『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を映画館で見てきました。
素晴らしかったです。もうとにかく終盤はなんだか涙がボロボロ出ちゃって・・・エンディングは嗚咽を堪えるだけ。しばらく言葉が出ませんでしたね。
なんだろうね。悲しさとか感動とかそういうのを超えてるというか。 TV放送から25年余り。ああ、本当に終わらせたんだ・・・という衝撃なのかな。よくわからない点も含めて、もうグゥの音も出ないほどの完璧すぎる終劇。
心のどこかで『わかりやすく終わるはずがない』ってタカをくくってたんだけど、次々と広げた風呂敷をたたみ出す展開に『ちょ、ちょっと待て・・・マジで?本当に終わらせる気?』って・・・いや終わるのは知ってたけどさ。
ここまでストレートな『最終回』になるとは思ってなくて混乱してしまった。
※以下全てネタバレ全開です。考察は個人的な解釈で公式なものではありません。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』予告編より ©カラー/EVA製作委員会 (当ブログの画像引用について) |
綾波が消えて、冬月が消えて、ミサトさんが死んで・・・そして作品自体が分解されて消滅していくような終盤の構成に、ただ、ただ涙が止まらなかった。もはや感動って言っていいのかすらわからない涙。
そしてあのラストシーン。ある意味旧劇の焼き直しのようにも見えるけど、自分は全然意味が違うと感じたな。『現実に戻れ』ではない。もっとずっとポジティブで今の時代だからこそわかる意味。
シンジ君がゲンドウにカタをつけに行くように、庵野監督はどうケリをつけたのか?25年の時間を超えたからこそ成立する回答。それを見せてくれた気がする。素晴らしい作品でした。
最初の2時間はとにかく面白い
公開延期には慣れっこになってる身としては、突然の公開日再決定にびっくりして落ち着かない気持ちでしたね。正直もう少し先でいいかなぁ・・・と思ったのですがネタバレしたくないのでちょっと無理して初日に鑑賞!
期待と不安が入り混じるなか、なんと映画館の帰り客の会話でネタバレを食らうというショックな事件(でも大したネタバレじゃなくて良かった)もありましたが、どうせ初見では理解できないんだろうなぁ・・・なんてある意味達観しながら鑑賞開始しました。
洗練された映像なのに懐かしさを感じる雰囲気作りがうまい。 (本編12分映像より)©カラー/EVA製作委員会 |
本編前に振り返り映像入ると思わなくてビックリしたけどあれ良かったですね。Yotubeにも上がってたけど全然知らなかった。
ナレーションなしでセリフの切り貼りだけなのに見事に再現してるんだよね。映画館で見るとさらに良くて、アレだけでちょっと涙腺緩んじゃった。緊張感も高まるし最高の導入になってたと思う。
最初の2時間近くは変な言い方だけど普通に面白かったなぁ。155分の長尺ということでダレたりするんじゃないかと心配してたけど全然飽きなかった。
戦闘シーンから風景まで全てハイレベルな美しさ。ホント現代的に洗練されているんだけど違和感はないんだよね。序盤からガッツリ集中させてくるしTVシリーズや破のような爽快感がありましたね。
時間を逆手に取り『今』の作品にした構成に驚き
そして前半のもう一つの柱。第3村のエピーソード。この構成はホントやられた!って感じ。
もはや時代は移りいろんな状況が変わった今、正直言うとエヴァという作品とどう向き合えばいいのかわからなかったんだよね。
少なくとも序・破まではリバイバル感覚で見ていたし、Qだってまだそんな気持ちが抜けてなくって戸惑いがあった。
でもこの構成でいきなり『今』に引き寄せられた。
もはやリバイバルやリメイクのような懐古趣味の作品じゃない。まさに現代の、今の自分の作品にしてくれた。
このカットだけでなんとも言えない気持ちになる。 ©カラー/EVA製作委員会 |
破から14年の時間が経過し大人になったかつてのキャラクター達。彼らの視点はまさに今の自分たちの視点とシンクロする。
突然現れたあの頃のままのシンジ達を見る彼らは、日々の生活に追われエヴァのことは心の片隅の思い出となっていた自分だ。
かつての思い出がまた戻ってきたかのように耽溺する日常シーン。そして自分たちの知る綾波がまた戻ってきてくれた気がしてほっこりしたとき夢は終わる。
動と静。とにかく面白い2時間。そりゃわからないことも多いけど、細かいことは気にせず、すばらしい力技でねじ伏せられる感じ。
普通の作品ならこの時点で満点・・・でもまだなんか足りない。ただ面白いだけで終わったらエヴァじゃないような・・・そんな気持ちに気付いた時。唐突にレールが切り替わった。
ラスト30分。急激にくるギアチェンジ。
残すところラスト30分。急激にくるギアチェンジ!きた!きた!エヴァが来た!。
妙に違和感のある3D映像。陳腐な舞台。すべてが作り物であるということを強く暗示させる演出。メタフィクションとして物語が次々に分解されて・・・そして最後は原画にまで。
ああ、やっと来た。これがなくっちゃエヴァじゃない。あざとい?確かにそうかもしれない。でもここからだ。ここから監督はどうするんだ?
ゲンドウを追って人智の及ばない世界に向かうシンジ。覚悟を決めたシンジの言葉が監督の思いと重なって聞こえた。
ここからのゲンドウの展開には良くも悪くも驚いた ©カラー/EVA製作委員会 |
そこからのゲンドウの独白。えっ?えっ?そこまで分かりやすくやっちゃうの?わかってる、わかってるけど・・・・え?さらに各キャラの丁寧なまでの解説!
うそ・・・ちょっと、マジで、これは・・・本気で終わらせにかかってる?監督が責任を取って、全てにケリをつけるような猛烈な回収。
意味のわからないレベルで涙が止まらなくなる。これを感動って言っていいのか?そういうのとはなんか違うのかもしれない。でもとにかく涙が出る。この20年余りの自分の思い出がどんどん回収されていくような。
呪縛からの解放?そもそも解放なんてされたかったのか俺?
そうだった。自分はまだ『覚悟』ができてなかった。答えはとっくに決まってるのに・・・そんな自分に監督は有無を言わせず突き進んでいく。
心の準備ができないまま大切なものがどんどん消えていく・・・感動というより慟哭といったほうがふさわしい嗚咽・・・終着駅が近づいている。
自分は『現実へ戻れ』とは解釈しない
そして、全てにカタがついた後。駅のプラットホーム。
あれはどうなって、何を意味しているのか。まだわからない。ちらりと見えたカヲル君と綾波みたいなカップル。あれは幻だろうか。アスカは多分いないんだろう・・・そして成長した姿のシンジとマリ。
予告編では全く気付かなかったね。 ©カラー/EVA製作委員会 |
ラストシーンの駅前の風景。二人は明るい駅の外へ出て行く。旧劇を連想させるラストシーンだけど、自分はそれを『現実へ戻れ』とは解釈しない。
もはや現実とアニメを区別する意味などなくなった。
25年前。アニメおたくだった彼らは、今や社会の主要を構成し、アニメはごく一般的な娯楽ジャンルとなった。
いまや『アニメおたくが現実に戻る』なんて概念自体がナンセンスなものになった。
だって、あの駅前の風景。リアルだけど3DCG併用のハイパーリアルな映像。あれこそが『アニメとリアルに境目なんかない』という現実を物語っているのだと思う。
時代は変わった。それを自覚させてくれる見事な着地点。
かつて『 ATフィールド』という概念は個人の関係のみならず、アニメおたくと現実社会の軋轢をも表現していたと思う。
だから旧劇の時代では、この新劇の解釈は通用しなかったはず。あの頃の未来。2021年の今だからこそ成立する回答。これは『待たされた』のではなく『機が熟した』というべきだったのかもしれない。
それと同時に終わってはいけないものが終わったような、失いたくなかった大切なものが消えてしまったような・・・そんな大きな喪失感を感じてしまう。
エヴァファンがまだ奇異な目で見られていた時代。それでもあの時代だからこそ感じる風があった。
長い長い祭りは終わり、一つの時代が過去のものになった。エヴァが終わらない限り、自分はそれに気づかないフリができたのかもしれない。でも終わってしまった。
だから宇多田ヒカルの『One Last Kiss』の歌詞が本当に心に沁みる。たくさんの『忘れたくないこと』をありがとう。
素晴らしい作品。傑作でした!
2回目を見たら更に面白く感じました。結末を知ったからこそ見えてくる物がある感じです。あと駅のホームで反対の電車来る前のホーム全体見えるシーン綾波とカオルくんの左側の少し離れた所にベンチに座ってゲームしているアスカがいたと思うので次の機会に確認してみてください。見間違いの可能性があるので…(笑)あとスタッフロールで歌が始まって目をつぶって歌詞に集中したら涙でました…
返信削除TTさん、コメントありがとうございます!
削除なるほど!アスカいましたか。いても全然おかしくはないですよね。自分も確認してきます。
ホント歌詞すごいですよね。なんというかダイレクトじゃないんだけど、明らかに作品全体をイメージさせてきて猛烈に感動しますね。
自分も2回目観に行くつもりですが、都合でもうちょっと先になりそうです。楽しみです!
一応ラスト駅ホームの場面を確認してきました!カオルくんとレイがいるホームの(スクリーン)左側に3個イスがつながったベンチ?の一番左側にアスカの髪型っぽい人が座ってます。(ゲームしてる?)小さくて本人か不明です…白い服の上から黒い上着を着てます(腕に赤いライン入り)頭に赤い髪飾りしてたかも? あと更に左側に黒髪の制服(黒いセーラー服?)の女の子が立ってました。
削除TTさん、コメントありがとうございます!
削除やっぱりいましたね!自分も2度目を見にいった時に確認しました。確かにゲームしてる感じでしたね。カオルくん達とちょっと離れたところなので初見では見逃してました。腕のラインまでは見てなかった〜観察力すごいですね。黒髪の子はちょっと気づかなかったかも。感動してるし、一瞬だしでなかなか注意するのが難しいですね(笑)3度目の機会があればそこも確認したいです。
それにしても2度目は話の流れがわかった分、気づきも多くて更に感動してしまいました。
感想拝見しました。ラスト30分、私も本当にそんな気持ちでした。ゲンドウにそこまで詳しく言わせるの?え、カヲルくんの正体もそこまで言っちゃうの?アスカそうだったんだ…と。もう解釈違いなんて起こさせない、謎なんて残さないという覚悟を見せつけられると、人はこうも動揺するもんなんですね…w
返信削除でも全部ひっくるめて終わってくれて、本当に良かったと思います。しばらく上映してくれると思うので、色んな感想を見てから、ゆっくり再鑑賞したいです。
昼行灯 さん。コメントありがとうございます!
削除そうなんですよね。あの部分はビックリしましたし、賛否両論あるのはわかるのですが、自分は不思議とガッカリみたいな気持ちにはならなかったんですよね。自分の中にある『エヴァってこういうもの』みたいな思い込みを壊してくれたような気がします。
自分も再鑑賞予定です。また印象が変わるのが楽しみですね。!読んでいただきありがとうございました。
katoさん、ごんにちは!
返信削除感動された事、文面から伝わってきました。よかったですね!
私は、『エヴァ』についてはまったくの門外漢です(笑)またこの映画を観てないので、詳しいことはわかりませんが、katoさんの本文とコメントされた方々の文面を読んでると、冷静に、客観的にこの映画の大まかな流れと(完結へ導こうとする)方向性が分かります。
もしかしたら、ラストシーンがすべてを物語ってるのではと思いました。なんとなく直感なんですけど。
私は2014年金曜ロードSHOW!で放送された『新劇場版Q テレビ版』と、動画配信で、TVシリーズ第一話のみを観ただけなんです。TV放送当時は、会社で長時間深夜残業をしたので、TVを一切みてませんでしたから。私の人生の中で暗黒の時代でした(笑)
なので、私が『エヴァ』を知るきっかけは、TVでも映画でもなく、意外なところでした。
後年、会社の慰安旅行で、パートのおば様方とカラオケをしてた時、ジャズの「FLY ME TO THE MOON(TVシリーズのED曲)を歌いたくて選曲したら、『エヴァ』の映像が出てきて愕きました。この曲、『エヴァ』に使われていたんだって!庵野さん、センスがいいな!と関心を寄せました。
いつかは私が、この映画を観る時があるでしょうか?その時を待ちたいと思います。
「機が熟す」という表現、ドンシャリでした!
何事も時間が解決するのですよ!((笑)
Hidebow-Rainbo-Frawbow さん。コメントありがとうございます!
削除エヴァはあまりご覧になってなかったんですね。TV版の頃社会人だと難しいですね。エヴァに限らないですが、有名シリーズでもタイミングが合わないと完全に抜けたりしますね。
自分もTVシリーズの頃は、アニメから離れ気味だったのですがアニオタの友人からすごい作品だと勧められてみたのキッカケでしたが。
でもアニメや映画ってタイミングが重要ですよね。勧められても自分に受け入れるタイミングじゃないと良さがかわからなかったりしますし。
個人的にはTVシリーズは今見でも面白いのでキッカケがあればお勧めしたいですね。とはいえ自分も語れるほどの物はないのですが・・・。未見でネタバレにもかかわらず読んでいただきありがとうございました!
こんばんは!
返信削除四半世紀に渡ったエヴァの完結、自分も見届けることができました。「終劇」の文字がスクリーンに映し出され映画館が明るくなった時、「ああ、本当にエヴァが終わってしまった……」としばらく呆然としておりました。拍手している人もいたので自分も参加しようと思いましたがあまりの呆然に手を挙げることすらできず……。ただ拍手の音を聞いておりました。でも同時に、こうして生きてエヴァの完結を見届けることができたこと、エヴァファンとして、そしてアニメファンとしてとても幸せです。
・各キャラについて
①碇シンジ
TV版・旧劇・新劇場版全てにおいて塞ぎこみがちで頼りないと揶揄されてきたシンジ。最後くらいは主人公としてかっこいいところを見せてほしいと願っておりましたが、その期待にこれ以上ないほど応えてくれましたね。特にゲンドウとの対話以降のシンジは、もはや達観すら感じさせるほどの頼りがいのあるめちゃくちゃかっこいい主人公になっていました。
②アスカ
アスカってTV版から一貫して基本的に可哀想な目にしか遭ってないんですよね……。だからこのシンエヴァでは幸せになってほしいと思っておりましたが、その願いも今回叶ったわけで。でもまさかのケンスケエンドには驚きました(笑) 自分はシンジ×アスカのカップリング派なのでこの結末はつらいところもあるのですが、大人になったケンスケが普通にイイ男すぎて、アスカ×ケンスケも全然ありなんじゃないかと。そう思います。
③ミサトさん
「行きなさいシンジ君!!誰かの為じゃない、あなた自身の願いの為に!!!」→「碇シンジくん。あなたはもう、何もしないで」
破からQのあまりの豹変っぷりにこの発言が散々ネタにされてきたミサトさんでしたが、最期葛城艦長から葛城ミサトに戻るシーンは涙せずにはいられませんでした。「これだよ!このミサトさんが見たかったんだよ!」って思いました。爆発して最期を迎えるというのは奇しくも旧劇のミサトさんの最期と同じだったわけですが、旧劇ではミサトさん最後「加地くん……」とつぶやいていたのに対して、シンエヴァは「リョウジ……」と自身の息子の名前を口にしていたんですよね。なんとなく数奇なものを感じずにはいられませんでした。最期のシーンは思わず「ミサトさあああああああああああああああああああん!!!!!!」と叫びそうになりました。
・シンジとゲンドウの対話
TV版でも旧劇でも新劇場版でもずっとすれ違いだった二人が、初めて対話して和解を果たす。これだけで私は大感動でした。おそらく全エヴァンゲリオンファンが待ち望んでいた展開だったと思います。「シンジ、大人になったな」っていうゲンドウの言葉でもう駄目でした。
・赤い海の浜辺でのシンジとアスカ
ここ!!!!! このシーンで号泣しました。「ここって、旧劇ラストのあの場所じゃん!!!!」と見た時はテンション上がりまくりでした。そして旧劇のあの浜辺で、シンジとアスカがイチャイチャしてるんですよ! シンジ×アスカ派としては、こんなの泣かずにはいられないじゃないですか! あの時は他者を拒絶しアスカの首を絞めたシンジが、今回はアスカに対して「僕も好きだったよ」ってアスカに微笑みかけるんですよ!!! なんというかこれぞエヴァンゲリオンの25年間の積み重ねっていうか、集大成って感じですよね。旧劇のアスカの「気持ち悪い」がトラウマだった人も、今回のこのシーンで浄化されたに違いありません。
・ラストシーン
ラスト、駅のホームでシンジの隣にいたのは、レイでもアスカでもなく新劇場版から登場したマリでしたね。これも賛否両論ありそうですが、自分はこの結末には納得してます。やっぱりシンジが自分の殻から脱却して大人になるためには、TV版からいるキャラじゃ駄目だったと思うんですよね。新劇場版からのキャラであるマリだからこそ、シンジの隣にいる意味がある。だからエヴァという作品において、シンジとマリが結ばれるのはある意味必然とも言えるのではないかなと思います。
長々とコメントしてしまいましたが、やっぱりシンエヴァを見終えて改めて思うのは、エヴァンゲリオンって最高だなってこと。こんなに語りたくなるアニメって、これからも出てこないんじゃないかなと思います。きっとこのシンエヴァもブルーレイで何回も見ることになるんだろうなあ。もちろん映画館でもあと数回は見る予定です。
でも今はあえてこの言葉を言います。
さよなら、全てのエヴァンゲリオン。と。
なぜなら、「さよならは、また会うためのおまじない」だから。
スタッフにありがとう。エヴァにさようなら。
そして全てのエヴァンゲリオンファンに、おめでとう。
もあいさん、コメントありがとうございます!
削除自分以上に熱いコメント。すごい読み応えありました。旧劇の読み込みもすごくて、自分が気付いていないところも多かったです!すごく参考になりました。
ホント良かったですよね。べつに賛否両論になるのは否定はしないのですが、この終わり方で幸せを感じられるのはホント幸運だなぁって思います。ラストシーンのマリの解釈。そうですよね〜すごくジーンときました。
近く2回目を見に行く予定なので、直前に読むことができて本当良かったです!取り急ぎまずはお礼のみにて失礼します。