『ニュー・シネマ・パラダイス』感想:30年後の未来に『郷愁』の意味を知る

2020/07/04

イベント・実写映画感想

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ニュー・シネマ・パラダイス』(劇場版)を映画館で見てきました!

 うぁ・・・すっごい泣いた。若い頃ビデオで見た時も泣いたけど比べ物にならないほど泣いた。おっさんになって見るとホントやばいね。

 単にトシとって涙もろくなっただけ・・・というのは置いておいて、でもやっぱり『ノスタルジア』って言葉の響き。『郷愁』の重さだよね。これは若い頃よりもずっと強く響いたな。
『ニュー・シネマ・パラダイス』
 字幕劇場版(1989年公開)  109シネマズ菖蒲で鑑賞
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ネタバレのあるレビューですのでご注意ください。あらすじはAmazon Primeビデオなどに書いてあります。

今だからこそ理解できるノスタルジア


 若い頃感じてた『郷愁』ってちょっと甘くて切ない『青春の残り香』みたいな感じだけど、トシとった今だとちょっと違って感じるんですよね。

 なんというか、もう多くの思い出が記憶の底に沈んでるんだよね。忘れ去ったわけじゃないから『忘却』とはまた違うんだけど。

 20代の頃は青春の思い出って結構近くにあったんだけど、40代も後半になるとずっとずっと遠くに来てしまって思い出すことも稀になってる。

 それはまさに『幻影』なんですよね・・・自分の思い出はもはや映画と変わらない

 若い頃はまだ『幻影』なりきれてなかったけど、30年という時間は思い出を幻影に変えちゃうんだね。人も街も変わってしまって同じものは存在しない

 だからこそ、ひょんな事から思い出した時、「わっ!」て一度に記憶が溢れてくる感情に激しく共感するんだと思う。一つ一つは些細な記憶の積み重ねなんだけど、それが自分をカタチ作っているから。

 ラストのキスシーンのフィルムってまさに『映画としての幻影』と『過去の幻影』を重ね合わせたような演出ですよね。ホント見事。単に懐かしいなぁ・・・ってだけじゃない。もっと深くて複雑なもの。それが郷愁ノスタルジアなんだよなぁって。

 以前見たときは『ラストにコレをもってくるかぁ!』っていう驚きの感動だったんだけど、今はさらに共感が深まりますね。今回はフィルムシーンの結構前から思いっきり泣いてましたが。

若い頃は素直に受け止められてなかった


 もちろんそれだけじゃなくて、序盤〜中盤の回想シーンも面白かった。若い頃より素直に楽しめるんだよなぁ。やっぱりそれもトシ取って素直になったってことがあると思う。

 子供に対する感覚とか、母親への思いとか、夫婦の愛情とか・・・いろんなものが若い頃は素直に受け止められてなかったかもしれない。

 あとアルフレッドが別れの際に告げる『自分のすることを愛せ』というセリフ。これも今聞くと響くなぁ。若い頃は無限の可能性がある(ような気がする)から逆にこの言葉に込められた思いが伝わってなかった気がする。

 これがいかに大切でかつ難しいことか・・・って。いろいろ失敗したり遠回りしたり、そういう年月を重ねてきたから一層感じるんだね。アルフレッドがトトにこう言いたくなる気持ちがわかる気がするな。

『映画館で見る意味』を改めて感じた


 それにしても、やっぱり映画館のスクリーンでみることの意味を感じますね。単に映像がキレイとか音が良いとかじゃないんですよね。映画館で見ることの意味って。

 以前ビデオで見たときは、ラストシーンでは感動したのですが・・・中盤はちゃんと見れてない気がしましたね。正直言うと少し退屈だったかも(笑)

 やっぱり自室だと集中力がね。でもそう言う作品こそ映画館で見るのが良いんですよね。(まあこれもアニメ映画をたくさん見るようになって気づいたところがありますが)

 特にこの作品ってモノクロ映画のシーンがたくさん出てくるけど、この印象が特に違いますね。実際の映画館のスクリーンに映されたモノクロ映画は、TVで見るのとは違って映像の力を感じます。

 そして、いままさに劇中の観客と同じように見ているって感じ。作品の中の観客とのシンクロ感があって不思議と飽きが来ない。

 ホームシアターで部屋を暗くして集中できる環境なら良いんですが・・・なかなかね。それに他のお客さんとの一体感!当日は少なかったけど、それでもやっぱり感じるところはあって、そればかりは映画館でないと感じられない感覚ですね。

最後に:30年後の未来から 


 この作品は大きくわけて『現代』と『30年以上前の過去の回想』の2つのパートがありますが、この作品の『現代』って言うのは製作された1980年代なんですよね(多分)。だとすると、今見るってことは『さらに30余年後の未来から見ている』ってことになるわけです。

 この作品が公開された当時は映画館は完全に斜陽産業。存在価値自体が問われていた頃でした。この作品を初めて見た時も映画館の鎮魂歌のような気分で見てた気がします。

 でもその後、90年代になって近代的なシネコンの開業が相次ぎ、今はむしろ映画が身近になった気がします。映画の未来が安泰とは言い難いですが復活したのは確か。そんな中での今回の自粛・休業という強烈な向かい風。

 再開というタイミングで、当地の109シネマズ菖蒲では『ニュー・シネマ・パラダイス』を特別上映してくれました。なかなか良いセンスしてますよね。映画館で見ることの素晴らしさを再確認できる再開にピッタリの作品でした!



監督:ジュゼッペ・トルナトーレ
公開(日本):1989年12月16日
上映時間:124分

※今回鑑賞したのは124分の劇場版です。かなり加筆されて二人の恋に焦点を当てた3時間近い完全版(ディレクターズカット版)もあります(未見)

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