『GODZILLA 星を喰う者』予告より (当ブログの画像引用について) ©2018 TOHO CO.,LTD. |
まあ、演出的にどうなの?って所もありましたけど、2作目で『どうなるんだ!』とワクワクした気持ちを裏切らない最終話だったと思います。怪獣映画が得意じゃない自分にも楽しめるゴジラ作品でした。
※前日譚の小説は未読の感想です。
※ネタバレありのレビュー・考察となりますのでご注意ください。
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見事に畳んだ大風呂敷!
まずは、これまで広げた大風呂敷をなんとか畳みきったのはやっぱりすごいですよね。ここはやっぱり素直に賞賛したいです。エクシフやギドラの謎、ゴジラや人類の行く末、ユウコの安否まで、興ざめさせないまとめ方だと思いました。
まあ確かに『モスラこれだけ?』みたいにビックリする所もありました。でもアレだってフツア族との関連性を強く暗示させたわけで・・・適当に描いたとは感じなかったです。他にも細かいところで謎はあるんですが、そこは『考察の余地』ってレベルだと思いますね。
ギドラ出現のシーン。 時空の混乱が上手に描かれていて面白かった。 ©2018 TOHO CO.,LTD. |
とにかく、ブン投げるでもなく抽象的にボカすでもなく、一応の理屈を通してくれたのは嬉しい。種明かしとしての納得感がありました。
自分はこの作品にSF的な謎解きや、想像を超えた展開を求めていたので、そういう意味でも満足だったんですよね。特に2話からの斜め上をいくSF展開はすごく期待感が上がっていたので、それを正面から受け止めたような完結編だったと思います。
そういう意味ではエンターテイメント性とか、カタルシス感が少ないって意見もわかります。でも自分はラストシーンで涙出ちゃったんだよなぁ。
エクシフの技術にワクワクする
今回『ギドラ』がどういった形で提示されるのか?これは楽しみでしたよね。
前作メカゴジラの件があるので身構えていましたが普通に怪獣の姿で逆に驚きました(笑)これもある意味サプライズですかね。
ただ、あれも姿は怪獣だけど高次元の存在ですからね。『別宇宙からの干渉』というSF解釈にはしびれました。宇宙の外側となれば文字通り人智を超えた世界。見た目は怪獣ですが怪獣ってレベルじゃないですよね。
祈りや怒りがどう関係するのかは謎だが ゲマトロン演算は人類には理解不能なので仕方ない(笑) ©2018 TOHO CO.,LTD. |
エクシフの到達した文明が、宇宙の外側を理解し、あまつさえ多元宇宙に干渉できるレベルだったとは。だとしたら人間に理解は不可能。(逆に言えばどんな理屈もそこに収斂できるズルさはありますが)
そういう設定にワクワクできる感じはSFらしくて面白かったな。エクシフの技術や歴史についてはもっと解説を聞きたくなります。
多重の意味を持つクライマックス
ただ、ゴジラVSギドラのシーンは、ちょっと冗長で『プロレスの実況中継かよ!』って思ってしまった(笑)まあ手も足も出ないって状況は良くわかるのですが、ちょっと単調に感じちゃいますね。
まあどうしたらいいのか?って言われても困りますが、やっぱりゴジラ映画ということで直接対決のシーンにこだわったんですかね。見せ場はわかるんですが盛り上がりの飽和状態といった印象でした。
ゴジラが敵から『我等の側』の存在に変化する ハルオとリンクしていく所はもっと説明が欲しかった。 ©2018 TOHO CO.,LTD. |
ただ、敵だったゴジラがいつの間にか『地球を守る存在』になっているという振り変わりは鮮やかでしたね。『ゴジラ VS ギドラ』が『ハルオ VS メトフィエス』の構図になっている面白さもあります。
とはいえ、ハルオの葛藤とゴジラを同調させていく部分がちょっとわかりにくかったかな。ハルオの怒りがゴジラとどう関連するのか?初見ではちょっとうまく理解できませんでした。
一番のサプライズはユウコの結末!
今作一番のサプライズといえば『ユウコの結末』ですよね。思わせぶりにユウコは助かるのか?って振っといてアレですからね。
ユウコをどう助けるのか?ってのが話の軸になると思ってるじゃないですか。まあ中盤には少し忘れちゃってましたけど(笑)でもハッピーエンドで終わるにはユウコの存在を無視するわけにはいかないわけで。
序盤でユウコの安否を提示しながら 思わず突っ込みたくなるラストは上手い仕掛け。 ©2018 TOHO CO.,LTD. |
フツア族と共生して地球に土着していくラスト。ハルオがマイナ(ミアナかな?)と結ばれて・・・・って、おいおい!ちょっと!ユウコは?ってかなり焦りました。
正直ここで終わったら酷い映画だなぁって(笑)
マーティン博士がヴァルチャーの再起動に成功した時、思わずハルオは博士を消しちゃうんんじゃないか?って思ったんですよね。ハルオは『人類が一からやり直すべき』と考えていたと思う。だから今ナノメタルの秘密を手にしてはいけないって。
でも、やったことはヴァルチャーと共にハルオ自身の手でユウコを葬ってやること。それってナノメタルを消すだけじゃなく、ユウコをナノメタルから自由にしてやるってことでもあるんですよね。ある意味ハルオにしかできないこと。
このシーンはちょっと涙出ちゃいましたね。この作品では泣くことはないと思ってたので自分でも意外でした。SFって過程を楽しむものでラストの感動は期待してなかったので。
まあ確かにサプライズとはいえベタな展開なんですけど・・・でも自分はこの結末は好きです。単なる自己犠牲とは違う気がするんですよね。悲しいハッピーエンドとでも呼びたいシーンです。
そこはかとない不安が混じるラスト
だけど、それだけじゃ終わらないのがこの作品。
人類は将来どうなるのだろうか?エンディング後のエピローグでは子供たち(孫かな?)の姿、命が繋がれていった未来が描かれていました。
少なくとも人類はフツア族と交わり生きている。これまでのようにニッチな存在として生きることを許されているようです。
人類と交わったフツアは一見変わらないように見えるが ©2018 TOHO CO.,LTD. |
でもメトフィエスが言ったように、時間が経てば必ず人類は破滅への歩みを進めていくのだろうか?新たなエクシフの干渉はあるのだろうか?仮に干渉がなかったとしたらどうなるのか・・・?
そう考えると・・・これで終わりじゃないという感じがしますよね。ハッピーエンドとも言い切れない複雑な気分。
エピローグに出てくる乗組員たちの子供は、人類の明るい未来である反面、再び破滅へ向かう一歩とも言えるわけで。表裏一体の明と暗。そこはかとない不安が混じる何とも言えないラストでした。
エクシフはモノリスだったのか
思ったんだけど、エクシフの干渉って『2001年宇宙の旅』のモノリスをモチーフにしてますよね。先日IMAX版を見たばかりだったのでそう感じました。
ガルビトリウムとメトフィエス 新たな人類への干渉はあるのだろうか ©2018 TOHO CO.,LTD. |
ホモサピエンスが誕生して数十万年と言われますが、長い間ゆっくりと進歩した人類が、数千年の間に急速に文明を発展させた。宇宙のインフレーションのように、何らかのきっかけを得ると爆発的に発展するものなのかもしれないですね。
その刺激が、モノリスなのかエクシフなのか・・・単なる偶然なのか(笑)結局どれでもOKのような気がしますが、だとしたら干渉がなくても文明のインフレーションはいずれ必ず起こってしまう。
まさにメトフィエスが言うように『我々はただ待っていればいい』ってことなわけで、たとえ何万年でも人類の命が繋がれる限りこのリスクからは逃れられない。人類の持つ『業』なんでしょうか。
気になった所は・・・
全体として楽しめたのですが、まあやっぱり気になるところもありました。
一番はさっきも書いた通り、ゴジラ VS ギドラのシーンですよね。自分は怪獣映画ファンではないので、怪獣の格闘シーンにはあまりこだわりがないんです。ただ、マーティン博士に実況させる形が続くのがね。ちょっとなぁ・・・。
博士のセリフはすごく力が入ってるんだけど 繰り返されると少し笑ってしまった。 ©2018 TOHO CO.,LTD. |
ゴジラ映画である以上『対決シーンで盛り上げる』という気持ちは強かったんだと思いますが、マーティンのセリフ回しが驚愕の連発で少し単調な印象。確かに丁寧でいいんですけどね。ギドラの解説はすごくわかりやすいのは確かです。
本心を言うと前作のメカゴジラのように『ゴジラ映画から逸脱したようなクライマックス』を期待しちゃってたんですよね。でも怪獣対決ありきで構成せざるをえなかったのかなと。もっと自由で大胆な演出を期待したってのはありました。
まあ難しいのはわかるんですけどね。
ラジオドラマ的な印象のセリフ
それに関連するけど、主人公ハルオの台詞回しもちょっと芝居的というかラジオドラマ的な気がしましたね。『クッ』とか『ウッ』とか芝居掛かった付帯音が気になりました。
メトフェイエスとハルオ 今作は二人の対話シーンが多い ©2018 TOHO CO.,LTD. |
今回はセリフ前撮りのプレスコ形式だったそうですが、この作品って音声だけでお話しが完結できちゃうような印象なんですよね。それこそラジオドラマとして楽しめるというか。
それだけに、映像が添え物といっては言い過ぎなんだけど、セリフと映像が分離してるようなな感じがしてしまいましたね。映像もすごくハイクオリティなんだけど、渾然一体となってない感じというか。セルルック3D作品なのもそれに拍車をかけているのかもしれません。
フツア族の女性の描き方も
あと細かい所だけど、ラストで乗組員がフツア族と共生を始めるシーン。なんか男性乗組員とフツアの女性というペアしか見えなかったのですが、女性乗組員は残ってなかったのかな?
女性の動きは前作にはない艶めかしさが表現されていた。 ©2018 TOHO CO.,LTD. |
女性が一方的に世話をする感じで、保守的なジェンダー観だなというのは横に置いておいても、単純にフツア族は女性不足で争いにならなかったのか?という疑問がありましたね。
フツアに男性が少ないのか、それとも一夫一婦制ではないのか・・・これもなにか理由があるのだろうか。この辺はちょっと不思議に感じました。
モスラはどう考えればいいのか?
あとはモスラに関しては自分は意外と評価してるんですよ。モスラが出てきて一気にカタルシス!みたいなのを期待してた人にはガッカリもいい所なんですが(笑)自分としては『アレもありかな』って思うんですよね。
ここでモスラが大暴れ!かと思いきや一瞬の影のみ でもこの演出も理由を想像すると面白い。 ©2018 TOHO CO.,LTD. |
モスラの存在というのはある意味、地球が人類の存在を許している象徴ですよね。だからゴジラやギドラと対決するような存在じゃない。
地球にとって人類はオルタナティブな存在なのかもしれない。モスラと人類はある種の共生関係によってゴジラやナノメタルの世界で小さく生きることを許されている。文字通りニッチな生物として。
でも何らかの刺激により地球の主人公に躍り出るかもしれない、そんなポテンシャルを秘めながらも命をつないでいる。
そう考えるとモスラにスゴイ力を与えるのはおかしくて、せいぜい人類と同程度の存在と考えるのが自然ですよね。まあ、これまでのフリを考えると一気に解決してくれる神様みたいな存在を期待しちゃいますが。
今回のあっけないモスラ像というのは、自分はむしろ深く感じて面白いなと思いました。
メトフィエスとハルオの共通点
ただ、自分のなかで解決できない謎といえば、メトフィエスはどうしてハルオにこだわったのか?ってことなんですよね。『ハルオを取り込まなければ完璧にならない・・・』みたいな事を言ってたけど本当なんだろうか。
1回しかみてないので何とも言えなんだけど、あれってウソかな?ウソが言い過ぎなら方便というか。メトフィエスの個人的な想いみたいなのがある気がしますよね。
予告でもあったけど、メトフィエスとハルオがそれぞれ大事に持っているペンダント状のモノ。あえて同じような構図で描かれるには何か意図を感じるんですよね。
ハルオは子供のころの両親からの想いが込められたペンダント。 ©2018 TOHO CO.,LTD. |
メトフェイエスが大切にしているコイン状のモノ ハルオのペンダントと対比させているように見える ©2018 TOHO CO.,LTD. |
メトフェイエスを単なる狂信者とも解釈は可能ですが、今作では語られていないメトフィエスの出自になにか秘密があるんじゃないか・・・ハルオと何か共鳴する精神性を予感させます。
まあ単にBL要素を入れたかっただけという可能性もありますが(笑)
ゴジラである事に苦労した作品
まあいろいろあるとはいえ、全体として面白かったです。すごく奥行きのある設定をわかりやすく表現していたと思うし、1話を楽しんでいた小学生も十分ついていけたんじゃないかな。
1話が序盤のサプライズで、2話は斜め上をいくSF展開、そして3話でしっかり伏線を回収して完結。自分としては大傑作!とは言わないまでもワクワクできる作品でした。
でも、この作品は『ゴジラ』であるためにある意味苦労した作品ですね。『ゴジラである必要が全くない』という意見も見ますが・・・自分はそうは感じないんだよなぁ。
自分には『ゴジラ』や『ギドラ』そして『モスラ』のモチーフがあったからこそ、ワクワクするし楽しかった。この世界観の中でどう料理されるのかを楽しめました。これは本当。
ゴジラの裾野を広げたSFアニメ
ただし、自分はゴジラを含めた特撮や怪獣映画の造詣がないからそう感じたのかもしれないですね。逆に言えば薄い知識だからこそ楽しかったのかも。
ゴジラに思い入れのある人にとっては、期待した作品ではないのだろうなと・・・。
ゴジラなしでやれば良いというのもわかるんですが、それを言ったらこの企画自体が存在しないわけで・・・裾野を広げるって意味ではアニメ版も十分意味があると思うんですよね。実際、怪獣映画をあまり見ない自分には楽しかったのは事実なわけで。
たしかに『シン・ゴジラ』はすごかったですよ。でも『2万年後のゴジラと人類、そして他の種族・・・』ってすごいワクワクしました。これぞアニメならではの作品って感じ。
このアニメ版『GODZILLA』3部作はゴジラをモチーフにしたSF作品。わかりやすさとSFの面白さを両立させつつ、でもシンプルなハッピーエンドで終わらせない奥行きのある作品でした。
自分はすごくワクワクできたし、最後まで驚きの連続で楽しい作品だったと思います!
監督:静野孔文/瀬下寛之
原案 脚本:虚淵玄
シリーズ構成:虚淵玄/村井さだゆき
制作:ポリゴン・ピクチュアズ
アニメ版GODZILLA 公式サイト
http://godzilla-anime.com
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楽しく読まみました。ありがとうございます。
返信削除メトフィエスは本気でハルオを落とし込むのではなく、どこかそれを跳ねのける期待を持っていたようにも思えます。一方で、フツア含む残された人類は、ゴジラと、どう向き合うのかなと。おおよそ同時期に発生したメカゴジラへの対抗因子を身に着けたのと対照的で、フツアは事前災害(だからショウガナイ)と見做しているようにもとれます。
コメントありがとうございます!
削除そうですね、メトフィエスのハルオへの向き合い方って複雑な感情が入り混じっている感じがしますね。ゴジラの被害が自然災害というのは確かに言い得て妙ですね。人は自然と共生しなければ生きていけないことを象徴するようです。メカゴジラは明らかに人災みたいなものですしね。
読んでいただきありがとうございました!