイムの手記のような体裁となって他の章とは異彩を放っている第6章。この記述については、まさに自分にとっても同時に体験した当事者として記憶が蘇ってきてしまう。

 本書にもある通り、奇しくも翌日は新海監督の新作『天気の子』の公開日。Twittrでは誰もが期待と興奮で盛り上がっていた・・・その直前のまさかの事件。著者と同じく自分も最初はボヤでしょ・・・くらいの軽い気持ちでいたのですが。

 翌朝の映画館はだれもが葬儀のような沈痛な面持ちに見えました。『天気の子』は全国一斉、同時刻に初回をスタートしたんだけど、これが同じ時刻に同じ思いを抱いて集まったアニメファンにとって追悼であって黙祷のような場になったんだよね。

 別のスタジオにもかかわらずスタッフロールでは涙が止まらなくて・・・でも今思えばこれが新海さんの作品でよかったのかもしれない。少なくとも自分には救われるものがあった。

 関東ではこの日、映画の始まる前の雨まじりの陰鬱な天気が、映画館を出ると嘘のような快晴の青空になっていて、奇跡のような映画とのシンクロに驚いたっけ・・・。

 多くのアニメファンにとっては9.11や3.11と同じくらいの衝撃として記憶されているこの日。これは決して大げさな表現じゃない。まさに自分の大切な人たち、そして『あったはずの未来』が失われた日だったから。

 著者である井中氏とは、特に京アニ作品については非常に共感するところが多くて、それだけにこの章については同士のような気持ちで目頭を熱くして読みました。


『物語る亀』とブロガーとしての自分


 本のレビューというより自分語りばっかだなぁ・・・と言われそうだけど、『物語る亀』というブログはどうしてもブロガーとしての自分を意識せざるを得ない部分があるんだよね。

 まあ実を言うと一時はライバル視(笑)してた時があって、まあ今となっては苦笑なんだけど一種の目標にしてたんだよね。自分のブログは2014年の『たまこラブストーリー』から始めたんだけど『物語る亀』さんは2016年の開始

 当時は『お、新しい人が出てきた。がんばれ〜』なんて思ってたけど、当時はてなブログの勢いが強いことも後押しして『物語る亀』は急成長。とにかくあらゆる記事が検索上位に食い込んでいて度肝を抜かれました。

 それは単に幸運だけじゃなくて、彼の書く速さ、量、知識、熱量・・・どれを取っても尋常じゃなかった。なにが物語る亀だよ・・・『物語るウサギ』じゃないかって(笑)

 自分も負けじと思い入れのある京アニ作品などでは翌日アップを競ってましたが、まあとてもついて行けるわけもなく・・・あっという間にトップブロガーに駆け上がっていく背中をみてため息をついた思い出があります。

 関連記事 当時『京アニ作品』は負けたくないって頑張ってました。映画 中二病でも恋がしたい! -Take On Me- 感想:幸せと悲しさと・・・ファン必見の劇場版!- アニメとスピーカーと‥‥ 

 もちろん彼も万能というわけではなく、萌え系(きらら系)やアイドル系アニメに関しては苦手なようで、論理的に批評はできても本当の意味で楽しめないようで、ファンとの共感の齟齬から度々摩擦を生じていたようです。(ちなみに書籍では萌え系、アイドル系についても丁寧な記述があります)

 とはいえ、苦手な分野でも手広く鑑賞してレビューまで書き上げると言う攻めた姿勢に純粋に感心したんですよね。それに感化されて、自分も苦手と思っていた萌え系日常アニメでも積極的に見るようにしたんですが・・・見事にハマってしまうと言う(笑)効果があったので感謝しかないです。


旗色を鮮明にするから面白い


 そのおかげもあって、ごちうさ、きんモザの劇場版で日常系作品の魅力に気づき、今は『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』を絶賛しています。ちなみにどの作品も『物語る亀』では評価の低かった作品。

 でも逆に『物語る亀』で大絶賛されているプリキュアの劇場版シリーズなどは、正直言うと・・・そこまで絶賛する理由はよくわからなかった(汗)

 でもさ、それがいいんだよね。自分が感想ブログを書き始めてよかったのはそういった別の視点を常に意識できること。

 自分が好きな作品が酷評されている時、怒りやストレスを感じるのは当然なんだけど、他人の土俵で文句言っても虚しいだけなんだよね。こんな時こそ自分が絶賛の旗を掲げるいい機会。

劇場版ラブライブ!』が当初酷評の嵐だった時、その反発をエネルギーにしてこのブログで絶賛評を書きまくった事を思い出します。そう言う時こそ、燃えるし、記事を書いていて面白い! 

関連記事 劇場版 ラブライブ! 2度目の感想:やっと理解できた ミュージカルアニメとしての凄さ- アニメとスピーカーと‥‥ 

 物語る亀さんの関連で言えば『打ち上げ花火〜』など世間の評判が酷評一色になる中、数少ない絶賛派として旗色を同じくしたことも多かったなぁ。

 彼に限った話ではないけど、同じアニメ好きでもこうやって評価が極端に変わるのが面白いし、その多様性を知ることで却って自分の『好き』を信じることができるようになるんだよね。


最後に:ブロガーが歴史を語る意味


 この本はアニメ史を中立的に羅列したものでないかもしれない。井中カエル氏というブロガーのフィルターを通してみた歴史だ。だからこそ、情熱、悲しみ、迷いという思いが伝わる生きた歴史書になっている。

 研究者でも業界人でもないただの『いちブロガー』の著作に読む価値があるのか?と問う人もいるかもしれない。言ってみればただのアニメファンじゃないか・・・とも言える。

 でもこれほどの知識量と書く力のあるいちファンはそうそういるものじゃない。いちファンの視点でアニメ史を語ることは、まさに私たちアニメファンにとっての歴史なのだ。

 若いアニメファンだけでなく、ベテランのアニメファンにとっても『あーだ』『こーだ』と語りたくなる1冊。そんな作品になっていると思います。


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2020年10月25日日曜日

再生産総集編『少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド』感想:キラメキの舞台に巻き込まれる、まさかの大絶賛総集編!

 この作品ホントに大好きです。楽曲とセリフと映像の見事な融合。煌めきの高揚感に魅せられて何度でも見たくなりますね。結局5回みたけどまだ見足りない。

 そして、これは総集編であって総集編ではない。これは『再演』なんだ!そしてまさしくロンド(輪舞曲)なんだ・・・って気付いた時。すっごい感動してしまった。

 サブタイトルの『ロンド・ロンド・ロンド』のとおり、次々と連なるような楽曲中心の構成。そして何度も何度も・・・延々と見続けてしまう『煌めき』の魅力。

再生産総集編『少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド』予告編より
総集編なのに全編シネスコサイズに驚いた。
©Project Revue Starlight
当ブログの画像引用について

 再生産された舞台は素晴らしくて、難解だけど、ホント意味わからないけど・・・でも、もうとにかく快感の一言。あの煌めきを、もっと!ずっと見ていたい・・・再演を求めて何度も映画館に足を運んでしまう。

 そしていつしか「わかります」と『劇中のキリン』と『自分の心』がシンクロしてきた時、メタ視点で物語を見ていたつもりの自分が、いつの間にかスタァライトの世界に取り込まれていました。

 一瞬の煌めきを抽出するために『舞台』という概念を分解してアニメーションとして再構成したような作品。これぞアニメーションによる究極の舞台!こういうのが見たかったんだ!っと気づかせてくれた。

 万人向けじゃないかもしれない・・・でも、この作品は最高に大絶賛したい。胸が熱くなる。出会えてよかった作品です!


【予告編 第2弾】少女☆歌劇 レヴュースタァライト ロンド・ロンド・ロンド(公式)


難解だったTV版、そして『再生産総集編』とは・・・


 この作品は聖翔音楽学園に入学した主人公『愛城華恋』たち舞台少女が不思議なオーディション(レヴュー)の世界で競い合うというストーリー。

 TVアニメ版では、一見すると『アイドルアニメの歌劇版かな?』と思わせて・・・1話から度肝を抜くような超絶展開!あれ見たときは感動で涙出ましたね。見事でした。ホント。

 良い意味で芝居掛かった演技やセリフ、ダイナミックなアクション、特異すぎる世界観。高いクオリティの映像と音楽を維持しながら、最後はエヴァンゲリオン並みの難解さで終わるという凄まじいTVシリーズでした。

七五調の前口上に、キメポースの美しさ。
芝居掛かった演出が快感。
©Project Revue Starlight

 監督の古川知宏氏は、ウテナなどで有名な幾原邦彦作品の多くに参加。難解になる覚悟はしていましたが、正直いうとTV版最終回は難解すぎて正直自分もポカーンでした(汗)魅力はあるけどうまく飲み込めない・・・。

 でもこの総集編はすごい!総集編がすごいって意味わからないかもしれないけど本当にそうとしか言いようがない。

 本作は『再生産総集編』と銘打ってTV版12話の総集編+αという位置付けで劇場公開された作品。

 2021年に新作劇場版が上映される『前座の作品』ということで『まあTVシリーズ未見の人向け』のまとめ作品だろうなぁ・・・なんて気軽に考えてたわけですが。

 まさかここまで虜にされる作品になろうとは・・・想像もしてませんでした。


※次章よりネタバレが含まれます。TVシリーズの驚きを未体験の方はご注意ください。

※この作品はメディアミックス作品としてミュージカル舞台を原作としていますが、自分はアニメ版のみの鑑賞です。完全に自分の勝手な解釈・考察なので誤読があったらご指摘ください。


観客である自分が『再演』に巻き込まれていく・・・


 この総集編の魅力であり、本当に驚いたところ。それは『観客である自分たちも劇中に巻き込こんでいく構造』でした。

 上演されるレヴューは大枠ではTV版と同じ。でも明らかに磨き上げられているわけです。

 あれ・・・自分が見ているのは本当にTV版の時間軸なのかな?もしかして大場ななの作り上げた『再演の99期聖翔祭』なのでは・・・って予感。

TVシリーズで印象的だった大場ななの秘密
総集編ではあえて構成を変えてきて驚いた。

©Project Revue Starlight

 そしてそれを何度も、何度も、繰り返し見に行っているうちに・・・あ、これは単なる総集編じゃない・・・自分は今、99期聖翔祭の『再演のループ』に巻き込まれているんだ!って気分になる。

 図らずも観客である自分自身がスタァライトの世界の一部になっている。これまでは俯瞰的なメタ視点で作品を楽しんでいた・・・つもりの自分が、気付けば当事者としてその内側にいるような感覚!

 TV版では画面の外側にいた自分。でも今はスクリーンの『キリン』と同調して、舞台少女の煌めきを求める当事者として客席に座っている!

謎のキリン。上から目線の傍観者の象徴な気がする。
TVでは画面の外の自分に話しかけたが、今はもう逃げられない
だって俺はキリンだから・・・
©Project Revue Starlight

 やられた・・・さすがだわ。まさかこんな壮大な仕掛けになっているとは。TVから映画館へ。スクリーンから溢れる作品世界。すごい経験でした!


『キラメキ』を抽出するレヴューの輝き!


 でもこの作品の魅力は構造の凄さ考察の楽しみだけじゃない!

 もう一つの大きな魅力。それは『煌めき』を抽出する舞台。この作品の土台を支える理屈を超えた魅力。特異な設定で繰り広げられる素晴らしいレヴューの数々。

この作品独特の命がけのレヴューの世界観。
SF的文脈ではなく文字通りの舞台装置として捉える。
©Project Revue Starlight

 単にミュージカルでもない、劇伴としてでもない、ライブシーンでもない。キャラクターが歌う歌詞とセリフが重なって融合する。これが本当に素晴らしい!

 時にはキャラクターが自ら歌い、時にはセリフと歌詞が重なる。どこまでが演技なのか曖昧な演出。でもセリフと歌詞の二つの言葉が入れ替わり、絡み合い、融合することで起こる高揚感!

 これこそがこの作品の魅力の原動力。TVシリーズの内容をレヴューに凝縮することで煌めきを一層輝かせている。総集編であることを逆手にとったような構成。

 ああ、自分はむしろこれがみたかっんだ・・・レヴューを中心にした再生産総集編の構成、舞台少女の『煌めき』に感動する自分、これこそが自分の望むスタァライト !


怒涛の連続レヴューにまさかの感動!


 特に中盤の怒涛の3連続レヴュー。これには圧倒されました。それぞれ1話をかけた物語を一つのレヴューに凝縮。この高揚感が忘れられない・・・。

 まひるちゃんの『恋の魔球(7回裏)』や、双葉と香子の『宵・花咲か唄』のシーン。正直いうとTV版ではコメディー的に感じてピンとこなかったんですよ。でも総集編では本当に涙出るほど感動してしまいました。

Spotify プレイリスト
 まひるちゃんの『嫉妬のレヴュー』では想いが無理なく詰め込まれて、前半はコミカルなシーンだったのが、後半になると不思議なくらい切なさで胸が一杯

恋の魔球(7回裏)』という曲自体はコミカルなのに、後半になると印象が大きく変わるのが本当に驚きです。

コミカルな曲調とまひるちゃんの想いの対比が素晴らしい。
©Project Revue Starlight

 そして間髪入れず始まる、双葉と香子の『約束のレヴュー』は大幅にブラッシュアップされた素晴らしい舞台!正直いうとTV版ではネタ回かな?くらいの印象だったシーン。

 でもTV版より重々しく編曲され、朗々と歌い上げる楽曲『宵・花咲か唄』と、それに重ねる二人の演技・・・信じられないことに本当に涙が出てしまった。

二人の歌う楽曲と演技、そして映像の重なり方が見事。
ここまで感動するとは思ってもみなかった。
©Project Revue Starlight

 香子の京言葉のセリフ回しと双葉の叫びに胸が一杯になってくる。そして鮮やかな舞台の切り替わり・・・ここからがまさに真骨頂!サビの歌詞香子の口上の重ね方。そこへ差し込まれる幼少の映像

 数分のレヴューの中に1話を丸ごと凝縮したような濃密な舞台・・・見事でした。本当に涙出ました。


圧倒の『孤独のレヴュー』そして、大場ななの魅力とは


 そしてTV版でも素晴らしかった神楽まひる大場ななによる『孤独のレヴュー〜 第二章 華、ひらくとき』は、もはや『圧倒』と言う言葉以外ない。

 楽曲『RE:CREATE』の歌詞とセリフの融合はここに極まり、第二章のクレジットからの場面転換の演出は見事。

 観客は物語を見ているのか舞台を見ているのかわからないまま、このダイナミックな演出に飲み込まれる。

第二章からの『セリフと歌詞』のシンクロを超えた融合。
凄まじい立回りの爽快感。何もかもが最高。
©Project Revue Starlight

 これこそがアニメーションでしか実現できない舞台。他のメディアでは再現できない光景。ただ、ただ、圧倒されて涙が止まらない。本当に素晴らしいレヴューでした。

 これは、ひかるちゃん役の三森すずこさんの圧倒的な歌唱力と演技に支えられてるのはもちろんなんですが、大場なな役の小泉萌香さんによる非声優的演技との対比も魅力に感じるんですよね。

 ばななこと大場ななについてはTVシリーズの時に、声の演技にかなりの違和感を感じたんですよね。声優っぽくなくて明らかに他のキャラより浮いている・・・って気がしました。

大場とかいて『だいば』と読ませるのもなんか良い。
この作品のキーキャラクター。
©Project Revue Starlight

 こんな重要キャラなのになんで?て思いもあったのですが、この違和感こそがこの大場ななというキャラクターの重要なポイントなんだろうなぁ。

 あえてこのキャスティングだろうし演技なんだろうなと、今なら理解できます。慣れた今となっては、むしろこの声が逆に快感になってしまったし(笑)一番好きなキャラクターばななちゃんだったりしますね。


最後に:考える前に感じろ・・・そして行き着く先は。


 結局5回鑑賞しましたがそれでもまだ見足りない気分です・・・そんな自分も実を言うと1初見ではそこまで評価は高くありませんでした。

 『難解な展開』や『いかにも考察してくれと言わんばかりのメタファー』に気を取られてしまったんですよね。正直言って今もわけわからないけど(笑)

 でも初見の時のなんとも言えない充実感・・・・あ、これ『考える』前に『感じる』べきなんじゃないか?って。考える前に感じろ。まずはこの『煌めき』をただ楽しもう。

 もう一度だけ、もう一度・・・そうして、どっぷりとスタァライトの世界にハマった時に、単なる快感だけじゃない、この物語のすごさを理解できました。

 そうして今回、キリンに提示された『舞台少女の死』という言葉。

 舞台少女たちの煌めきを貪っている自分たち観客が求めるもの・・・その行き着く先。ああ、きっと、自分はとんでもないことに巻き込まれるんだろう。

 そんな予感を抱きつつ、キリンのように首を長くして新作劇場版を待ちましょう。今はただ、この傑作総集編が多くの人に評価されることを願っています!

監督:古川知宏/構成・脚本:樋口達人
キャラクターデザイン:齊田博之
副監督・衣裳武器デザイン:小出卓史
音楽:藤澤慶昌 加藤達也
色彩設計:吉村智恵
アニメーション制作:キネマシトラス

公式サイト:https://cinema.revuestarlight.com

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2020年10月6日火曜日

『Fate/stay night [Heaven's Feel] III.spring song』感想:ニワカの自分が圧倒されて涙する凄まじさ。超絶技巧の完結編。

 Fate劇場版3部作のラストにして完結編。『Fate/stay night [Heaven's Feel] III.spring song』を映画館で4回鑑賞しました。

 圧巻としか言いようがない戦闘シーン。そして素晴らしいエンディング・・・本当にすごい体験ができました。

 どうして1作目から映画館で見なかったのか!と心底後悔しましたが、でもこの3作目だけでも劇場で見られてよかった!

Fate タイトル
Fate/stay night [Heaven's Feel] III.spring song
PV・予告編より画像引用
当ブログの画像引用について
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

 涙を流すほど素晴らしい戦闘シーンがあるなんてビックリですよ!

 迫力を通り越して『感動』なんですよね。ゲーム原作ということで正直理解できてないところもあるのですが、それを補って余りある魅力でした。

 単なるファンムービーとは一線を画す傑作。原作は古いですが2020年の最新アニメ作品として一つの到達点を見た気がします。

劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song 大ヒット公開中PV

※後半からネタバレありのレビューになります。


Fate初心者の自分はどこから見ればいいのか?


 実を言うと『Fate/stay night』はこれまで未見でした。思いっきりニワカです。

 もちろん世代的に名前くらいは知ってるのですが・・・初心者には派生作品が多くて訳わからくて。何より『聖杯戦争』とか中二病的な世界観が・・・ちょっと苦手で。

 でも今回の劇場版3部作の凄まじい高評価。前作もすごかったですが、今回はまさに騒動のような大評判ですよね。これは見なけりゃ・・・ってようやく腰をあげました。

 調べるとFateシリーズというのは2004年のPCゲームである『Fate/stay night』が核になったシリーズ。

 ゲームではヒロイン別の3つのルートによる分岐があって、それを元にTVアニメを制作。次のようになっているらしい。

  1. TVアニメ1期:Fateルート(セイバールート)
  2. 旧劇場版、およびTV2期:UBWルート(凛ルート)
  3. 劇場3部作: [Heaven’s Feel](桜ルート)

 他のシリーズは派生作品ということで、今回はTV版1期と2期、そしてHF劇場版1・2をDアニメで鑑賞。駆け足でしたがセイバーや凛、そして桜とイリヤへの思い入れを急速充填して映画館に向かいました。

 ※TV版の感想は最後に書きました。

 ※次項からネタバレ含みますのでご注意ください。


すごい評判に半信半疑だったけど


 噂では『すごい!歴史を書き換えた!』とまで話題になっていたライダーとセイバーオルタの戦闘シーン。これはもう、さすがですね。

 最初は『そうは言っても戦闘シーンでしょ?』ってね。これまでだってすごい迫力のシーンはたくさんあったわけで・・・『ちょっと話盛りすぎでは?』と正直なめてました笑)

凛/桜のシーンを挟み込みながら腰を折らない構成もすごいと思った。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

 ホントごめんなさい・・・すごかった。本当にすごかった。単に迫力あるってだけじゃないんですよ。このシーンの本当の魅力はそれでは説明できない。

 もちろん緩急をうまく使った素晴らしいスピード感と力強さ。これはすごい。本当にスクリーン映えするんだけど、このシーンの凄さはそれだけじゃないんですよね。

 最初はそのダイナミックさに『おお、すごいじゃん!』って思うんだけど、戦闘シーンの最後には涙がボロボロでてるんですよ。これはホントびっくりですよ。


圧倒される『歴史的』戦闘シーンに涙が・・・


 この戦闘シーン全体に起承転結があるんですよね。映像と音響を変えてクライマックスへ導く構成。これが本当に見事!

 いくら迫力のシーンでも連続してると気持ちが飽和して飽きてくるんだけど、全然飽和状態にならないんだよなぁ。はっきり言ってこの構成は本当にウマイ

fate ライダー
宝具!からの展開。
これまでの爽快なスピード感から荘厳なクライマックスへ。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

 そして圧巻はライダーが「宝具」と唱えるシーンからのクライマックス!

 響き渡る荘厳なコーラスド派手な映像の連打、連打、連打!いままでの迫力のスピード感がこのシーンを見せるための前座だったのかと思わせる凄まじさ。

 なんだこれは・・・興奮で感情が高ぶり涙が溢れてくる。

 そして最後にセイバーの一瞬の正気を見せてからのピリオド・・・興奮の涙がそのまま哀しみの涙にスライドするような静かな終結。

 素晴らしい・・・こんなすごいの見たことない。知ってても何度も見たくなる。まさに歴史的な名シーン。これは本当に劇場で鑑賞できて良かったです。


稀に見る超傑作エンディングに感動!


 この作品、もう一つ最高にスゴイのはラストシーンですよね。もう『この一瞬』のためにもう一度見に行きたくなるほどの見事なエンディング

 Aimerの歌う楽曲『春はゆく』と『踏み出す一歩』のシンクロ!これが本当に見事!

 あの一瞬の緊張感・・・本当にスゴイです。シビれます。タイミングを計るためにセリフも調整したとのことですが完璧ですね。

 終盤に楽曲が始まってもあえてクレジットを出さず映像と楽曲に集中させる構成。序盤はシンプルな伴奏でAimerの力強い歌声を際立たせて『あの一歩』に全ての焦点を集中。暗転した瞬間にストリングスが加わってのエンドクレジット

終わった・・・』と胸が一杯になる瞬間。真っ黒なエンディングロールに不思議な開放感を感じてAimerの歌い上げる歌詞が心に入ってきます。

 単体でも素晴らしいこの曲。作詞・作曲・編曲すべて梶浦由記って・・・本当に意味がわからないレベルの才能。すごいよなぁ。

 当然ながら劇伴との親和性も非常に高くて、その真骨頂がこの高度なシンクロに結実している感じ。

  OP/ED好きの自分にとっても稀に見るレベルの超傑作エンディングでした!


最大の謎と不満点。でもそれを補って余りある魅力。


 もちろん不満点が皆無という訳じゃないです。やっぱり説明的なシーンが長い(しかも難解)とは思いました。

 でも複雑な作品世界の解説だから仕方ないかな。無いとないで困るし。初見では何言ってるのかさっぱりわからないんだけど、何度か見てようやくある程度理解できました。

 それでもわからない謎が残りますね。特に一番はラストの復活シーン

 人形に魂を入れて復活させたのかな?というのは分かるのですが、その詳細については一切言及がないのでモヤモヤしたまま。

 最初はバーサーカーの魂とかと関係あるのかな?と思ったのですが、何度見てもわからずお手上げでした。

fate 士郎
4度見ても謎が解けない部分が結構あった。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

 原作ファンの方の助言やサイトを見てようやく理解できました。別作品とのクロスオーバーがあるんですね。

参考サイト  【ネタバレだらけ】HF三章感情爆発おじさんの独り言 - 読者0太郎のブログ( ᷇࿀ ᷆ ) さん:原作ファン視点による詳細な感想。原作との違いも参考になりました。

 これはファンにとっては嬉しい仕掛けですがニワカには厳しい(笑)流れはわかるようになっているとはいえ、もう一言二言の補足説明があれば・・・と思いましたね。近くで見てたカップルも『最後あれなんで?』って言ってたし。

 他にも士郎の体からどうして剣がたくさん出てくるのか?とか、臓硯はどうして悪者になったのか?とか実はまだよくわかってません(汗)

 でもこれは1・2作目の読み込み不足かな・・・期間限定配信だったので1回しか鑑賞できなくて。改めて通して見てみたいや。

 そういえば桜の小さい使い魔も謎だったけど、子供時代の桜のものだって特典パンフに書いてありましたね。特典パンフのインタビューも結構参考になりました。

 こういう難点はありましたが、でもこの作品の魅力はこれを補って余りあるものですね。結局のところ何度も見たくなる作品だし、そういう考察に応えてくれる強度のある作品なのは間違いないです。


TV版の感想も:1期は意外なくらい馴染みやすい!


 実はHF1作目が公開された頃『Fate/Zero』というシリーズが再放送されて見たのですが挫折したんですよね。前日譚だからわかるかなぁ・・・と思ったのですが1話でダメでした。

 自分の苦手な西洋の魔法系?とか、登場人物も意味不明で・・・って、今思えば仕方ないのですが。そこで Fate自体に苦手意識が出てしまったんですよね。

 それに比べるとTV版1期は圧倒的に見やすいですね!予想以上に学園ラブコメ的ノリで進行するので個人的にはすごく馴染みやすかったです。

 やっぱり初めからこちらをチャレンジすればよかったなぁ。スタジオディーン制作ということで絵柄も少し違って古さも感じますが原作にはむしろ近いみたいですね。

 物語的には士郎の出しゃばりが若干ウザいですが、これもある意味、後のシリーズの布石ですよね。キャラの魅力で言えば2期のufotable版より好きかも。セイバー編だけあってセイバーの魅力は素晴らしいいですね。


2期ufotableのクオリティーの高さにビックリ


 続いてディーン版の劇場版UBWがあるのですが時間の関係でスルーして、次に見たのはTV版2期

 ufotable制作に変わってハイクオリティーな戦闘シーンに驚きます。物語的にも1期を伏線とした謎解きが素晴らしいですね。

 凛ルートとはいえ意外なくらいセイバーの魅力にも焦点があって充実した作品でした。同時にFateが単純な美少女アニメじゃないことを理解しました。ここまで複雑なシナリオだったんですね。でも桜の存在感がびっくりするくらい薄かった(笑)

狂気に可愛さを残すバランスが素晴らしい黒桜。
1,2作を駆け足で見たのが残念。もっと桜分を充填して臨みたかった。
©TYPE-MOON・ufotable・FSNPC

 そしていよいよ桜ルートとなる[Heaven's Feel]の1・2作を鑑賞。時間の関係で各1回しか見られませんでしたが、これは映画館なら絶対2回以上見た気がするなぁ。特に2作目の『lost butterfly』のエグさはすごい!(映画2作目のみPG12規制)

 Fate/stay nightという作品が元々はPC版のいわゆる18禁ゲームの出自だったことを思い出させるエピソード。これは初見を映画館で見たら衝撃的だったろうな・・・クオリティーも高くてここは後悔してるところです。

 今回見終わった後に、Fate/Zeroを改めて見はじめましたが『わかるっ!わかるぞ!』って(笑)あれほど意味不明だった1話がすごく面白い!

 まあ、聞く話によるとFate/Zeroを最初に見る方が良いという方もいるので一概にはいえませんが。自分のように学園ラブコメ的なものを好む人は無印のFateルートからをお勧めしたいですね。


最後に


 まあ正直まだニワカと言われても仕方ない段階ですが、それでもこれだけ感動できました。

 ゲームからのファンに比べると思い入れの少ない分だけ十分に堪能できていないのかもしれません。その辺がこの作品の難しい立ち位置ともいえます。

 でも最新のアニメ映画してみれば一つの到達点ともいえる作品。そういう意味でも本当に見逃さないでよかった。

 広大な裾野の広がるシリーズですので確かに入りにくさはあります。それでも自分レベルのニワカでも圧倒される作品

 苦手なジャンルだからって敬遠するのはもったいない超絶技巧の完結編!これを機に多くのファンを獲得して欲しいですね。


Fate/stay night 公式サイト

原作:奈須きのこ・TYPE-MOON

監督:須藤友徳/脚本:桧山彬(ufotable)

音楽:梶浦由記/制作:ufotable


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2020年7月4日土曜日

『ニュー・シネマ・パラダイス』感想:30年後の未来に『郷愁』の意味を知る

ニュー・シネマ・パラダイス』(劇場版)を映画館で見てきました!

 うぁ・・・すっごい泣いた。若い頃ビデオで見た時も泣いたけど比べ物にならないほど泣いた。おっさんになって見るとホントやばいね。

 単にトシとって涙もろくなっただけ・・・というのは置いておいて、でもやっぱり『ノスタルジア』って言葉の響き。『郷愁』の重さだよね。これは若い頃よりもずっと強く響いたな。
『ニュー・シネマ・パラダイス』
 字幕劇場版(1989年公開)  109シネマズ菖蒲で鑑賞
当ブログの画像引用について
ネタバレのあるレビューですのでご注意ください。あらすじはAmazon Primeビデオなどに書いてあります。

今だからこそ理解できるノスタルジア


 若い頃感じてた『郷愁』ってちょっと甘くて切ない『青春の残り香』みたいな感じだけど、トシとった今だとちょっと違って感じるんですよね。

 なんというか、もう多くの思い出が記憶の底に沈んでるんだよね。忘れ去ったわけじゃないから『忘却』とはまた違うんだけど。

 20代の頃は青春の思い出って結構近くにあったんだけど、40代も後半になるとずっとずっと遠くに来てしまって思い出すことも稀になってる。

 それはまさに『幻影』なんですよね・・・自分の思い出はもはや映画と変わらない

 若い頃はまだ『幻影』なりきれてなかったけど、30年という時間は思い出を幻影に変えちゃうんだね。人も街も変わってしまって同じものは存在しない

 だからこそ、ひょんな事から思い出した時、「わっ!」て一度に記憶が溢れてくる感情に激しく共感するんだと思う。一つ一つは些細な記憶の積み重ねなんだけど、それが自分をカタチ作っているから。

 ラストのキスシーンのフィルムってまさに『映画としての幻影』と『過去の幻影』を重ね合わせたような演出ですよね。ホント見事。単に懐かしいなぁ・・・ってだけじゃない。もっと深くて複雑なもの。それが郷愁ノスタルジアなんだよなぁって。

 以前見たときは『ラストにコレをもってくるかぁ!』っていう驚きの感動だったんだけど、今はさらに共感が深まりますね。今回はフィルムシーンの結構前から思いっきり泣いてましたが。

若い頃は素直に受け止められてなかった


 もちろんそれだけじゃなくて、序盤〜中盤の回想シーンも面白かった。若い頃より素直に楽しめるんだよなぁ。やっぱりそれもトシ取って素直になったってことがあると思う。

 子供に対する感覚とか、母親への思いとか、夫婦の愛情とか・・・いろんなものが若い頃は素直に受け止められてなかったかもしれない。

 あとアルフレッドが別れの際に告げる『自分のすることを愛せ』というセリフ。これも今聞くと響くなぁ。若い頃は無限の可能性がある(ような気がする)から逆にこの言葉に込められた思いが伝わってなかった気がする。

 これがいかに大切でかつ難しいことか・・・って。いろいろ失敗したり遠回りしたり、そういう年月を重ねてきたから一層感じるんだね。アルフレッドがトトにこう言いたくなる気持ちがわかる気がするな。

『映画館で見る意味』を改めて感じた


 それにしても、やっぱり映画館のスクリーンでみることの意味を感じますね。単に映像がキレイとか音が良いとかじゃないんですよね。映画館で見ることの意味って。

 以前ビデオで見たときは、ラストシーンでは感動したのですが・・・中盤はちゃんと見れてない気がしましたね。正直言うと少し退屈だったかも(笑)

 やっぱり自室だと集中力がね。でもそう言う作品こそ映画館で見るのが良いんですよね。(まあこれもアニメ映画をたくさん見るようになって気づいたところがありますが)

 特にこの作品ってモノクロ映画のシーンがたくさん出てくるけど、この印象が特に違いますね。実際の映画館のスクリーンに映されたモノクロ映画は、TVで見るのとは違って映像の力を感じます。

 そして、いままさに劇中の観客と同じように見ているって感じ。作品の中の観客とのシンクロ感があって不思議と飽きが来ない。

 ホームシアターで部屋を暗くして集中できる環境なら良いんですが・・・なかなかね。それに他のお客さんとの一体感!当日は少なかったけど、それでもやっぱり感じるところはあって、そればかりは映画館でないと感じられない感覚ですね。

最後に:30年後の未来から 


 この作品は大きくわけて『現代』と『30年以上前の過去の回想』の2つのパートがありますが、この作品の『現代』って言うのは製作された1980年代なんですよね(多分)。だとすると、今見るってことは『さらに30余年後の未来から見ている』ってことになるわけです。

 この作品が公開された当時は映画館は完全に斜陽産業。存在価値自体が問われていた頃でした。この作品を初めて見た時も映画館の鎮魂歌のような気分で見てた気がします。

 でもその後、90年代になって近代的なシネコンの開業が相次ぎ、今はむしろ映画が身近になった気がします。映画の未来が安泰とは言い難いですが復活したのは確か。そんな中での今回の自粛・休業という強烈な向かい風。

 再開というタイミングで、当地の109シネマズ菖蒲では『ニュー・シネマ・パラダイス』を特別上映してくれました。なかなか良いセンスしてますよね。映画館で見ることの素晴らしさを再確認できる再開にピッタリの作品でした!



監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
公開(日本):1989年12月16日
上映時間:124分

※今回鑑賞したのは124分の劇場版です。かなり加筆されて二人の恋に焦点を当てた3時間近い完全版(ディレクターズカット版)もあります(未見)

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2020年6月10日水曜日

AKIRA IMAX版 感想:世紀末の空気感とあの頃の未来

  IMAX版の『AKIRA 』を見てきました!

 昔はビデオで何度も見た作品ですが4Kリマスター版ということでIMAXの超巨大スクリーンでの上映!こんな機会はそうそうないよなぁ・・・と思ってたら映画館が休館!

 焦りましたが再開後も継続上映とのことで早速行ってみました。


あらすじ:新型爆弾で崩壊した東京。
復興し2020年のオリンピックを翌年に迎えるネオ東京が舞台。暴走族の金田と鉄男が触れるAKIRAの秘密とは。 (1988年公開)

 ちなみにIMAXとは4DXみたいに席が動く奴じゃなくて、専用の高精細フォーマットを超大画面で上映するものです。

 そのIMAXフォーマットって70mmフィルム相当の正方形に近い形なので、アニメに多いビスタサイズにによく合うんです!

 今回は35mmフィルム4Kリマスタリングしたものですが、そういう意味でも最適ですね。109シネマズ菖蒲のレーザーIMAXで鑑賞しました。

 ちなみにIMAXについては下記の記事にも詳しく書きました。
関連記事 『君の名は。』IMAX版の感想:空気感を感じる映像に2Dアニメの潜在力を体験できた - アニメとスピーカーと‥

※最後に少しだけネタバレあるレビューですのでご注意ください。

序盤から懐かしさ爆発


 やっぱり世代的に作品の評価云々の前に懐かしさが先に来ちゃいますね。序盤で『春木屋』の看板見た時は「うぁ〜久々にこの店名みた!』って。顔がにやけちゃいます。

 記憶の底に沈んでた言葉が突然浮かび上がってきた快感!
緻密だが手描き感のある映像
現代の3DCG併用とは明らかに違いを感じる。
『AKIRA』PVより画像引用
当ブログの画像引用について
©1988マッシュルーム/アキラ製作委員会

 そして芸能山城組ガムラン調の音楽が流れてくると「きた〜!』ってテンション上がって。それだけで目頭熱くなってきて、これは冷静な作品評価とか無理だよね。どうしても思い出補正かかっちゃう・・・でもやっぱカッコイイ疾走シーン

4KリマスターはIMAXでどうだったか?


 ある意味で今回一番期待してた4Kリマスターの映像。効果はどうだった?と聞かれれば『いい意味で変わらない』ですね。

 '88年(昭和63年!)当時は文句なくスゴイ映像でしたが、そうは言っても30年以上前の作品

 IMAXの超巨大スクリーンに拡大すれば、本来ならボケた映像になっちゃうわけですよね。それが普通に見られるってだけで十分リマスタリングの意味があると思います。
当時は未来感にワクワクした。
今見るとこれを作画で動かしていることに驚く。
©1988マッシュルーム/アキラ製作委員会

 逆に変にシャープすぎたりしたら違和感ですしね。『高精細』のレベルは当時と現在は全く違いますから、緻密でシャープな映像というなら現代の作品には及ばないわけで。これは手描きの質感とか現代作品との違いを楽しむって感覚で見るべきでしょうね。

 ただ、エンディングのクレジットは結構ボケて読みにくかったので、文字に関してはもう少し強めにシャープ化してくれても良かったかな。

 その代わりというわけじゃないけど、サウンドに関してはすごく良かったですね。5.1chサラウンドもこれ見よがしなものではないけど全然古さを感じないです。座席が震えるような低音で芸能山城組の迫力が活きてました。

 あと、劇場の差もあるかもしれないけど『定位の良さ』は結構感じましたね。スクリーン内での細かな位置感までハッキリわかる感じでした。

『超能力』って言葉が現役だった時代の空気感


 さて、肝心の内容ですが・・・何度も見た作品だし原作コミックも読んでるので今更評価をつけるまでもなく名作には違いないです。むしろ、初めて見た人の感想を聞きたいくらいですね。

 その上で『今見てどう思うか?』ってことですが、やっぱり時代性を感じる作品ですね。それは『古さ』という意味じゃなくて『時代の空気』を感じるってことで。
図らずも話題になったオリンピック中止騒動。
ある意味ものすごい宣伝になった。
©1988マッシュルーム/アキラ製作委員会

 一言で言えば当時の『世紀末感』なんですよね。超能力とかディストピアとか『オウム事件』以前の空気感ってこんな感じだったよなぁ・・・って強く感じました。

 もちろん当時はこんな荒れた世界だったわけじゃなくて、バブル絶頂の繁栄しているからこその混沌とした不安。そんな世紀末の空気感を反映してた気がします。

 最近はサイコキネシス超能力って言葉自体が死語化してますよね。代わりに『異能系のアニメ』は沢山あるけど、言葉と共に『空気』も変わったような気がするんですよね。

退廃的なシーンが面白く見える


 あとこの作品を当時(高校生くらいの頃)に見たときは理不尽な暴力シーンとか退廃的な感じに『気持ち悪さ』も感じてました。多分、当時は不良的なものへの忌避感があったのかな。

 でもトシをとったせいかその辺は逆に面白く感じちゃいますね。特に学校でのちょっとしたセリフの掛け合い悪態のセリフとか、これがいいリズム感ですごく楽しい。

 なんかアメリカでいうヒップホップ的なリズム感を日本語で違和感なくやってる感じ。これって案外、最近のアニメでも見ない気がしますね。

アニメ映画版AKIRAは金田と鉄男の愛憎劇


 この作品って、初めて見たときはAKIRAが主人公か?と思ったら、金田が主人公なのか・・・と思ったら、どんどん意味なくなって鉄男なの?って掴み所なくて戸惑った記憶があります。それも今だと面白い構成だなぁって感じましたね。

 映画版のAKIRAって『二人の噛み合わなさ』に焦点を当てた構成なんですよね。言ってみれば金田と鉄男の愛憎劇なんだなぁ・・・って今なら素直に楽しめました。

 コミック版では国家や宗教も巻き込んだ『群像劇的な話の広がり』が魅力なんだけど、映画版ではこの二人に焦点を当ててまとめたって感じですね。

 そう思ってみると『鉄男』がもはや国家レベルで手が付けられない存在になったのに、突然『金田』が主人公面して割り込んでくるのも素直に面白いって感じました。

類似性より、むしろ際立つ現代との違い


 今回『東京オリンピック』との奇跡的なシンクロが話題になったけど、いざ本編を見直してみると、むしろ現代との違いが際立ちますね。

 まずコンピューターネットの描き方が古いですよね。技術的にはあの当時の延長線で描いている感じ。もちろん違う世界線の話なんですが今見ると違和感ありますね。

 もう一つは、学生運動時代のような社会風景。これもある意味正反対ですね。街頭デモが少ないってのもありますが、そもそも社会運動自体がSNSなどネットで消費される時代になったってのもありますね。

 ちなみに公開された'90年前後っていうのは日本のバブル景気の絶頂期。'60年代の安保闘争は完全に過去の歴史となっていて、'70年代生まれの自分にとっては今以上に政治的無関心の時代だった気がします。

 そんな中で、1周回って安保闘争のような時代を繰り返すという視点は面白いのですが現実は全く違ったわけです。

 これはおそらくAKIRAの世界では一度東京が吹っ飛ぶことでもう一度戦後をやり直し『第3次ベビーブーム』で若者が増えたからじゃないかな・・・って思ったんですよ。

『希望は、戦争。』という皮肉


 これって40代の氷河期世代である自分にとっては『強烈な皮肉』に見えるんですよね・・・。当時は『ディストピア的な暗い未来』に見えた風景が、今見ると『若者の多い活力ある戦後』に見えてしまうという皮肉。

 取り返しのつかない少子高齢化が決定した現実の日本と比べて、どちらが本当のディストピアなのやら・・・なんとも複雑な気分になりました。
2005年頃に起こるはずだった3度目のベビーブーム。
現実世界では起こらなかった。(内閣府より)

 第二次大戦後にベビーブームが起きて、その時生まれた団塊の世代第二次ベビーブームを起こして団塊ジュニアが生まれる。自分も含めた今の40代ですね。AKIRAの世界ではその後'82年に第三次世界大戦が勃発。

 現実の世界では'91年のバブル崩壊後の失われた20年で、第2次ベビーブーマーである団塊ジュニアは『氷河期世代』として打ち捨てられ、日本の未来を託すべき『第3次ベビーブーム』を消滅させてしまいました。

 しかしAKIRAの世界は終戦からの復興の過程で団塊ジュニアによる『第3次ベビーブーム』が起こっていたんじゃないかな。その子供が金田や鉄男のような十代となったのがちょうど2019年頃。

 暴走族も学生運動も若年層が多いからこそ起きる現象だったのかな・・・と考えるとそれほど悲観する社会じゃないのかも(笑)

 氷河期世代の作家である赤木智弘氏の評論に『希望は、戦争。』というフレーズがありましたが・・・いやはや、本当に戦争によって希望のある世界になってるよって。

 30年後にそんなふうに『AKIRA』を見ることになるとはね。あの頃はまったく想像していない未来でした。

※以下コミック版のネタバレが少しあります。

でも、やっぱり大東京帝国を見たいかな


 とまあ、話が横道に逸れましたが、ただ正直いうとこの劇場版アニメは確かにすごいんだけど・・・コミック版見ちゃうとね。

 やっぱりアキラ覚醒後の世界、つまり大東京帝国からのストーリーを見たいですよね。

 アニメ自体は原作終了前の制作とはいえ、原作者の大友克洋氏みずから監督脚本をしたので変な改変もないし一応完結しているので当然文句はないです。(アニメは原作6巻中3巻くらいまでの内容を中心に作られています)

 ただ今回、映画版のラストを忘れてて、そっか・・・ここで終わりかぁ。って思ったのは正直なところ。アキラ自体もあまり描かれないしね。映画版ではアキラって何というか神様みたいな存在ですよね。

 のちに完結したコミック版を見るとアキラ覚醒後の世界が長く描かれててそれが良いんですよね。 人間としてのアキラ鉄男。あと『ミヤコ教団』の描き方も好きだったなぁ。映画版だとミヤコ様って全くのモブ的存在ですもんね。

 この映画単体で見れば面白いと思ったんだけど、未読の人はぜひコミック版も読んで欲しいですね。そういう意味では『風の谷のナウシカ』とのアニメ版と原作の関係にちょっと似てるかも。

 そしてコミック版の劇場版ができれば・・・と思うけどさすがに難しいかな。

 とはいえ、IMAX版AKIRA。見て良かったです。あの時代から30余年たって、本当に『あの頃の未来』にいるんだなぁ・・・って実感しました!

原作・監督:大友克洋
脚本:大友克洋 橋本以蔵
音楽:山城祥二
制作会社:東京ムービー新社

AKIRA 公式サイト
https://v-storage.bnarts.jp/sp-site/akira/

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2020年2月9日日曜日

琴線触れまくりの劇場版アニメヒロイン5選

 自分の琴線に触れたアニメヒロイン選です!

 なぜ突然?というとTwitterでぎけん(@c_xさんが企画した『アニメヒロイン選』があったからです。以前からこういうの書きたいな・・・と思っていたのでいい機会だと思い便乗させていただきました。

 あまり捻りもなく単純に『好きなヒロイン』を挙げていくだけですが、一応自分らしく『劇場版アニメ』の縛りで選出しました。本当は10選にするつもりだったのですが時間が足りずに5選で発表します!(あとで追加するかもしれません)

羽川 翼 『傷物語 3部作』


裸眼Verも良いけどやっぱりね・・・劇場版は超絶クオリティ。
予告編より画像引用(当ブログの画像引用について
© 西尾維新/講談社・アニプレックス・シャフト

 好きなアニメキャラといえば真っ先に思い浮かぶのは羽川 翼ですね。自分にとって『萌え』とはまさに彼女に象徴されるもので、この感覚はどんなキレイな人であっても3次元では体感できない感覚堀江由衣さんの魅力的な演技と相俟って素晴らしい体験でした。

 これほどまでに魅力的な彼女の裏にある過酷な身の上、そして阿良々木くんとの行く末。どうにもならない切なさが苦しい。でもそれこそが魅力的な作品なんだと思う。続・終物語に至るまでずっと彼女の幸せを願って見てしまうんだよなぁ。

 数あるシリーズの中でも、このメガネバージョンは最高で羽川さんの幸せを一番感じることのできる作品ですね。
関連記事  傷物語 Ⅱ 熱血篇の感想:羽川さんの魅力をこれでもか!てくらい詰め込んだ映画で感謝しかない - アニメとスピーカーと


巴マミ 『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』

マミさんの変身シーンは本当に好きだった。
予告編より画像引用
©Magica Quartet / Aniplex

 自分が深夜アニメにハマるキッカケになったのはこの『劇場版 魔法少女まどか☆マギカ』でした。数ある見所の中でも特に印象的だったのはマミさんの変身シーン。あの美しさには本当に魅了されて、この時間がずっと続いて欲しい・・・となんども映画館に通った事が思い出されます。

 そして頼り甲斐のある先輩魔法少女としての『強さ』の裏側に『弱さ』もかいま見える所が彼女の魅力ですね。もちろんこの作品は4人のキャラクターすべてが強烈な魅力を持っていて甲乙付け難いのですが、萌えという点ではやっぱりマミさんだよなぁ・・・って理由で選出しました。

澄田 花苗 『秒速5センチメートル』


予告編だと顔が見えないくらいだけど本編の印象は強い。
予告編より画像引用
(C) Makoto Shinkai/ CoMix Wave Films

 3編に分かれた作品の2編目『コスモナウト』より、東京から来た主人公に恋する種子島の女の子。彼女のモノローグは切なさの塊のようでした。悲しいくらいの一人相撲なんだけど、燃え上がるような青春の心を見事に描いていた。フィクションとわかっていつつも彼女の幸せを願わずにはいられなかったな。

 本当にこの作品は大好きで、映画館を出てすぐにもう一度チケットを買って次の回を見た作品。予告編で号泣したのもこの作品が初めてだったかも。自分の予告編好きは新海監督の影響が大ですね。

 他の人物も魅力的なんだけど、彼女は特に心の描写が深くて印象に残る人物でした。


久石 奏 『劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~』


外見の可愛さと毒気のギャップが最高。
予告編より画像引用
Ⓒ武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会

 新作劇場版からの新一年生キャラの中心的人物。初見ではなかなかイラっとさせられましたが、この『毒気』が癖になるんですよね・・・回数重ねるたびに心地よくなってくるという。サンフェスの時の『ハァ?』って顔なんて最高です。

 嫌な子が改心して変わるとかじゃなく、嫌なままでどんどん魅力的に感じてくる不思議。彼女の複雑な人間性が垣間見れるからこそ、久美子の屈指の名シーンである『雨の長セリフ』が一層輝くんだと思うんですよね。

 初見時の印象からここまで魅了されるとは思わなかった。意外な人物でした。


相生 あかね 『空の青さを知る人よ』


優しいだけじゃないってこういうこと。
予告編より画像引用
Ⓒ2019 SORAAO PROJECT

 主人公は妹の『あおい』だけど、この物語は『あかね』の物語だというのが自分の解釈。メガネが本当に似合ってて高校時代の可愛さは特筆もの。30歳になっても『しんの』の言う「かわいいババア」の通り魅力的な女性。(自分から見たらずっと若いんだけどね)

 この一見『よくできたお姉さん』だったり『一途に待つ女』に見える女性だけど、そんな単純じゃない。彼女の内面を外側にいる人たちを通じて見ることで彼女の複雑な心が浮き上がってくる。

 大人になっても可愛らしくて優しい彼女だけど、それだけじゃない人としての深みが感じられて魅了されてしまうんですよね。
関連記事  映画『空の青さを知る人よ』感想:震えるほど泣いた2019年屈指の傑作! - アニメとスピーカーと

 以上『琴線触れまくりの劇場版アニメヒロイン5選』でした!こうやってみると基本的にせつないキャラが好きですね。あとメガネキャラも好きですね!良い機会をいただいたぎけん(@c_x)さんにも感謝です。

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