アニメ『HELLO WORLD』感想:喪失と再生の物語、そしてセルルック3Dの歴史的瞬間を見た!

2019/09/23

アニメ

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 劇場版アニメ『HELLO WORLD』(ハローワールド)を見てきました!

 すごく良かったです。確かに終盤は難解だと思う。だから見た直後は『ヒロインの一行さんがカワイイ!』としか言えなくなるんだよね。でもそれは『物語がダメ』ってわけじゃない。全部乗せの豪華海鮮丼みたいな作品なので一言で表現するのが難しいってだけ。
予告編より画像引用(当ブログの画像引用について
c2019「HELLO WORLD」製作委員会

 考察しがいのあるSF作品、あるいはボーイ・ミーツ・ガールの物語・・・どちらも正しいと思う。でも自分はもう一つの側面、『秒速5センチメートル』のような『喪失と再生の物語』に惹かれました。もはや青春じゃない大人が失った恋に人生を捧げる物語。ここに自分は泣けてしまった。

 だから難解なSF作品が見たい人、青春ラブストーリーが見たい人、壮大なセカイ系作品を見たい人・・・そして『秒速』みたいな切ない話が好きな人!みんなにオススメしたい。もちろん全部が好きな自分にはとても満足感の高い作品でした!

※後半よりネタバレありのレビューとなります。

反則技の傑作予告編!イメージ通りの本編。


 この予告編は本当に素晴らしくって、公開前の劇場でも予告編だけでウルウルくるレベルでした。とにかく楽曲の合わせ方が最高ですね。

映画『HELLO WORLD(ハロー・ワールド)』予告
予告編はシネスコ併用ですが本編は普通にビスタサイズです。
予告のイメージを崩さない本編でした

 さらにシネスコビスタというスクリーンサイズまで使った演出も素晴らしい効果ですね。これは本編では使われてない演出なんですよ!ハッキリ言って反則技ですが(笑)でも良いものは良い!

 しかも素晴らしいことに本編でも予告編のイメージに近い劇中の楽曲の使い方してくれてるんですよね。こういうのほんと大好物なので最高でした。

 欲を言えば本編でもリズムに合わせたカット割りやタイミングにもっとこだわって欲しかったかな・・・新海作品みたいにあざといほどのエモさがあってもよかったかなって。

 でも、このテーマ曲、Official髭男dismの『イエスタデイ』最高ですよね。イントロのカチカチというリズムと透明感のあるピアノ旋律の盛り上がり。そして開放感のあるサビもほんと気持ちいいです。

ラスト1秒以上の衝撃!


 そして、誰もが驚くのキャラの素晴らしさ。キャラクターデザインの堀口悠紀子さん素晴らしすぎる・・・セルルック3DCGのキャラクターに本当の意味で萌えたのは初めてですね。確実に一線を超えてきました。やっぱり魂を入れるのは人なんだなぁって感動しましたね。
予告でもその片鱗はみえる
でも本編で見たときのなんとも言い難い可愛さ
これはセルルック3Dの歴史に残る作品
c2019「HELLO WORLD」製作委員会

 自分は堀口さんって言えば『たまこまーけっと』なんですが、今回はセルルック3Dみたいだしデザインだけかな?って実はそれほど期待してたわけじゃなかったんですよね。でもエンドロールみてたら作画監督にも名前が・・・もうここで感動しちゃって。

 なるほどそういうことか!って。ある意味ラスト1秒以上の衝撃ですよ(笑)

 予告編を見たときは正直そこまで良さを感じなかったんですよね。CGっぽい違和感も少しあったし。でも本編をみると3Dキャラをを忘れる瞬間も多くて、わずかな動きの演出なのかな。不思議なくらい自然。

 もちろん実際の制作現場はわからないし、堀口さんだけの仕事じゃないんだろうけど・・・でもとにかく魅力的なのは確か。アニメファンなら今この瞬間に体験する価値があると思います。

【追記】
 『HELLO WORLD 公式ビジュアルガイド』に堀口さんが作監としてCG部分へ指示をしていたことが記載されているそうです!


血の通ったかわいらしさ!


 セルルック3Dの作品って言えば、ポリゴンピクチュアズの作品や、ラブライブ!など3DCGの進化には驚かされてきました。これまでも大好きなキャラがたくさんいます。でもとうとう閾値を超えてきた気がしました。

 従来の作品でもセルルックで『萌え』を表現するレベルに達していましたが、ついにキャラクターの体温を感じるレベルに到達した気がします。大げさに言えば魂が入ったというか、とにかく『命が吹き込まれた』と感じるキャラクターに驚きました。
違和感なく2Dにするだけでなく3Dベースだからできる2D演出
立体感も感じる脚の動きが素晴らしい
c2019「HELLO WORLD」製作委員会

 だから、萌えを通り越して『良い匂い』がしそう・・・と思ったくらい(笑)ほんとに。体温を感じるんですよね。セルルックCGの技術力だけじゃなくて、やっぱり技量のある作監が入ることのすごさなのかな?まあ、それに応えるだけの技術レベルがあるってことでしょうけどね。

 とにかくセルルック作品がここまで来たんだ・・・という驚き。ツイッターを見ても作品の賛否は別にして、一行さんの可愛さには誰もが絶賛をしていましたね。

 でも単に『カワイイ』にとどまらない、この血の通った可愛さこそが一人の男の『人生を捧げるまでの恋』に説得力を持たせる効果があったと思います。


※以下ネタバレありのレビューとなります。

『秒速5センチメートル』を連想する男の悲哀


 この作品と評する時、京アニ作品との共通性や、セカイ系的な意味で『まどか☆マギカ』をあげたり、典型的な青春ラブストーリーとする人は多いし、難解さでは『海獣の子供』をあげる人もいますね。自分もそう思います。
見た目も松坂桃李さんっぽいけど
男の悲哀を感じさせる演技はさすが。
今回は素晴らしい配役でした。
c2019「HELLO WORLD」製作委員会

 でも自分が一番連想したのは『秒速5センチメートル』でした。自分から見てこの作品の主人公は高校生の堅書直実であると同時に大人の『カタガキ ナオミ』なんですよね。青春をずっと引きずって生きてきた男の物語

 大人の彼に裏があるのは早い段階で予感したけど、あるところまでは自分は彼を悪役と感じてました。でもそこからは、自分の中で彼が主人公に見えてきました。

別れと再生の物語


 そのシーンは、大人のナオミが一行さんと別れるシーン。彼女の『あなたは私を愛してくださっていたんですね』(うろ覚えです)のセリフで涙が止まらなかった。

 命をかけて彼女を目覚めさせた。でも救った本人から拒絶されて、これまでの人生のすべてが崩れ去った。夢に見た現実はハッピーエンドではなかった。それでも、いや、だからこそ自分のやってきたことの責任をとる決意をしたのかな。
一行さんに拒絶されてたからこそ
彼は本当の再生を果たせるのかもしれない
c2019「HELLO WORLD」製作委員会

 自分はここに彼の本当の愛を感じるんですよね。狂信的に見えるかもしれないけど・・・でも自分勝手な欲望じゃない。自分の幸せは彼女が幸せであることだから。

 だから、私のことを愛してくれていたんですね・・・って、これはナオミにとって『赦し』だと思う。もう少年じゃないだたの大人の男が、だた彼女を目覚めさせるために人生を捧げた。それと引き換えに得たこの言葉・・・そんな彼にとって、これ以上の報われる言葉あるだろうか。

 ハッピーエンドではないかもしれない。でもこれで十分だ・・・自分にはそう思うんですよね。これ以上嬉しい言葉はないよ。彼は喪失からの再生を果たせたと感じました。

 このシーンまでは『この作品は面白いけど泣く作品じゃないな・・・』って思ってたけど、ここで不思議なくらい涙がボロボロ出てきたんですよね。ウブなはずの彼女にしては出来過ぎなセリフかな・・・とも感じたけど、読書好きで聡明な彼女なら・・・きっとあるよね。

 自分にとっての一つのクライマックスがこのシーンでした。

大人の彼のテーマソング


 大人のナオミにとってこれはハッピーエンドではないかもしれないけどバッドエンドでもない。彼が失った人生を再び取り戻すための物語。

 そう思って、Official髭男dismの『イエスタデイ』の歌詞の後半を読んでいると、大人の彼のテーマソングでもあるように見えてくるんですよね。だから彼もこの物語の主人公だと思う。

いつか憧れと違う僕でも ただ一人だけ 君だけ守るための強さを なによりも望んでいた』(『イエスタデイ』より/ 作詞:藤原聡)

Official髭男dism - イエスタデイ[Official Video]
この曲ホント気持ちいい・・・

 大人の彼は単なる悪役じゃない・・・彼の生きた人生があのラストシーンにもきっと関係していると思いたいですね。

 この役に松坂桃李さんをあてたのは素晴らしいと思う。明らかに松坂さんの声って感じなんだけどやっぱり役者の力かな。邪魔に感じるどころか、むしろそれがプラスになってる感じでした。


ラストシーンの考察・・・って難しすぎ(笑)


ラスト1秒でひっくり返る』というのがウリ文句なわけですが(笑)ビックリ仰天というより、キレイに着地させるというかピリオドを打つという感じがしましたね。


 ただ、実際の考察は正直難しいですよね。考察を難しくしているのはタイムリープじゃないってことなんですよね。あくまでコンピューターシミュレーションの世界。直実とナオミの世界、そしてラストシーンの世界に時間軸としてのつながりはないってことですよね。
タイムリープならこの瞬間を変えれば解決なのだが・・・
c2019「HELLO WORLD」製作委員会

 カラスが大人の一行さんのアバターで、大人のナオミを目覚めさせる・・・ということなんですよね。ただ、ナオミの時と違ってスタッフ全員が知ってるみたいでしたよね。

 ということは・・・現実世界では一行さんと入れ替えにナオミが意識を失ったって考えるのが自然かな。でもだとしたら大人の一行さんはどうして復活しているのか。あれからさらに10年だと30代後半?

 それともラストの世界は直実が作った新しい世界における未来で、高校時代に一行さんの代わりに直実が雷に打たれて意識不明になったのかも・・・って、そもそもなぜ月なのか?って(笑)色々思いつくけどこれといった正解が出てきません。

 というか、初見だとラストのあたりが情報量多すぎて掴みきれてない気がしますね・・・この辺はもう一度見に行かないと!


エンディング・・・そして最後に。


 そしてエンディング・・・これはすごく良かった。

 やっぱり絵の入ったエンディングは良いなぁ。『なんで月なの?』って混乱しながらでしたが・・・なんだろ不思議なんだけどここでも涙でてきちゃったんだよなぁ。

 楽曲が良いいってのもあるけど、ラストの終わり方に疑問があってもとりあえず嬉しいんだよね。

 そんな中で堀口悠紀子さんの作画監督のクレジットをみてまた感動。この作品のエンディングはクールダウンというよりじわじわ感動が溢れてくるようなエンディングでしたね。

 この作品は中高生が見ても面白いと思う。でも大人が見るとまた違う感動があると思うんですよね。確かに人を選ぶのかもしれないけどもっと話題になって欲しい作品ですね。

【追記1】:下記コメント欄のもあいさんから、小説版を読んだ上での解説をいただきました!細かなつながりがわかってスゴイです!小説版も合わせて読みたくなりますね。

【追記2】:『HELLO WORLD if ――勘解由小路三鈴は世界で最初の失恋をする』という公式スピンオフも素晴らしいみたいですね。本編では意味ありげだった勘解由小路さんが実は凄い関与してたらしい・・・読みたい。



監督:伊藤智彦
脚本:野崎まど
キャラクターデザイン:堀口悠紀子
音楽:2027Sound
制作:グラフィニカ

堅書直実:北村匠海
カタガキナオミ:松坂桃李
一行瑠璃:浜辺美波

劇場版アニメ『HELLO WORLD』公式サイト
https://hello-world-movie.com



自己紹介

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手の届く範囲で楽しんでいます。アニメ・自作スピーカー(長岡系)・オーディオ工作・Mac関係・・・などなど雑多ですがささやかな発表の場です。まどか☆マギカで目覚めて今は京アニ系ファン。40代既婚 自営 埼玉県在住 Hatena id:kato_19 ブクマ大歓迎 Twitter @id_kato_19です。詳細はブログの自己紹介エントリへ

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