『ズートピア』予告編
シネマトゥデイ(公式配信)/(C) 2016 Disney.
※核心に迫るネタバレはないレビューですが未見の方はご注意ください
ディズニー作品は苦手だったけど
正直ディズニー作品はちょっと苦手だったので・・・全然詳しくないんですけどね。(ディズニーに限らずドリームワークスとかアメリカアニメ全般に疎いので偉そうな事は言えないんですが)
ウォーリーはSFっぽくて好きでしたけど、ファインディング・ニモは全然受け付けなかったし、アナ雪なんて結局見に行ってないもんね。ディズニー的な世界観にちょっと引いちゃうんですよね。
あと子供向けな雰囲気がどうもね。ピクサーの作品はその点嫌いじゃ無いけど、それでも映画館でみるってほどでもなかったんですよ。
今回のズートピアだって全然興味なくってTwiiterで絶賛の嵐だったからようやく気付いたほど。この作品は政治的・社会的テーマで語られた感想が多かったので『へーそういう話なんだ!』って興味をもったのがきっかけでした。
半信半疑で見始めたが・・・
ズートピア公開直後から色んな人が興奮のツイート。ここまで絶賛される作品ってなんだろう・・・ステマかな(笑)って半信半疑でしたが、ちょっと流行に乗ってみるかぁ!って奥さん誘って見に行きました。
でも、正直言うとチケット買った後も『2時間近くか・・・ちょっと飽きちゃうかなぁ』と思ってたくらいテンション低めでしたが(笑)
それが上映が始まってすぐ心奪われちゃいましたもんね・・・本当に構成がうまくってものの10分で完全に引き込まれました。スピーディーなのに緻密な脚本で『まだ10分?』ってくらい詰め込んでくるんですよね。
冒頭からズートピア到着までの超スピーディーな展開 景色の美しさも合わせて一気に引き込まれる。 (C) 2016 Disney. /予告編より画像引用 (当ブログの画像引用について) |
その後も108分と結構長時間なのに全然ダレるところがなくて・・・終わった後も爽快な満足感。構成の詰め方に感心しました。
リアリティーを超えた映像
それ以上に驚いたのは何と言っても映像のすごさ。最近のディズニー作品見てる人には当たり前なのかもしれませんがCGもここまで来たの?って驚いちゃいました。映画館の高精細なスクリーンで見た甲斐がありました。
もちろんハリウッド作品でリアルなCGはたくさんありますが、3DキャラクターのCGってほぼ完成している気がしてたんですよね。これ以上は進歩しようが無いというか、結局は『人形をどれだけリアルに動かせるか』って事だと思ってたんです。
でもズートピアのキャラクターは『人形をリアルに動かす』というレベルを超越して、ある意味『ハイパーリアル』の域に達してるんですね。
スクリーンでの不思議な実存感に驚いた 今回2Dだったが3Dではもっと映えるのだろうか (C) 2016 Disney. /予告編より |
『動くぬいぐるみ』でもなく、もちろん『生身の動物』ってわけでもない。両方をミックスさせたような独自の世界を構築している。現実のモノを再現する事にこだわらず、3Dキャラクターだからこそできる表現で『新たなリアリティ』を感じることができました。
体全体でキャラクターの性格が表現されているし、そして何と言っても豊かな表情。わずかな動きまで徹底的に突き詰めたこだわりに、ストーリーとは関係なく目頭が熱くななりました。
評判通りの社会派ストーリー
肝心のストーリーも評判通り社会問題が上手に織り込まれていましたね。差別や偏見についてもさりげなく忍ばせてくる感じがすごいなぁ。決して説教くさくないんですよね。
色々あるけど、個人的には『多数派による数の暴力』を表現していたのが興味深かったな。今の世相と図らずもダブりますね。あとアメリカのトランプ氏を支持する人々って、彼が『ライオン市長』みたいに見えてるのかもなぁ・・・なんて思いました。
ライオン市長はパターナリズムの象徴か? (C) 2016 Disney. /予告編より |
映画評論家の町山智浩氏がラジオで解説した通り、アメリカ社会を皮肉った所が随所にあるのも面白いですね。そういう意味で風刺的な作品と見ることもできます。
こんなに笑える作品だと思わなかった
ただ、そういう社会的メッセージを全面に出した作品か?というと必ずしもそうじゃない。多くの人が語るように単純に楽しい作品になってるのがすごいですよね。
とにかく笑えるシーンが多くって・・・自分にとってこの作品ってアクションコメディーなんだよなぁ。いっぱい笑って謎解きとアクションでハラハラして最後はちょっとホロリ・・・みたいな娯楽作品として完成されてる。
はっきり言ってディズニーアレルギーの自分ですが、ズートピアでは何度笑ったかわかりません。これほど笑えたディズニー作品は初めてでびっくりしました。
文化の違いを超えた笑い
おもわず突っ込みたくなる笑いというか、不思議とアメリカ映画を見ている気がしなくなるんですよね。アメリカンジョークの違和感ってあるじゃないですか。でもズートピアでは笑いのツボがすっとハマる感覚は不思議でした。
主人公ウサギのジュディとキツネのニック 随所にシニカルなジョークがちりばめられている作品 (C) 2016 Disney. /予告編より |
思わず声を出して笑ってしまいましたけど、周りの人は声出してなかったのはリピーターだから・・・だよね。何度も一人で吹き出してしまってちょっと恥ずかしかったです。でも結構子供にはわからない笑いもあって『攻めてるなぁ』って思いました。
そして極めつけはラストのスピード違反のシーン。アメリカ人も『運転すると性格変わる』って『あるあるネタなんだ〜!』って感心してしまいましたね。
世間の評判は『コメディーの皮を被った社会派作品』というイメージですが、自分としては『社会派の皮を被ったコメディー作品』と言いたくなるほど楽しい作品でした。
ディズニーの底力に驚愕
この作品は映像から脚本まで緻密に計算されていて、粗とか隙といったものが一切ないような完成度。これこそディズニー作品のチームプレイの力なんだと驚きます。
日本でこのようなチーム制作ってできるんでしょうか?もちろん日本の作品もチームには違い無いけどもっと少数の才能に依っているイメージです。ディズニーのインタビュー記事を読むとミーティングによって大きく改良されている様子がわかります。
【参考】ズートピアが様々な変遷をたどって変化した様子をまとめていらっしゃるブログ。
『ズートピア』の制作史、および『ズートピア』のテーマは「差別」であるのか?- 名馬であれば馬のうち
以前テレビでみたディズニーのミーティングシーン(ベイマックスだったかな?)でも多くの参加者から忌憚の無い意見が発せられていた記憶があります。それによって作品がブラッシュアップされていくのに感心しました。
日本ではディスカッションしてもディズニーみたいになるだろうか・・・逆にカドが取れて当たり障りのないものになってしまいそうですよね。日本では少数の天才に任せた方が多少アラがあっても面白いものができるのかな・・・なんて想像してしまいます。まあ現場の事はわかりませんが。
でもそんな事まで想像してしまうほどディズニーの底力を考えさせられる作品でした。もちろん日本の作品とは直接比較はできないですけどね。でも、こういうテーマもしっかり娯楽作品にまとめてくるんだもんなぁ・・・たいしたもんだよ。
普段ディズニー作品を敬遠している自分も認めざるを得ないスッキリ爽快な娯楽作品。自分の視野の狭さを思い知った経験でした。
監督:リッチ・ムーア/バイロン・ハワード
製作総指揮:ジョン・ラセター
製作:ウォルト・ディズニー・アニメーション・スタジオ
ズートピア公式サイト
http://www.disney.co.jp/movie/zootopia.html
(参考)町山智浩『ズートピア』が描くアメリカの政治的実情を語る - miyearnzzlabo(TBSラジオ『たまむすび』 書き起こし)
http://miyearnzzlabo.com/archives/37386
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