『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』感想: 感動というより慟哭。見事な着地点。(ネタバレ注意)

2021/03/14

アニメ

t f B! P L

シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を映画館で見てきました。

 素晴らしかったです。もうとにかく終盤はなんだか涙がボロボロ出ちゃって・・・エンディングは嗚咽を堪えるだけ。しばらく言葉が出ませんでしたね。

 なんだろうね。悲しさとか感動とかそういうのを超えてるというか。 TV放送から25年余り。ああ、本当に終わらせたんだ・・・という衝撃なのかな。よくわからない点も含めて、もうグゥの音も出ないほどの完璧すぎる終劇

 心のどこかで『わかりやすく終わるはずがない』ってタカをくくってたんだけど、次々と広げた風呂敷をたたみ出す展開に『ちょ、ちょっと待て・・・マジで?本当に終わらせる気?』って・・・いや終わるのは知ってたけどさ。

 ここまでストレートな『最終回』になるとは思ってなくて混乱してしまった。

※以下全てネタバレ全開です。考察は個人的な解釈で公式なものではありません。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』予告編より
©カラー/EVA製作委員会
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 綾波が消えて、冬月が消えて、ミサトさんが死んで・・・そして作品自体が分解されて消滅していくような終盤の構成に、ただ、ただ涙が止まらなかった。もはや感動って言っていいのかすらわからない涙。

 そしてあのラストシーン。ある意味旧劇の焼き直しのようにも見えるけど、自分は全然意味が違うと感じたな。『現実に戻れ』ではない。もっとずっとポジティブ今の時代だからこそわかる意味

 シンジ君ゲンドウにカタをつけに行くように、庵野監督はどうケリをつけたのか?25年の時間を超えたからこそ成立する回答。それを見せてくれた気がする。素晴らしい作品でした。

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』本予告・改2【公式】
この予告はホントに素晴らしくって目頭が熱くなった。
いろんな連想を誘う宇多田ヒカルの歌詞の力も凄まじい。


最初の2時間はとにかく面白い


 公開延期には慣れっこになってる身としては、突然の公開日再決定にびっくりして落ち着かない気持ちでしたね。正直もう少し先でいいかなぁ・・・と思ったのですがネタバレしたくないのでちょっと無理して初日に鑑賞!

 期待と不安が入り混じるなか、なんと映画館の帰り客の会話でネタバレを食らうというショックな事件(でも大したネタバレじゃなくて良かった)もありましたが、どうせ初見では理解できないんだろうなぁ・・・なんてある意味達観しながら鑑賞開始しました。

洗練された映像なのに懐かしさを感じる雰囲気作りがうまい。
(本編12分映像より)©カラー/EVA製作委員会

 本編前に振り返り映像入ると思わなくてビックリしたけどあれ良かったですね。Yotubeにも上がってたけど全然知らなかった。

 ナレーションなしでセリフの切り貼りだけなのに見事に再現してるんだよね。映画館で見るとさらに良くて、アレだけでちょっと涙腺緩んじゃった。緊張感も高まるし最高の導入になってたと思う。

 最初の2時間近くは変な言い方だけど普通に面白かったなぁ。155分の長尺ということでダレたりするんじゃないかと心配してたけど全然飽きなかった

 戦闘シーンから風景まで全てハイレベルな美しさ。ホント現代的に洗練されているんだけど違和感はないんだよね。序盤からガッツリ集中させてくるしTVシリーズや破のような爽快感がありましたね。


時間を逆手に取り『今』の作品にした構成に驚き


 そして前半のもう一つの柱。第3村のエピーソード。この構成はホントやられた!って感じ。

 もはや時代は移りいろんな状況が変わった今、正直言うとエヴァという作品とどう向き合えばいいのかわからなかったんだよね。

 少なくとも序・破まではリバイバル感覚で見ていたし、Qだってまだそんな気持ちが抜けてなくって戸惑いがあった。

 でもこの構成でいきなり『』に引き寄せられた。

 もはやリバイバルリメイクのような懐古趣味の作品じゃない。まさに現代の、今の自分の作品にしてくれた。

このカットだけでなんとも言えない気持ちになる。
©カラー/EVA製作委員会

 破から14年の時間が経過し大人になったかつてのキャラクター達。彼らの視点はまさに今の自分たちの視点とシンクロする。

 突然現れたあの頃のままのシンジ達を見る彼らは、日々の生活に追われエヴァのことは心の片隅の思い出となっていた自分だ。

 かつての思い出がまた戻ってきたかのように耽溺する日常シーン。そして自分たちの知る綾波がまた戻ってきてくれた気がしてほっこりしたとき夢は終わる

 動と静。とにかく面白い2時間。そりゃわからないことも多いけど、細かいことは気にせず、すばらしい力技でねじ伏せられる感じ。

 普通の作品ならこの時点で満点・・・でもまだなんか足りない。ただ面白いだけで終わったらエヴァじゃないような・・・そんな気持ちに気付いた時。唐突にレールが切り替わった。


ラスト30分。急激にくるギアチェンジ。


 残すところラスト30分。急激にくるギアチェンジ!きた!きた!エヴァが来た!。

 妙に違和感のある3D映像。陳腐な舞台。すべてが作り物であるということを強く暗示させる演出。メタフィクションとして物語が次々に分解されて・・・そして最後は原画にまで

 ああ、やっと来た。これがなくっちゃエヴァじゃないあざとい?確かにそうかもしれない。でもここからだ。ここから監督はどうするんだ?

 ゲンドウを追って人智の及ばない世界に向かうシンジ覚悟を決めたシンジの言葉が監督の思いと重なって聞こえた。

ここからのゲンドウの展開には良くも悪くも驚いた
©カラー/EVA製作委員会

 そこからのゲンドウの独白。えっ?えっ?そこまで分かりやすくやっちゃうの?わかってる、わかってるけど・・・・え?さらに各キャラの丁寧なまでの解説!

 うそ・・・ちょっと、マジで、これは・・・本気で終わらせにかかってる?監督が責任を取って、全てにケリをつけるような猛烈な回収

 意味のわからないレベルで涙が止まらなくなるこれを感動って言っていいのか?そういうのとはなんか違うのかもしれない。でもとにかく涙が出る。この20年余りの自分の思い出どんどん回収されていくような。

 呪縛からの解放?そもそも解放なんてされたかったのか俺?

 そうだった。自分はまだ『覚悟』ができてなかった。答えはとっくに決まってるのに・・・そんな自分に監督は有無を言わせず突き進んでいく。

 心の準備ができないまま大切なものがどんどん消えていく・・・感動というより慟哭といったほうがふさわしい嗚咽・・・終着駅が近づいている


自分は『現実へ戻れ』とは解釈しない


 そして、全てにカタがついた後。駅のプラットホーム

 あれはどうなって、何を意味しているのか。まだわからない。ちらりと見えたカヲル君綾波みたいなカップル。あれは幻だろうか。アスカは多分いないんだろう・・・そして成長した姿のシンジマリ

予告編では全く気付かなかったね。
©カラー/EVA製作委員会

 ラストシーンの駅前の風景。二人は明るい駅の外へ出て行く。旧劇を連想させるラストシーンだけど、自分はそれを『現実へ戻れ』とは解釈しない。

 もはや現実とアニメを区別する意味などなくなった。

 25年前。アニメおたくだった彼らは、今や社会の主要を構成し、アニメはごく一般的な娯楽ジャンルとなった。

 いまや『アニメおたくが現実に戻る』なんて概念自体がナンセンスなものになった。

  だって、あの駅前の風景。リアルだけど3DCG併用のハイパーリアルな映像。あれこそが『アニメとリアルに境目なんかない』という現実を物語っているのだと思う。


 時代は変わった。それを自覚させてくれる見事な着地点。

 

 かつて『 ATフィールド』という概念は個人の関係のみならず、アニメおたくと現実社会の軋轢をも表現していたと思う。

 だから旧劇の時代では、この新劇の解釈は通用しなかったはず。あの頃の未来。2021年の今だからこそ成立する回答。これは『待たされた』のではなく『機が熟した』というべきだったのかもしれない。

  それと同時に終わってはいけないものが終わったような、失いたくなかった大切なものが消えてしまったような・・・そんな大きな喪失感を感じてしまう。

 エヴァファンがまだ奇異な目で見られていた時代。それでもあの時代だからこそ感じる風があった。

 長い長い祭りは終わり、一つの時代が過去のものになった。エヴァが終わらない限り、自分はそれに気づかないフリができたのかもしれない。でも終わってしまった。

 だから宇多田ヒカルOne Last Kiss』の歌詞が本当に心に沁みる。たくさんの『忘れたくないこと』をありがとう。

 素晴らしい作品。傑作でした!

宇多田ヒカル『One Last Kiss』(公式)


「残酷な天使のテーゼ」MUSIC VIDEO(HDver.)KING RECORDS 公式
TV版のダイジェスト こちらも見たくなりますね。

シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| 公式サイト:https://www.evangelion.co.jp/final.html


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