シン・ゴジラ 感想:怪獣映画で感激すると思わないじゃない・・・議論百出の傑作映画!

2016/08/07

アニメ

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 庵野秀明総監督の『シン・ゴジラ』映画館で鑑賞してきました。実のところ全くノーマークで正直に言うとあまり興味なかったのですが(笑)・・・初日の夜からTwitterで絶賛の嵐・・・というか悶絶にも近い叫びがソコココから。これはただ事じゃないぞ!って感じでしたね。
予告編より画像引用(当ブログの画像引用について
© 2016 TOHO CO.,LTD.

予防線を張っていた自分が馬鹿らしくなるほど


 ずいぶん話題だよ!って事で奥さん誘って見てみたら・・・もう唖然ですよね。劇中に何度『これはスゴイ!』と思ったか。中盤の見せ場、ゴジラの咆哮シーンでは、もう感極まってしまい・・・いやはやゴジラの姿で涙が止まらなくなるなんて想像もしてなかったですよ。

 開始2〜3分でアッと言う間に引き込まれる導入部もスゴイ!わずか10分くらいで半信半疑だった自分もさすがに確信に変わりました。直前まで『期待しすぎてガッカリしないように・・・CGは意外とショボいらしいよ』なんて予防線を張っていましたからね(笑)しかもそれは文字通りの序章に過ぎなかった・・・っていう。

目まぐるしく状況が変わる導入部の会議シーンは秀逸
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※次項より若干ネタバレありますのでご注意ください。

一番の感動ポイントはやっぱり・・・


 もう猫も杓子も絶賛の感想(最近では逆に否定する感想も出てますが)だけど、人によって微妙に焦点が違ってて面白いですね。

 自分は何と言っても一番ド肝を抜かれたのはゴジラが放射能光線を出すシーン。これは大勢の人が絶賛している中盤の見せ場ですよね。自衛隊の総攻撃にほとんど無傷だったゴジラが米軍の貫通弾で派手に出血!

自衛隊の総攻撃も素晴らしい映像だったが・・・
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 閣僚たちは喝采していましたが自分の心はすでにゴジラに感情移入ですよ(笑)当然反撃してくれるんだろうと思う訳ですが・・・その溜め方がすごかったですね。光線の焦点を合わせるような溜めと放出される開放感が半端なく爽快

 単に薙ぎはらうだけでなくカタルシスを目一杯感じられるように入念に作られた演出に本当に感動しました。

政治シーンのバランスが絶妙


 一部では愛国主義的?な映画だという指摘もありますけど自分は全然思わなかったなぁ。むしろすごくバランスが取れていた印象。もちろん最終的には『日本ガンバレ!』になってるし、日本人にむけた映画だとは思うけど、愛国心は右翼の『専売特許』じゃないわけで・・・。

 政治の描き方も適度な戯画化のバランスが良いんですよね。『外形的』にすごくリアリティーを追求する一方で『演技の面』でちょっと崩すという感じがちょうど良かったな。


 特撮映画ブロガーのYU@K氏のツイートに本当に同感。イデオロギー的な政治メッセージではなく、あるがままの日本をデフォルメして描いているように感じました。

適度な戯画化とリアリティー


 ありがちなのは戯画化しすぎて、政治家を極度にバカに描いたり、分かりやすく左派や右派を無能に描いて主人公のマトモさを強調するといったやり方。こういうのってすっごく興ざめなんですよね。世の中そんな単純に割り切れないわけで。

英雄でも無能でもなく普通にちょっと頼りない存在として描かれている総理
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 御用学者のくだりなんかはバカにする感じではあったけど、でも実際に緊急事態で高名な学者がついていけないというのは、残念ながら現代日本人の一種のコンセンサスと言っても良いわけで。世相を表すシニカルな演出だったと思います。

怪獣映画でありSF的シミュレーション映画


 ちなみに意外だったのはゴジラが出てきた後に聞こえた市民デモの声。こういうパターンだと環境保護団体とかが『ゴジラの命を守れ!』とか言って、だから『市民団体ってのはおかしな連中だ・・・』みたいになるのかと思いきや『ゴジラを殺せ!』でしたよね?

政府が世論の影響を受されるのは近代国家の宿命
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 実際に『ゴジラを殺せ!』というデモがあり得るかは別として、近代国家が武力行使をするにあたり世論が反対する中で行う事はむしろ少ない訳で、太平洋戦争の日米開戦だって当時世論の大勢は主戦派だったといいますよね。

 武力行使で被害が広がる懸念をもつ総理大臣の後押しとして『ゴジラを殺せ!の世論』があった。そういう意味でも理にかなったデモの演出だったと思いますし、愛国映画というよりも『ゴジラが現れた日本』をシミュレーションすることに重点を置いた内容になっていたんじゃないでしょうか。
 ゴジラという虚構的な存在がもし東京に出現した場合、現実の日本がどう対応するのかという、一種の思考実験が作品の軸となっており、およそそれ以外の恋愛や家族などの描写は潔く排除されているのだ。テンポよく短いカットで、対ゴジラに関する描写だけで進行していく本作の構成は小気味が良く見事である。
『シン・ゴジラ』は日本の何を破壊する? 庵野秀明監督が復活させた“おそろしい”ゴジラ像 - 小野寺系 Real Sound より

 小野寺系氏のレビューのように『恋愛や家族』によるドラマ性に頼らない構成がハードSF的な楽しさを醸し出していると感じました。

豪華すぎる俳優陣!


 もう一つびっくりした事。主役級の大物俳優が信じられないほど贅沢に『これでもか!』と大量投入されてて本当におどろきましたね。気分的にはB級作品を見に来たつもりだったので、大変失礼ながら『え?なにこれ、こんな力入れてる作品だったの?』と気がつきました(笑)

 長谷川博己、竹野内豊、石原さとみなど328名の豪華キャストが集結したことでも話題を呼んでいる本作だが(中略)「本来なら大御所の方も手厚く迎えなければいけないが、そんなことをしていられず、長机を用意して自由に座ってくださいという感じでした」と苦笑いを浮かべる。
『シン・ゴジラ』ベテラン俳優が大慌て!樋口真嗣が明かす阿鼻叫喚の裏話! - シネマトゥデイ より

 最近TV番組に疎くて、事前のプロモーションとか全然知らなかったのですが、よく考えたらゴジラは東宝の看板作品みたいなものですからね。シネマトゥデイのインタビュー記事読んでその凄さを改めて感じました。

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庵野秀明と樋口真嗣のタッグ


 しかし、これだけの作品を庵野さんと樋口さんのタッグでやらせた決断もすごいですね。庵野さんには感心するばかりだけど、思い切って彼に任せた人たちもすごいなぁと感心しました
 たぶん「シン・ゴジラ」を見た人で、過去の庵野秀明作品、樋口真嗣作品の両方を知っている人は、「シン・ゴジラ」は、庵野秀明と樋口真嗣、どちらかが欠けても絶対に成立しなかった映画であることは誰も疑わないだろう。
いつの間にか、みんなゴジラが嫌いになっていた』 - shi3zの長文日記 より

 愛すべき扇動者であり、天才プログラマー社長のshi3zこと清水亮 氏。彼は樋口真嗣氏が監督した『実写版 進撃の巨人』を絶賛していたけど、今回のシン・ゴジラもやっぱり絶賛していましたね!

 私も『実写版 進撃の巨人』には好意的だったので、今回の清水氏のレビューには同感です。そして同じく同感だったのが予告編についての指摘
 そして惜しいことに、ネタバレを避けるため、予告編ではこの見事さ、面白さが微妙にうまく表現されていない。(中略)残念ながら本編はこの予告編の1000倍は面白い。本編の面白さを上手く伝えられていないのは非常に残念だ。
いつの間にか、みんなゴジラが嫌いになっていた』 - shi3zの長文日記 より

ピンとこなかった予告編


 いくら絶賛の声を聞いてもイマイチ信じられなかったのは、やっぱり予告編がピンとこなかったせいかなぁ。この予告編は良かったという人もいるけど、自分はこれで本編を見たいとは思わなかったんですよね。正直これまでのゴジラ映画のイメージと同じかなぁと感じてました。

『シン・ゴジラ』予告2
東宝MOVIEチャンネル(公式配信)

 ここで注目したのは『もしかして狙ってたのかな?』という意見。

 そうだったのか、やはり、そうだったのか、と思いました。 僕が立てた2つ目の「ある仮定」とは、庵野秀明氏があえて面白くないトレーラーを作らせたのではないか、ということでした。つまり、マーケティング戦略として、あえて、前評判を悪くしたのではないかと思ったのです。
庵野秀明総監督の『シン・ゴジラ』を見てマーケティングが完全に変わると怖くなった』 - 《天狼院通信》

 この意見は賛否あるけど、自分としてはあるかもしれないなぁ・・・って思ったんですよね。なにしろ、実際自分は思いっきり引っかかってますからね(笑)


奥さんも高評価


 一緒に見に行った奥さんは、もちろん特撮好きじゃありませんしSFもあんまりという人ですが相当面白かったようです。そういう点では女性でも楽しめる作品かもしれません。ただ私と違う感想だったのは『ゴジラが怖い!』という点でしたね。

『シン・ゴジラ』を観て最初の印象。それは「ゴジラ、怖い……」だったのよね。制作陣の意図として「最初のゴジラに立ち返る」というものがあったらしいと後で聞いて、とても納得。圧倒的な理不尽さをもって、普段の生活が、日常が破壊される恐怖。それがあった。
虚構と現実は逆転する――『シン・ゴジラ』感想 』- 日々の音色とことば より

 この辺は性別の違いかどうかはわかりませんが、上記のブロガーさんと同じようなイメージのようです。私なんかはゴジラの方に感情移入したりして『薙ぎ払え〜!』って感じだったかも(笑)

これは同感・・・(笑)

ポスト『セカイ系』なのか・・・ 


 東浩紀 氏といえばもう一つ『なるほど!』と思ったのがこの発言。


 セカイ系の代表的な作品といわれる『エヴァンゲリオン』の庵野さんが、ある意味セカイ系を排したような作品を樋口氏と作り上げたのは、確かに日本の世相の変化を表したものかもしれないなぁ・・・と思うと感慨深いですね。

パトレイバー以来の関東舞台の傑作


 最後に余談になりますが、特撮ファンでもゴジラファンでもない(さらに言えば庵野ファンってわけでもない)自分がこの作品を見たとき感じたのは、関東を舞台にしたSF作品として『機動警察パトレイバー the Movie1・2』を超える作品を、まさか特撮実写作品で見ることになるとは思わなかった!という感慨でした。

 正直、シン・ゴジラのいろんなオマージュや引用は分からない所が多いのですが、同じような興奮・ワクワク感を感じたのが押井守 監督の『機動警察パトレイバー the Movie』だったんですよね。

 これだけの話題作となったシン・ゴジラですから、自分が勧めるまでもなく、みんな見に行くと思いますが、劇場版パトレイバーが好きだった人には絶対見逃してほしくないなぁ・・・って感じる作品でした!

追記


 記事をアップした後に気づきましたが、またスゴイ感想が発表されてました・・・。
「わたしは好きにした、君たちも好きにしろ」という台詞もとても嬉しかった。特に「君も好きにしろ」ではないところが嬉しかった。大事なことは怪獣映画を観られること、作れることで、それを一人のものとされたくはないのだ。
シン・ゴジラ:感想(約1万5000字:未鑑賞者の閲覧を禁ず) - 六月の開発局

 自分が正しく理解できているかは分かりませんがこの部分にシビレました!映画を見た後に改めてこのセリフを読むと確かに違う意味にも感じますね。それにしても全編にわたって凄まじく読ませる感想・・・恐ろしや。

映画『シン・ゴジラ』公式サイト
http://www.shin-godzilla.jp/index.html

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