アニメ『地球外少年少女』感想:夢中で見てしまうSFアニメ屈指の傑作!

2022/02/24

アニメ

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地球外少年少女』の前・後編を映画館で見てきました。ホント面白かったです!こういう感覚って久しぶり・・・夢中で見てしまいました。 

 ネットフリックス限定の6話構成のアニメですが3話ごとに映画館で特別上映。連続アニメとしては短い6話構成ですが、1話からあまりに面白すぎて感動で涙が出てきたほどです。6話全てが面白くて素晴らしい満足感でした。

 ごく小さな物語から壮大な物語への展開。パニックアクション・ミステリー・SFと織り交ぜる構成の見事さ。そして素晴らしいキャラクターデザインと作画。どれをとってもハイレベル

 後半はSF色が強くなり観念的な話が多くなりますが個人的にはバッチリハマりました。SFが苦手な人にはわかりませんが、自分にとっては屈指の傑作アニメと言っていいと思います。

『地球外少年少女』本予告


『電脳コイル』の磯光男監督

 監督の磯光男さんといえば2007年のTVアニメ『電脳コイル』(2007年 全26話)が有名ですよね。まだAR(拡張現実)という言葉もぜんぜん一般的でない時代に鮮やかに近未来の世界を描いた傑作で、自分もそのSF世界と独特のミステリアスな空気感に夢中になって見ていました。

前作とは打って変わって明るい絵柄!
当ブログの画像引用について
『地球外少年少女』予告編より画像引用
©MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会

 今作は直接前作との繋がりはありませんが、おそらく『その先の未来』というイメージで描かれた世界観ですね。Netflix限定配信の6話構成ですが、自分が見たのは3話ごとに前後編に分けて映画館で上映されたものです。

 劇場版も各話エンディング付きでしたので基本的に配信と同じものだと思います。

いきなり面白すぎて感涙・・・さすが磯監督

 いやぁ・・・それにしても、ホント全編すごいんだけど、特に1話のヒキの凄さですね。

 宇宙モノとはいえ、全然壮大じゃない極々ちいさな人間関係宇宙ステーションの一角で始まる物語。それなのにすごいんですよ!

 サッカーボール程度の小さなドローンの戦いでどうしてここまで興奮してしまうのか!あまりに見事な演出で1話のラストで感動して涙が出てしまいました。悲しいとかじゃなくて、純粋にスゲェ・・・面白すぎる!って、感動で涙出るのってホント久しぶりかも。

ごく小さな宇宙ステーションの一角で繰り広げられる物語
でもそれがこんな壮大な話に繋がるとは!
©MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会

 続く2話3話もまさに活劇!という感じでもう『夢中』って言葉通りの興奮状態でしたね。パニックムービーミステリー要素も加わってきて・・・この辺はさすが磯光男監督です。

 前編3話が終わってスクリーンを後にする時は、凄まじい面白さに半分放心状態(笑)早く次が見たい!という気持ちと、残りたった3話なんてもったいない!という気持ちでしたね。

 後半3話は一気に話が展開。活劇から謎解き、そして壮大なSF世界へと広がっていきます。人によってはこの辺の難解さが引っかかるかもですが、個人的にはこの観念的なSF世界も含めて超絶ヒットでした。

 次項から『考察』というほどではないですが、SF的にすごく好きだった部分や、その個人的な解釈をいくつか書きたいと思います。

ネタバレも含まれますのでご容赦ください!


人が『神』を作り出すという設定はかなり好き!

 AIが自ら進化して人智を超える存在となり人を指導していくという設定は、これまでのSFでもありますが結構好きなんですよね。

AI思考の観念的な表現は良かったですね。
フレーム融合という考えも面白かったです。
©MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会

 自然淘汰の結果として人類がより知能の高い種族に進化することって、もはや考えられないですよね。その代わりに人類が自ら新しい種族を作り出す。

 宇宙全てを理解できる、その『神のような存在』を作るために人類は生まれた・・・みたいなのって結構刺さります(笑)

 でもそこで終わらず、さらにその先の解釈が磯監督らしい見どころですね。

AIは11次元的に世界を捉える所とか

 ここもすごい好きでしたね。『11次元』っていうのはは荒唐無稽な造語ではなく『超ひも理論』から導き出される考え方で、もちろん詳しいことは理解できませんが・・・天文好きの自分には刺さります。

 簡単にいえば『極小から極大まで空間や時間のすべてを統一した理論』だそうだけど、人間にはそれを感覚として理解することができない。でも11次元で世界を理解するAIにはそれが理解できているんですよね。

 登矢がセブンとフレーム結合して知能が高まった描写とか、11人に分裂したりとか安直な表現に見えるけど分かりやすいですよね。登矢の「もうわかった、大丈夫」みたいなセリフもカッコイイ(笑)

セブンにとっての世界観の面白さ

 心葉についてセブンが『生きているのも死んでいるのも重要ではない』という趣旨の主張をするのも、時系列にでしか世界を捉えられない人類との差を表現してようで痺れましたね。

 あと『人類』と『人間』が違うものと認識していたのもその辺が原因じゃ無いかなぁ・・・って想像しました。つまり種族としての人類っていうのは何万年単位で存在する概念であってDNAの流れみたいな存在。それに対して人間というのはこの瞬間に存在する個性のある個体。

 人間にとっては人類と人間は分離不可分な概念だけどセブンにとっては、むしろそれが不思議たったのかもしれない。とはいえ、セブンの人間の理解サンプルは少なかったのでアップデートされた後に考え変わったって事なんですかね?

 軌道変更というのはその時に変わったのか、それとも初めから織り込んでいたものなのか・・・個人的には理解して軌道変更という事だったんだろうと思いますが。

なぜセブンは自ら消滅を選んだのか? 『AI悟り』説

 それでも本作で斬新、かつ意外に感じたのはセブンが自ら消滅?したこと。

 1回しか見てないので勘違いもあるかも知れないけど、アップデートして知能が飛躍的に高まった末、最終的にセブンは自ら消滅したように見えますよね。

小惑星の表面にAIを印刷によって実装するというアイデアはビックリ!
©MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会

 知能を高めたセブンは何を見たのだろうか・・・彼にしか見えたかった世界。彼以外に共有できない理解。世界の全てを理解することで充足したセブンは、その結果として自分の役目は終わったと感じたのだろうか。

 でも、どうせその理解は人間にいくら説明したところで理解不能なんですよね。

 ただ、人間には消滅したように見えるけど、まるで釈迦が悟りを開いて入滅したようにも見えませんか?つまり死んだんじゃないって事。

 自分には仏教の涅槃(ねはん)の概念をすごく連想してしまったんですよね・・・セブンは『消滅』したのではなく『入滅』した。『AI悟り説』です。どうでしょう(笑)ちょっと飛躍しすぎかもしれないけど自分はそう感じました。

那沙・ヒューストンの魅力

 今作で本当に魅力的なのが那沙・ヒューストンでした。最初はそうでもないけど、後半はとても魅力的に見えてきました。

 特に正体を明かしてからの彼女。この特徴的な名前ですらあっさり『そんなの偽名にきまってんでしょ』って斬って捨てるところは痺れました。

ただのテロリストとは理解したくないとても魅力的なキャラクター
軽さと重さ、残酷とニューマニズムが同時に描かれる。
©MITSUO ISO/avex pictures・地球外少年少女製作委員会

 彼女は確かに狂信的ではあるんだけど、その私欲を捨てた人類に対する純粋さが怖いと同時に憎めないんですよね。そしてセブンポエムの予言通り、自分自身の命を終わらせる。

 別に死ななくてもいいじゃん・・・って当然思うわけなんですけど、これはまさにセブンの理解する世界観なわけで、死はなにも終わりじゃ無いという事なんだろうなぁ。

 結果として人類の36.79%が地球からいなくなるという目論見は達成されるわけだけど、これはやはりアップデート後のセブンの変更あってのことなんだろうか。それとも実は最初からこの展開を予言していたのだろうか。

 もしアップデートで変更されたのだったら・・・那沙さんは死ななくても済んだんだろうか・・・って思うとちょっと悲しいですね。

そして謎の言葉『フィッツ』とは?

 これはどう思いました?

 自分は『理解できないものの象徴』だと解釈してます。他の人の解釈を見ていないので違っていたらごめんなさい。でもこれが分かりやすい伏線とかだったりしたら、逆にちょっとガッカリだなぁって(笑)

 人智を超えたセブンが残した言葉を人間が簡単にわかるはずもない。でも残したからには何か残す意味があったのかも知れない。それですら人間が予想するには壮大すぎる・・・そう考えたほうが、楽しい気がするんですよね。

最後に

 前半の血湧き肉躍る感じから、後半の難解なSF描写まで・・・たった6話でここまでやるかってホント驚きました。

 後半はどんどん人智が及ばない感じになるなか、自分の理解も追いつかなくなるんですが、それがメタ的に作品とシンクロしてくるんですよね。そういう演出がとても興奮してしまって不思議と涙がポロポロ出てしまいました。

 もちろんタイトルにある通り『少年少女』のジョブナイル的な作品であるわけで、一般的なハードSFとは違うんだけど『電脳コイル』と同じようにSFの混ぜ方が本当に見事でしたね。難しいのに娯楽性が高くて、本当に子供から大人まで楽しめる気がします。

 まさに期待した以上の素晴らしい作品でした!

追記:タイトルの元ネタ?『プラネテス』7話との関係は・・・

  2003年放映の『プラネテス』7話『地球外少女』との関連について、磯光男監督が語っていました。『月生まれの少女』という設定から、プラネテスをモチーフにしたのかなぁ・・・と思ったのですが、無意識のモチーフという感じだったみたいですね。

 それだけプラネテスが有名な作品だということなんでしょうが、作者さんとも仁義は切っているようですね。着想は似ていても全く違う作品になっていますが、『月生まれの少女』というモチーフはイメージ広がりますね

外部サイト  上記ツイートの元記事はこちら/ 科学とフィクション、その果てしなき「イタチごっこ」の行方:WIRED

原作・監督・脚本・キャラクターデザイン原案:磯光 男
キャラクターデザイン・総作画監督:吉田 健一
メインアニメーター:井上 俊之
美術監督:池田 裕輔/色彩設計:田中 美穂/音楽:石塚 玲依

公式サイト:https://chikyugai.com


自己紹介

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手の届く範囲で楽しんでいます。アニメ・自作スピーカー(長岡系)・オーディオ工作・Mac関係・・・などなど雑多ですがささやかな発表の場です。まどか☆マギカで目覚めて今は京アニ系ファン。40代既婚 自営 埼玉県在住 Hatena id:kato_19 ブクマ大歓迎 Twitter @id_kato_19です。詳細はブログの自己紹介エントリへ

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