昔はビデオで何度も見た作品ですが4Kリマスター版ということでIMAXの超巨大スクリーンでの上映!こんな機会はそうそうないよなぁ・・・と思ってたら映画館が休館!
焦りましたが再開後も継続上映とのことで早速行ってみました。
あらすじ:新型爆弾で崩壊した東京。
復興し2020年のオリンピックを翌年に迎えるネオ東京が舞台。暴走族の金田と鉄男が触れるAKIRAの秘密とは。 (1988年公開)
ちなみにIMAXとは4DXみたいに席が動く奴じゃなくて、専用の高精細フォーマットを超大画面で上映するものです。
そのIMAXフォーマットって70mmフィルム相当の正方形に近い形なので、アニメに多いビスタサイズにによく合うんです!
今回は35mmフィルムを4Kリマスタリングしたものですが、そういう意味でも最適ですね。109シネマズ菖蒲のレーザーIMAXで鑑賞しました。
ちなみにIMAXについては下記の記事にも詳しく書きました。
関連記事 『君の名は。』IMAX版の感想:空気感を感じる映像に2Dアニメの潜在力を体験できた - アニメとスピーカーと‥
※最後に少しだけネタバレあるレビューですのでご注意ください。
序盤から懐かしさ爆発
やっぱり世代的に作品の評価云々の前に懐かしさが先に来ちゃいますね。序盤で『春木屋』の看板見た時は「うぁ〜久々にこの店名みた!』って。顔がにやけちゃいます。
記憶の底に沈んでた言葉が突然浮かび上がってきた快感!
緻密だが手描き感のある映像 現代の3DCG併用とは明らかに違いを感じる。 『AKIRA』PVより画像引用 (当ブログの画像引用について) ©1988マッシュルーム/アキラ製作委員会 |
そして芸能山城組のガムラン調の音楽が流れてくると「きた〜!』ってテンション上がって。それだけで目頭熱くなってきて、これは冷静な作品評価とか無理だよね。どうしても思い出補正かかっちゃう・・・でもやっぱカッコイイ疾走シーン!
4KリマスターはIMAXでどうだったか?
ある意味で今回一番期待してた4Kリマスターの映像。効果はどうだった?と聞かれれば『いい意味で変わらない』ですね。
'88年(昭和63年!)当時は文句なくスゴイ映像でしたが、そうは言っても30年以上前の作品。
IMAXの超巨大スクリーンに拡大すれば、本来ならボケた映像になっちゃうわけですよね。それが普通に見られるってだけで十分リマスタリングの意味があると思います。
当時は未来感にワクワクした。 今見るとこれを作画で動かしていることに驚く。 ©1988マッシュルーム/アキラ製作委員会 |
逆に変にシャープすぎたりしたら違和感ですしね。『高精細』のレベルは当時と現在は全く違いますから、緻密でシャープな映像というなら現代の作品には及ばないわけで。これは手描きの質感とか現代作品との違いを楽しむって感覚で見るべきでしょうね。
ただ、エンディングのクレジットは結構ボケて読みにくかったので、文字に関してはもう少し強めにシャープ化してくれても良かったかな。
その代わりというわけじゃないけど、サウンドに関してはすごく良かったですね。5.1chサラウンドもこれ見よがしなものではないけど全然古さを感じないです。座席が震えるような低音で芸能山城組の迫力が活きてました。
あと、劇場の差もあるかもしれないけど『定位の良さ』は結構感じましたね。スクリーン内での細かな位置感までハッキリわかる感じでした。
『超能力』って言葉が現役だった時代の空気感
さて、肝心の内容ですが・・・何度も見た作品だし原作コミックも読んでるので今更評価をつけるまでもなく名作には違いないです。むしろ、初めて見た人の感想を聞きたいくらいですね。
その上で『今見てどう思うか?』ってことですが、やっぱり時代性を感じる作品ですね。それは『古さ』という意味じゃなくて『時代の空気』を感じるってことで。
図らずも話題になったオリンピック中止騒動。 ある意味ものすごい宣伝になった。 ©1988マッシュルーム/アキラ製作委員会 |
一言で言えば当時の『世紀末感』なんですよね。超能力とかディストピアとか『オウム事件』以前の空気感ってこんな感じだったよなぁ・・・って強く感じました。
もちろん当時はこんな荒れた世界だったわけじゃなくて、バブル絶頂の繁栄しているからこその混沌とした不安。そんな世紀末の空気感を反映してた気がします。
最近はサイコキネシスや超能力って言葉自体が死語化してますよね。代わりに『異能系のアニメ』は沢山あるけど、言葉と共に『空気』も変わったような気がするんですよね。
退廃的なシーンが面白く見える
あとこの作品を当時(高校生くらいの頃)に見たときは理不尽な暴力シーンとか退廃的な感じに『気持ち悪さ』も感じてました。多分、当時は不良的なものへの忌避感があったのかな。
でもトシをとったせいかその辺は逆に面白く感じちゃいますね。特に学校でのちょっとしたセリフの掛け合いや悪態のセリフとか、これがいいリズム感ですごく楽しい。
なんかアメリカでいうヒップホップ的なリズム感を日本語で違和感なくやってる感じ。これって案外、最近のアニメでも見ない気がしますね。
アニメ映画版AKIRAは金田と鉄男の愛憎劇
この作品って、初めて見たときはAKIRAが主人公か?と思ったら、金田が主人公なのか・・・と思ったら、どんどん意味なくなって鉄男なの?って掴み所なくて戸惑った記憶があります。それも今だと面白い構成だなぁって感じましたね。
映画版のAKIRAって『二人の噛み合わなさ』に焦点を当てた構成なんですよね。言ってみれば金田と鉄男の愛憎劇なんだなぁ・・・って今なら素直に楽しめました。
コミック版では国家や宗教も巻き込んだ『群像劇的な話の広がり』が魅力なんだけど、映画版ではこの二人に焦点を当ててまとめたって感じですね。
そう思ってみると『鉄男』がもはや国家レベルで手が付けられない存在になったのに、突然『金田』が主人公面して割り込んでくるのも素直に面白いって感じました。
類似性より、むしろ際立つ現代との違い
今回『東京オリンピック』との奇跡的なシンクロが話題になったけど、いざ本編を見直してみると、むしろ現代との違いが際立ちますね。
まずコンピューターやネットの描き方が古いですよね。技術的にはあの当時の延長線で描いている感じ。もちろん違う世界線の話なんですが今見ると違和感ありますね。
もう一つは、学生運動時代のような社会風景。これもある意味正反対ですね。街頭デモが少ないってのもありますが、そもそも社会運動自体がSNSなどネットで消費される時代になったってのもありますね。
ちなみに公開された'90年前後っていうのは日本のバブル景気の絶頂期。'60年代の安保闘争は完全に過去の歴史となっていて、'70年代生まれの自分にとっては今以上に政治的無関心の時代だった気がします。
そんな中で、1周回って安保闘争のような時代を繰り返すという視点は面白いのですが現実は全く違ったわけです。
これはおそらくAKIRAの世界では一度東京が吹っ飛ぶことでもう一度戦後をやり直し『第3次ベビーブーム』で若者が増えたからじゃないかな・・・って思ったんですよ。
『希望は、戦争。』という皮肉
これって40代の氷河期世代である自分にとっては『強烈な皮肉』に見えるんですよね・・・。当時は『ディストピア的な暗い未来』に見えた風景が、今見ると『若者の多い活力ある戦後』に見えてしまうという皮肉。
取り返しのつかない少子高齢化が決定した現実の日本と比べて、どちらが本当のディストピアなのやら・・・なんとも複雑な気分になりました。
2005年頃に起こるはずだった3度目のベビーブーム。 現実世界では起こらなかった。(内閣府より) |
第二次大戦後にベビーブームが起きて、その時生まれた団塊の世代が第二次ベビーブームを起こして団塊ジュニアが生まれる。自分も含めた今の40代ですね。AKIRAの世界ではその後'82年に第三次世界大戦が勃発。
現実の世界では'91年のバブル崩壊後の失われた20年で、第2次ベビーブーマーである団塊ジュニアは『氷河期世代』として打ち捨てられ、日本の未来を託すべき『第3次ベビーブーム』を消滅させてしまいました。
しかしAKIRAの世界は終戦からの復興の過程で団塊ジュニアによる『第3次ベビーブーム』が起こっていたんじゃないかな。その子供が金田や鉄男のような十代となったのがちょうど2019年頃。
暴走族も学生運動も若年層が多いからこそ起きる現象だったのかな・・・と考えるとそれほど悲観する社会じゃないのかも(笑)
氷河期世代の作家である赤木智弘氏の評論に『希望は、戦争。』というフレーズがありましたが・・・いやはや、本当に戦争によって希望のある世界になってるよって。
30年後にそんなふうに『AKIRA』を見ることになるとはね。あの頃はまったく想像していない未来でした。
※以下コミック版のネタバレが少しあります。
でも、やっぱり大東京帝国を見たいかな
とまあ、話が横道に逸れましたが、ただ正直いうとこの劇場版アニメは確かにすごいんだけど・・・コミック版見ちゃうとね。
やっぱりアキラ覚醒後の世界、つまり大東京帝国からのストーリーを見たいですよね。
アニメ自体は原作終了前の制作とはいえ、原作者の大友克洋氏みずから監督脚本をしたので変な改変もないし一応完結しているので当然文句はないです。(アニメは原作6巻中3巻くらいまでの内容を中心に作られています)
ただ今回、映画版のラストを忘れてて、そっか・・・ここで終わりかぁ。って思ったのは正直なところ。アキラ自体もあまり描かれないしね。映画版ではアキラって何というか神様みたいな存在ですよね。
のちに完結したコミック版を見るとアキラ覚醒後の世界が長く描かれててそれが良いんですよね。 人間としてのアキラと鉄男。あと『ミヤコ教団』の描き方も好きだったなぁ。映画版だとミヤコ様って全くのモブ的存在ですもんね。
この映画単体で見れば面白いと思ったんだけど、未読の人はぜひコミック版も読んで欲しいですね。そういう意味では『風の谷のナウシカ』とのアニメ版と原作の関係にちょっと似てるかも。
そしてコミック版の劇場版ができれば・・・と思うけどさすがに難しいかな。
とはいえ、IMAX版AKIRA。見て良かったです。あの時代から30余年たって、本当に『あの頃の未来』にいるんだなぁ・・・って実感しました!
原作・監督:大友克洋
脚本:大友克洋 橋本以蔵
音楽:山城祥二
制作会社:東京ムービー新社
AKIRA 公式サイト
https://v-storage.bnarts.jp/sp-site/akira/
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