機動戦士ガンダム THE ORIGIN III 暁の蜂起 映画 感想 :3作目の『ガンダムらしさ』とは何か?

2016/05/22

アニメ

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 いやあ、想像以上に熱くなれましたね。アニメ版第3作目となる『機動戦士ガンダム THE ORIGIN III 暁の蜂起』を劇場で見てきました。 実のところ前作『THE ORIGIN II 哀しみのアルテイシア』は地味目な話だったので今回もそんな感じかなぁ・・・ってあまり期待しないで見に行ったんですよね。

予告編より画像引用(当ブログの画像引用について
(C)創通・サンライズ

 予告編(YouTube)けっこう地味じゃないですか。ガルマ坊ちゃんとシャアの士官学校の話って・・・まさか学園モノじゃあないだろうけど(笑)ガンダムらしさはまだ出ないのかな?って思いましたが・・・実際はスピーディーな展開でガンダムらしさ満載の『良い意味で』裏切られる作品でした。

※後半にネタバレありの考察がありますのでご注意ください。といっても予告編でほとんどネタバレしてる気がしますが。
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まさに『ガンダムらしくなってきた』作品


 初日の朝イチですが『MOVIXさいたま』の500席がほぼ満席!さすがですね。原作コミックは未読で鑑賞。冒頭5分ほどは1・2作目のダイジェストですがタイトル後はテンポ良くストーリーが展開します。

 オリジンらしく『コミック的な表情のつけ方』など現代風の演出は目に付きますが、2作目にくらべて明らかに『ガンダムらしい作品』になってきたという印象。

3作目はガルマとシャアを軸にしたストーリー
もちろん学園モノじゃありませんが結構コミカルシーンも多い
(C)創通・サンライズ

 実は今回、初回に加えて舞台挨拶の回も鑑賞したのですが、そこで安彦良和 総監督が繰り返し強調していたのが『ガンダムらしい作品』だということでした。

 「1と2はガンダムらしくないかもしれないが必要な作品。今回のIIIはガンダムらしさを強く感じることができた」という意味のことを仰ってましたね。自分は初回鑑賞後に舞台挨拶を聞いたのですごく納得できました。

 1作目のTHE ORIGIN Iはすごく好きな作品ですけど、確かにガンダムらしいか?と言われると違う気もします。でもこの3作目はモビルスーツ戦こそないものの確かに『ガンダムらしさ』を感じることができたんですよね。

ガンダムらしさとは何なのか?


 このガンダムらしさって何でしょうね?モビルスーツが出てこないのに感じる味わいや空気感はどこから来るんだろう・・・って考えると次のことかな?って思いました。

 一つは戦争の匂い・・・とにかく沢山の命が容赦なく失われます。しかも簡単に。命の軽さが重く響いてくると同時に、鮮やかなシャアの戦闘シーンに高揚感を感じる。そこにモビルスーツの有無は関係なく、1stガンダムで感じた戦争のイメージに通じてくるんだと感じました。

あまりにもあっさりと多くの命が失われていく
この軽さが戦争の非情さと矛盾を表現している
(C)創通・サンライズ

 もう一つは政治的な複雑さ・・・独立を阻止したいが傲慢さから事態を収拾出来ない連邦、そしてジオンを率いるザビ家も強硬派と穏健派の考え方の違いがある。そしてそのバランスを崩すシャアの策略

 これを沢山のキャラクターの生き様・死に様を見せながら展開していくのが『ガンダムらしさ』であって、この3作目にはその雰囲気を強く感じることができるんです。

※以下、考察のためネタバレあります。

ゼナの叫びに感動・・・


 今回一番印象的だったのは、ゼナ・ミア(2班班長)がドズル・ザビを軟禁するシーンですね。あれはよかったな。2回見て両方とも目頭が熱くなりました。

 扇動者が誰か問い詰めるドズルに対し、ゼナの『ガルマ様が檄を飛ばされたのです!』という叫び。狼狽えるドズル。まさに歴史の歯車が動きだす嚆矢となる鮮やかなシーンでした。

ゼナ・ミアを演じる茅野愛衣さんの好演が光るシーン
ゼナの行く末を復習すると一層感慨深い
(C)創通・サンライズ

 ゼナの声は茅野愛衣さんだったんですね。ゼナとドズルの『ある意味』出会いのシーンでもあり、ZZまで続くザビ家の末裔ミネバの出生の原点だと思うと一層味わい深いシーンです。シャアもさすがにそこまで読んでゼナを指名したわけではないでしょうが(笑)

戦争に対するリアリティ


 あと、連邦艦の入港事故による暴走激突シーンもすごく印象的だったなぁ。あの一旦爆発してエンジンが暴走ってのがリアリティがあるんですよね。農業区コロニーの崩壊と合わせて沢山の命が失われるのだけど、まるでおもちゃのように簡単に崩壊してしまいます。

 その『非現実感』もある意味リアリティなんですよね。さらに事故をきっかけにした暴動と鎮圧、それをテレビで見る若者たち。安彦総監督が「戦争の起こる過程を見てほしい』という趣旨の発言をしていた通りの内容でした。

 独裁を目指しながらも穏健派であるデギン・ザビ。彼のように事態の進行を抑えようとする人間がいながらも混乱を望む人間不測の事態によってさらに拡大してしまう。その極めつけはシャアですよね。

独裁を狙いながらも戦争は望まない父デギン。
主戦派の息子ギレンとの長年の確執はすでに始まっている
(C)創通・サンライズ

 最後の一押し。シャアは歯車の回るきっかけを作るだけ。決してシャアがすべてを操っているわけではない。黒幕の陰謀論のように簡単な話ではない所がいいですね。大きな歴史の流れの中で個々の人物の思惑が複雑に絡み合って進んでいく感じがとてもわかりやすく表現されています。

戦争への高揚感と矛盾を描いた作品


 とはいえ反戦映画的な説教くさい内容ではなくて、後半の戦闘シーンなんて本当に熱くなれますね。傲慢な連邦を蹴散らしていくシャアの活躍に爽快感を感じます。この高揚感もまた戦争のリアリティであるわけで、1stが疲弊した厭戦気分の戦争だとすれば、THE ORIGINは緒戦の高揚感に満ちた戦争を描いているんだなと思うわけです。

悲惨を強調するのではなく戦争の高揚感を描くことでリアリティを表現している。
(C)創通・サンライズ

 それにしてもシャアの非情さ残酷さが際立つ作品でした。事故シーンの直前にはニュータイプを連想させるようなシーンもありましたね。次回第4作はいよいよララァとの出会いがありシャアがどう変化するのか楽しみです。

エンディングと予告と舞台挨拶と・・・


 エンディングの後はちょっとびっくりしましたね(笑)予告が入ることは当然予想してましたけど、その前に結構長いエピローグシーン。エンディング見ながら『あれ?そういえば予告にあったアムロ出てないじゃん!』って思ったらエピローグで出てくるとは。

長めのエピローグシーン。
アムロの父テム・レイの活躍を期待させるエピローグでした。
(C)創通・サンライズ

 そしてTHE ORIGIN IVの予告、ララァ可愛くてちょっとビックリ(笑)その後さらに新シリーズの予告とは。立ち上がって帰ろうとする人結構いましたよね。

 舞台挨拶でも安彦総監督が「最後にお楽しみがあるので席を立たないで」と言っていましたが、司会の方が「ネタバレになるんでちょっと」って止めてました。でもそのくらいは別にいいんじゃないかと(笑)

 他にもシャア役の池田秀一さんが「今回は原作にないキャラとしてリノがでますが・・・」みたいな発言をしたらまた司会者が止めようとしたんだけど公式サイトで発表済みの事柄はネタバレじゃなくない?。制作者がOKだと思って語ってるんだから過敏に制止するのもどうかと思いましたけどね。
 しかし池田秀一さん66歳?若いというか・・・確かに舞台挨拶では超ベテランって感じなんですが劇中ではホント声が若いよね・・・もう感動しちゃいましたよ。ずっとお元気で新シリーズでも頑張ってもらいたい!

 3作目として単独でも面白かったしシリーズ全体への布石としてもすごく重要な作品でした。映画館で見る価値のある作品ですね。劇場は2週間の限定公開ですが同時に配信も開始しているので各配信サービスですぐに見られます。

 次回シリーズ最終作のIVは2016年・秋公開!楽しみです。

原作・総監督安彦良和
監督今西隆志/脚本隅沢克之
アニメーション制作サンライズ
公式サイト http://www.gundam-the-origin.net/index.html
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公式配信情報:IとIIは6/25まで格安レンタル配信だそうです。

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