2018年6月13日水曜日

映画『あさがおと加瀬さん。』感想:百合アニメの概念を壊してくれた青春ラブストーリー!

あさがおと加瀬さん。』を映画館で鑑賞してきました。

 予告では『百合アニメ』って印象だったけど、本当にド直球に恋を描いた作品でビックリ!熱くて瑞々しい青春の空気感がすっごく伝わってきましたね。

 同性カップルをことさら強調していないのもすごく良くて、人を好きになる事の本質は同じだって事を、言葉より何倍も説得力を持って表現しています。


何度も見たくなる素敵な予告編
サビからのときめく展開が最高すぎますね。

 恋愛は世界を輝かせてくれるという一貫したメッセージで、恋の『切なさ』というより『喜び』に焦点を絞っている気がしますね。

 ドラマ性という点で物足りないと感じる人もいるかもしれないけど、逆にこの割り切りがすごく良かったです。わずか1時間弱の作品ですが、青春の機微がたくさん詰まった気持ちのいい作品でした。

ネタバレがあるレビューですので未見の方ご注意ください。
※原作コミックは未読です。

このキスシーンの描き方はホント好き


 のっけから何ですが、バス停の最初のキスシーン。これすごく印象に残ったんですよね。突然のキスシーンなんだけどすごく自然なんですよね。

 『突然のキスシーン』って実写でもアニメでも良くありますが、どうしても非現実的というか・・・芝居じみてると思うことが多かったんですよね。

 でもこのキスシーンは違う。強引なようで優しい、本当にすごく自然に、でも突然の衝動で思わずキスをせずにはいられない!という感じが、すっごくうまいですね。
予告にもあるこのシーンもよかったね。
山田がスッと倒れる動きからの流れが最高!
予告編より引用(当ブログの画像引用について
©2018 高嶋ひろみ・新書館/「あさがおと加瀬さん。」製作委員会

 この丁寧な描き方。ちょっとした動きの違いかもしれないけど、型どおりの作品にはしないっていう制作陣のこだわりを感じました。

自分の固定観念を打ち壊すストーリー


 もう一つ驚いたのは『同性である事』が全くと言って良いほど強調されていないストーリー展開ですね。

 こっちは『百合作品』だと思って見に行ってますからね。当然『私たち女同士なのに・・・』的な苦悩が軸になるのかな?と思うじゃないですか。

 そしたら、そういうの全然ないんですよね。これはビックリしました。
学校は女子校ではなく共学
友人の三河も『同性』である事に特に触れない
©2018 高嶋ひろみ・新書館/「あさがおと加瀬さん。」製作委員会

 苦悩があるとすれば相手が『同性』だからでなくて『人気者』な所なんですよね。人気者と付き合う事の苦悩。もう異性カップルと全く同じ

 もう自分のステレオタイプっていうんですか?固定観念を壊してくれた気がします。

 同性カップルを描くなら『同性だからこその悩みを描くのが当然』みたいな偏見がありましたね。人を好きになるのに本質的な違いはないって・・・言葉では理解していても感覚的に理解していなかったな・・・って。

 これに気付いた時ちょっと感動しちゃったんですよね。こういう伝え方もあるんだって。

 もちろんLGBTの抱える問題を訴える作品があっても良いし、それも大切だと思うんです。でも言葉だけではうまく伝わらないメッセージもあるわけで。

アニメーションだから伝えられること


 こういうのって、実写だと生々しすぎてストレートに伝わらないと思うんですよ。アニメってすごく抽象化できるじゃないですか。

 抽象化された世界だからこそ余計な情報を持たせずにストレートに伝える事ができる。アニメの特性が活かされているからこそ実現できた気がしますね。
ボーイッシュだけど優しくて人気者
性別問わず受け入れやすい加瀬さんというキャラクター
©2018 高嶋ひろみ・新書館/「あさがおと加瀬さん。」製作委員会

 加瀬さんっていう人物はまさに典型で、こういうキャラクターを女優さんが演じてもなかなか難しい気がするんですよね。見てる方も女優さんとしてみてしまうしね。キスシーンだって生々しく感じちゃう。

 この作品には余計な引っかかりがなくて、だからストレートにメッセージが届くんですよね。そこにアニメーションの可能性を見る事ができた気がします。

人として最もエネルギッシュな部分


 もう一つい良いと持ったのは恋愛を徹底的にポジティブに描いている所。

 『両想い』なんて概念(笑)をすごく久しぶりに認識したけど、自分の好きな相手が、自分を好きでいてくれるという天にも昇るような喜び!

 これがどんなに奇跡みたいなことか。この嬉しさが本当によく伝わってきました。
予告を見た時は山田の片思いかと思った。
加瀬さんも好きになる訳だ、と納得のかわいさ。
©2018 高嶋ひろみ・新書館/「あさがおと加瀬さん。」製作委員会

 世界が輝いて見えるような感じ。目の前の彼女が全てという感覚。視野が狭いとか、いっときの感情とか・・・訳知り顔の大人がバカにしそうな世界。

 でも人間として最もエネルギッシュな部分なのは間違いなくて、そこをバカにしてきた結果が今の社会のような気がするんですよね。

百合はラブストーリーを素直に伝えることができる


 でも、もし加瀬さんが『人気者のイケメン彼氏』だったら・・・男性にとっては引いてしまうというか、ちょっと斜に構えてしまうと思うんですよね。素直に見ることができない気がする。
加瀬さんがハイスペック男子だったら
女子向け作品だと思って男性には伝わりにくい。
恋の喜びを伝えるには百合であることが重要。
©2018 高嶋ひろみ・新書館/「あさがおと加瀬さん。」製作委員会

 でも加瀬さんが女性なことで、男性にとってもストレートに伝わる!いくらハイスペックでも気にならない。これってすごい発明だなぁ・・・って感動してしまいました。

匂いに注目したのは素晴らしい!


 全編を通じて夏の匂いを感じるような映像でしたね。でも、匂いと言えば山田が加瀬さんの匂いにうっとりするシーンとかホントよかった。
このシーンはギャグっぽいけど
加瀬さんの匂いのシーンと対になっていた
匂いは記憶や本能に直結した要素だと思う
©2018 高嶋ひろみ・新書館/「あさがおと加瀬さん。」製作委員会

 匂いって本能に直結する感じがして、こうやって描かれるとホントやばいくらいビビっときます。(中二病1期の『勇太の匂いがする』のセリフも大好きだったりしますが)

 人間の本能に直結してるのかな?ここをちゃんと描いていることで、すごく恋愛のリアリティを補強してる気がしました。

同性だからこそのギャップが味付けに


 さんざん同性カップルを意識させないと書いていてアレですが、だからこそ逆に『同性だからこそのギャップ』のシーンが光りましたね。

 一番はやっぱりお風呂のシーンですね。異性カップルではありえないシチュエーションで、言われてみれば『なるほど!』って感じでした。

 もう一つが加瀬さんが山田の部屋に行くシーン。同性同士だと親が帰ってきても友達って言えばすむから便利だよなぁ・・・なんて考えてました。
大好きな彼女が自宅にいる初々しさもうまく表現されていた。
©2018 高嶋ひろみ・新書館/「あさがおと加瀬さん。」製作委員会

 とはいえ、結局は同性カップルと同じ悩みや、展開だったりするんですよね。そこがまた良かったりするのですが。

 でも加瀬さんが山田を押し倒すところとか『え、ここまで踏み込むの?』ってちょっとドキドキしましたけどね。

最後に:百合アニメという概念を壊してくれた作品


 ラストはどうなるのかなぁ・・・って思ったけど、個人的にはすごくいい印象でした。

 とはいえ、山田が『やっぱり私も東京の大学にいく!』って宣言するだけと思ったら、まさか飛び込むとは思ってなくてビックリしましたけど。

 やっぱり若さは勢いですよね。冷静に利害関係を調整するのもいいけどね。でも重要な決断は勢いがないとできませんよ(笑)
有り余るほどの勢いがないと決断は難しい
©2018 高嶋ひろみ・新書館/「あさがおと加瀬さん。」製作委員会

 奇しくも同時期に百合アニメと言われた『リズと青い鳥』と公開が重なった本作。随所に花をモチーフにしているなど共通点も多い作品ですが、なんだか時代的な面白さを感じます。

 『リズ』とちがって『加瀬さん』は男性向けの『ザ・百合』って作品なのかなぁ・・・なんて予告で思ってしまいましたが(笑)いい意味で裏切られました

 大げさかもしれませんが、どちらの作品も『百合アニメ』という概念を壊して一段上のレベルに再構築したような気がします。

 本作は素晴らしく爽やかな青春アニメ、性別問わず恋愛っていいなと感じさせてくれる作品でした。

アニメ『あさがおと加瀬さん。』公式サイト
http://asagao-anime.com

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1 件のコメント:

  1. Hidebow-Rainbo-Frawbow2018年6月20日 13:10

    katoさん、こんにちは!先日のお返事ありがとうございました。


    『加瀬さんとあさがお』にもコメントさせてください。

    朝一回目の上映で見るにはふさわしい、爽やかで、純粋(ピュア)さがステキな映画です。お互いが好きでたまらない気持ちを上手く、描いていましたね。

    最初は、山田→加瀬さんの片想いのストーリーなのかなと思いました。(今期放送中の『3D彼女 リアルガール』のなかでも、園芸部の女子が、主人公に片想いする描写ありましたので...)

    katoさんが、おっしゃていた「最初のキスシーン」は、私もいいなぁと感じました。中高生時代って、女子は(人気のある)カッコイイ女子が好きでたならなかったり、いつも女子同士で手をつなぐほど、仲が良かったり、していたような記憶がありますよ。青春はそんな時間のなかを流れているのもなのかもしれません。(私はそういう事には、違和感を持ちませんでした。まあ、私が宝塚歌劇団と少女誌漫画に夢中になっていた時期とかさなるのも理由のひとつでしょう)


    生々しさ、いやらしさよりも、純粋さを描くことで、恋の喜びを表現していたのは、いいですね。katoさんの意見と同感です。


    私が好きな場面は、仲直りした「修学旅行の海岸で二人で戯れるところ」。そしてラスト近くの「新幹線のホームで加瀬さんに思いをぶつける山田の姿」、私の聴きなれた曲(明日への扉)のイントロと重なって、ジーンときました。


    物語を追うよりも、目のまえの一場面一場面をしっかりと自分の心に焼きつけていく映画だったですね。


    それから、『リズと青い鳥』の話題があがったいたので、一言いわせてもらいます
    『加瀬さんとあさがお』を見終った時の感覚は、『リズと青い鳥』の時と同じでした。どちらも、真剣勝負、一期一会のつもりで鑑賞に臨みました(大袈裟で、すみません)。どちらも中途半端な気持ちで見てしまうと、こころの中で、ぐだクダと悩んで、長引きそうな気がしたからです。

    『リズと青い鳥』は、『ユーフォニアム』シリーズの新たな展開を迎えるために、避けては通れないエピソードだと思います。しかし、本流のストーリーよりも、繊細で、細心な題材を描いているので、アプローチの方法を変化させて、本編のオリジナルスタッフに代わり、『聲の形』のスタッフが手掛けているのでしょうね。

    『リズと青い鳥』は、心理劇だと私は思います。心の隅々をズキズキと針で突かれるような痛み、何とも表現できない心の中の気持ち悪さなど感じながらの鑑賞でした。それでも、私は目の前で起こる一場面一場面の出来事ひとつ一つに淡々と集中しました。『加瀬さんとあさがお』同様に、物語を無理に追うことをやめました。

    『ユーフォニアム』本編では、語られない事実が登場して、みぞれ→希美の一方的な依存関係ではなかったんだとわかりました。(同時に私自身の思い込みがあったことをも...)そして、みぞれが希美以外の人に関心を寄せ始める、心の変化と行動には、ハッとしました。

    新しい楽曲に取り組むことと、みぞれと希美とがお互いに向き合うことが、重なり合わせてあって、ふたりの関係が新たな方向に向かって行きそうな余韻を残しました。時間はまだまだ掛かりそうですが。

    『加瀬さんとあさがお』『リズと青い鳥』どちらも、見終った後、パンフレットの
    インタビューを読みました。どちらの監督さんも、「女の子たちの日常をドキュメンタリーのように描いた」と仰ってました。これもまたアニメのアプローチの一つなのかなと思います。


    いつも、長々とごめんなさいね。それでは、また。ありがとうございました。

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