以前書いた『アニメブログの画像引用で違法と言われない著作権法のポイント』という記事に次のようなコメントを頂きました。ありがとうございます。
『huluやnetflixで配信されている有料コンテンツも、youtubeと同じようにスクリーンショットをとって貼っていいのでしょうか?』匿名 2016年2月28日
私も同じく有料配信のアニメサイト『Dアニメストア』に加入しています。このブログでも一部Dアニメストアからのスクリーンショット画像を引用に利用しています。もちろんYouTubeからも利用しています。
私はどういう理屈で引用しているのか?一言コメントで説明するのは無理があるので独立した投稿にしてみました。
ネット配信動画の権利の関係 |
私は弁護士ではありませんので、直接可否をアドバイスすることはできませんが、実際に画像引用を利用している当事者として、自分がどういう認識で利用しているかを説明したいと思います。よろしければ参考にしてください。
この記事は下記の記事を読んだことを前提に書いていますので、未見の方はこちらを先に読んでいただければと思います。
『アニメブログの画像引用で違法と言われない著作権法のポイント』- アニメとスピーカーと‥【注意】本稿は文科省審議会などの議論を参考にしていますが、未だ未確定な部分も多く個人の解釈も含まれます。あくまで私の場合の事例で一般的になんら推奨・保証するものではありませんのでご注意ください。
【目次】
・何が問題になるのか?3つの疑問点
・疑問1:有料か無料かで画像引用に違いはあるか?
・動画配信では利用規約が問題に・・・
・引用のためにスクリーンショットが使える理由
・疑問2:引用のためのスクリーンショットは『禁止された複製』にあたるか?
・引用のためのスクリーンショットが禁止されない理由
・契約は著作権法に優越するか(オーバーライド問題)
・疑問3:退会した後も引用が続けられるか?
・結論は
・最後に
何が問題になるのか?3つの疑問点
本当は前回のように結論を3行でまとめたいところなのですが・・・今回は誤解を招く恐れもあるので結論は最後です。はじめに『何が問題になるのか?』という点を説明します。
その上で次の3点が問題になると思います。
1 有料か無料かで画像引用に違いはある?※当然ながら前記事の『引用の基準を満たしている』『違法な手段で撮影しない』を満たしている事が前提です。
2 引用のためのスクリーンショット撮影は利用規約違反?
3 退会後も引用が続けられる?
1.有料か無料かで画像引用に違いはあるか?
著作権法上の『引用』では、引用される著作物(この場合アニメ動画)が有料か無料かを区別していません。
文章の引用においては、有料の書籍等から引用するのは当然ですし、美術の著作物でも同じです。(ただし単独で鑑賞できないような配慮は必要ですが)
※具体的な画像引用の注意はこちらに詳細(更新済)
ちなみに119条に『有償著作物』という言葉がありますが、これは違法ダウンロードの問題ですから引用とは関係ありません。
著作権者との関係では有料・無料は問題にならない |
著作権者との関係においては有料か無料かの違いはありません。ですから著作権法上は有料配信であっても合法的な画像引用はできると考えます。しかし配信会社との関係はまた別の話・・・。
動画配信では利用規約が問題に・・・
今回の場合は、著作権者と視聴者の間に『配信会社』が入ります。TV放送局や出版社と違うのは、視聴にあたって利用規約という契約に同意していることですね。
これは、有料でも無料でも基本的に変わりません。YouTubeなど無料会員の配信であっても利用規約に同意しているわけです。
配信会社との関係では、利用規約が問題になる |
【参考】Dアニメストア利用規約 (6条 対象コンテンツの使用条件)
『画像引用のためにスクリーンショットを撮影する事』は利用規約に違反しないか?という点が問題になります。違反であれば契約解除になるかもしれません。
引用のためにスクリーンショットが使える理由
そもそも引用のためにスクリーンショットを撮るという行為はどんな根拠で認められているのでしょうか?引用の条文と私的複製の条文を見比べてみます。
32条(引用)
公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
30条 (私的複製)
著作権の目的となつている著作物(中略)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(中略)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。
改めて引用の条文をみると『複製』の文言がありませんよね。『引用して利用』となっています。これは同じような例外規定である『30条(私的複製)』などと比べても、より包括的な表現になっているといえますよね。
複製に比べて利用の文言はより包括的な表現となっている |
『引用して利用』には、引用を実現するため一時的な複製(撮影)も当然含まれている事は明らかで、スクリーンショットの撮影もその一部と言えます。
※ちなみにこの場合の『スクリーンショット』は、標準の機能で撮影出来るスクリーンショットのことです。DVDやブルーレイのような技術的保護がされているものは除きます。技術的保護を回避する行為は著作権法30条1項2(私的複製の例外)に違反する可能性があります。
2-1.引用のためのスクリーンショットは『禁止された複製』にあたるか?
それでは引用目的のスクリーンショットは規約で禁止されているのでしょうか?例として私の契約しているDアニメストアの利用規約を見てみます。
6条 1項 ドコモは、本規約等の規定に従って対象コンテンツを使用していただくという条件において、対象コンテンツの日本国内における非独占的かつ譲渡不能の使用権を、お客さまに対して有償で許諾します。 - Dアニメストア利用規約
この条項は一般的なソフトウェアの使用許諾と同じですね。これ自体に引用やスクリーンショットを制限する要素は見出しにくいと思います。
6条 6項 お客さまは、対象コンテンツの使用にあたり、次の各号に定める事項を遵守するものとします。
1 お客さまは、第1項に記載した範囲を超えて対象コンテンツを利用または使用してはなりません。
2 お客さまは、対象コンテンツの全部または一部を複製、改変、改ざんし、または逆コンパイル、逆アセンブル、リバースエンジニアリング、その他内容を解析して、人間が読み取り可能な形に変換することを行ってはなりません。
スクリーンショットを禁止する可能性があるのはこの条項だと思います。6-6-2で『対象コンテンツの全部または一部を複製』という部分ですね。この文言によって引用目的のスクリーンショットも禁止されているのでしょうか?
2-1.引用のためのスクリーンショットが禁止されない理由
私は引用のためのスクリーンショットの撮影は、この利用規約に違反していないと考えています。その理由は次の2点です。
- 規約の趣旨はダビンク行為の禁止だから
この条文の趣旨は『違法なダビング行為の防止』であることは明らかです。著作権法30条1項2(私的複製の例外)で違法化されたとはいえ、民事上でも禁止するための条文です。
それは、その後に続く条文をみても、また6条全体の位置付けとしても、クラッキング等による動画の複製行為を想定していると読むのが自然です。1項にある通常の『使用権』を逸脱した行為を列挙しているわけですね。
適法な引用は、個人の著作物の利用方法としてごく一般的なものであり、通常の『使用権』を逸脱した行為と同列に考えるのは無理があります。
- 規約の『複製』には引用での利用が含まれないから
もう一つの理由は『複製』の定義です。規約の文言にある『複製』というのは、著作権法にある私的複製などの行為を指しているのであって、『引用として利用』はそもそも含まれないからです。
先ほどの章でも説明しましたが、著作権法31条の引用規定には『複製』という文言があえて使われていません。
著作権法では複製と利用が分けて書かれている |
著作権法の例外規定(権利制限)はたくさん列挙されているのですが、『複製できる』と明記されているものと、それ以外が分けて書かれています。(※)
※(参考)文化庁:著作物が自由に使える場合 一覧
それに準じて規約を読むと、禁止されているのはあくまで著作権法上の『複製』行為であって『引用として利用』は禁止されていないと読むのが理にかなっています。
以上の理由から、Dアニメストアの利用規約では引用のためのスクリーンショット(もしくは撮影)は禁止されていないと解釈します。
でも、もし万が一、配信業者側から『規約で引用のためでも禁止しています』と主張されたらどうでしょうか?この論だとスクリーンショットだけでなく画面撮影も禁止になってしまいそうです・・・。
著作権法上は合法である引用を、個別契約で制限する事はできるのでしょうか?
契約は著作権法に優越するか(オーバーライド問題)
もしも配信業者が『引用での利用』自体を明確に禁止した場合はどうなるのでしょうか。利用者が同意したのだから有効なのでしょうか?
『著作権法上の引用』という権利を『個別の契約』で制限できるのか・・・法律用語では強行規定・任意規定などといわれますが、オーバーライド(無効にする)問題と呼ばれる議論になるようです。
著作権法の引用を個別の契約で禁止できるのか? |
日本では契約自由の原則があり、法律で規定があっても強行規定でなければ契約が優先されることになっています。しかし強行規定かどうかは明確ではありません。
著作権法は強行規定なのか。私の知るところでは、少なくとも著作権法32条の引用については、白黒はっきりした見解はないようです。しかし文部科学省の文化審議会で参考になる議論があります。
要約すると・・・引用の規定は個別契約で制限できる。しかし、その制限は公益性の観点から考えて限定的である・・・ということです。
『例えば、第32条の引用や第42条の裁判手続き等における複製の規定についても、これらをオーバーライドするあらゆる契約が一切無効であるとまでは言えず、この意味で強行規定ではないと考えられる。ただし、各権利制限規定が設けられている根拠には必要性や公益性という点で濃淡があり、これらは公益性の観点からの要請が大きいことから、オーバーライドする契約が有効と認められるケースは限定的であると考えられる。』
H19年 文化審議会著作権分科会報告書 第1章 第3節より一部抜粋
つまり必要性や公益性を覆すような、よほどの事情がなければ引用を制限する契約は認められないだろう・・・という事ですね。
例えば映画館でのビデオ撮影は、多大で回復不能な損害が想定されたため『映画盗撮防止法』で30条私的利用の例外とされました。これに類するような止むを得ない事情があれば契約で制限することもできるという事だと思います。
しかし、今回のスクリーンショットの場合『適法な引用』であれば、配信会社が被る経済的損失は無いに等しく、他の客に迷惑をかける恐れもありませんので、公益性を覆すほどの理由になるはずがありませんよね。
もちろん、行政の審議会ですので司法判断には直接影響は与えませんが、考え方として大いに参考になると思います。
3.退会した後も引用が続けられるか?
最後の疑問点として、引用がOKだったとして、有料配信を退会したらどうなるのか?という点について考えます。
引用はあくまで著作権者との関係の問題ですから、スクリーンショットを撮影するという点がクリアされれば、配信業者との問題はないと考えるのが自然ですよね。
もしも、『引用する間はずっとお金を支払い続けなければならない』とすると、事実上の引用の制限になるわけで、さきほどのオーバーライド問題と同じになります。
また、レンタルCDは音楽用CD-Rを使って合法的に私的複製できますが、レンタル終了後に聴いても問題にされていない現状を考えると、より公益性が高く権利者の損害も少ない引用が問題になる可能性は低いと考えています。
結論は
以上が私の解釈です。この考えに基づいて当ブログでも画像引用しています。結論をまとめると次の通りです。(他社の契約はそれぞれでご検討ください)
【有料配信のアニメでも画像引用できるか?】
- 有料無料に関係なく、引用で著作権者の権利は侵害されない
- 利用規約(Dアニメストア)の複製禁止規定は引用を制限していない。
- よって引用のためのスクリーンショットは問題ない。
さらに言えば、仮に利用規約で明確に禁止したとしても、特別な事情があるとはいえないので十分争えるはず・・・という事ですね。(争いたくはありませんが)
まあ現実には、配信会社には訴えたくなる経済的損失がほぼないですからね。映画盗撮のように著作権者も映画館も多大な損失を被る場合はともかく、合法な範囲の画像引用では、宣伝効果こそあれ禁止するメリットがほとんどありません。
最後に
そんなに言うなら『直接配信会社に聞いて白黒はっきりすれば?』って言われそうですが・・・そこはわざわざ面倒な話にしなくても(笑)そもそもこれを説明するのが大変ですしね。問題があるという事でしたら是非直接ご連絡いただければと思います。
ちなみに、引用とは言えない無断転載サイトの類は上記の主張は一切できません。配信会社も経済的損失があり本気で訴えてくるかもしれませんね。そのようなサイトは、決して有料コンテンツからのスクショは利用しない事をお勧めします(笑)
今後も『Dアニメストア』のように安くて高クオリティーのアニメを配信してくれる事業者からは、感謝の念をもって引用させて頂こうと思っています。もし引用を禁止するような事業者があれば、やはりそういう配信業者には加入したくないですよね。
【ご注意】以上は私の環境での解釈です。他社利用などそれぞれの環境で違いますので参考にする場合はくれぐれもご注意ください。問題点があればお気軽にコメントいただければ幸いです♪
※なお、YouTubeの利用規約もほぼ同じ解釈で利用しています。さらに言えば、YouTubeは『時事の事件の報道のための利用(著作権法 第41条)』を容認していると思われるので、当然『引用』も容認されると考えています。
参考:
Dアニメストア 利用規約(6条)
YouTube 利用規約 (4条・5条)
H19年 文化審議会著作権分科会報告書 第1章 第3節
『アニメブログの画像引用で違法と言われない著作権法のポイント』- アニメとスピーカーと‥
こんばんは!今度はアフェリエイトの画像使い方を記事にしていただけませんか?
返信削除コメントありがとうございます!
削除アフェリエイトサイトの記事でも引用など著作権法の考え方は基本的に同じですね。具体的に疑問点などあれば教えていただけると嬉しいです。記事にできるかどうかは私の興味関心もあるので保証はできませんが(笑)
こんにちは!
返信削除とても参考になる記事でいつも拝見しています。
私は映画感想アフィリエイトブログを運営しています。
開設して間もないのですが、引用の点でアドバイス頂きたいと思っています。
私は
主にビデオオンデマンド(U-NEXT、Huluなど)の登録から収益を得ようとしているブログなのですが、映画のワンシーンを挟みつつ自分の感想を書いています。
【悩み】
1、映画のワンシーンのスクショはそもそも引用になるのか?
(色々記事を拝見すると、引用にあたると思うのですが…)
2、映画のワンシーンのスクショの引用元はどこになるのか?
公式サイトでアップされている【予告編】や【特報】からスクショの場合は
引用元が【公式サイト】でだいえかと思うのですが、インターネットに上がっていないワンシーンを引用として使いたい場合、
引用元はどこに指定するのが妥当なのでしょうか?
3、アイキャッチ、サムネイル画像で映画ワンシーンのスクショを使う場合、著作権者と引用元は記入しないとNG?
私はサムネイル画像に映画のワンシーンを使っています。
その場合サムネイル画像を何とか加工して著作権者と引用元を記入した方がいいでしょうか?
以上がアドバイス頂きたい内容です。
あくまでアドバイスという観点で大丈夫です(。・ω・。)
ご教授頂けると助かります!
悩みながら運営しているサイトです。
https://dore-dore-vod.com/
コメントありがとうございます。ブログも拝見しました。読みやすいサイトですね!アドバイスというより私の解釈ですがご参考にどうぞ。
削除1、映画のワンシーンのスクショはそもそも引用になるのか?
引用の要件を満たしていれば引用になります。一部のブログで『肖像権やパブリシティ権の侵害行為』になると書かれているものがありますが全くの誤解です。肖像権やパブリシティ権の意味を理解していれば引用の妨げにならないことは自明です。引用の要件を満たしている限りパブリシティ権を侵害することは理屈上ありえません。
2、映画のワンシーンのスクショの引用元はどこになるのか?
著作権者(権利者)です。公式サイト・予告編などで(C)表示のある部分です。また法律の文言にある通り『映画のタイトル』で代用する事もできます。下記記事の『権利者の表示』部を参考にしてください。
『アニメブログの画像引用で違法と言われない著作権法のポイント』
https://kato19.blogspot.com/2015/05/cyosakukenanime.html
3、アイキャッチ、サムネイル画像で映画ワンシーンのスクショを使う場合、著作権者と引用元は記入しないとNG?
現在の裁判例では、表示する仕組みが直接リンクになっている場合は公衆送信にあたりません。そのため引用でなくても公衆送信権の侵害にならないと解釈できます。
そのため、自動作成されるサムネイルが感想本文の画像の直接リンク表示の場合は、引用でなくても問題ないと解釈しています。詳しくは下記記事をご覧ください。
ただしトリミングされる場合は自動であっても著作者人格権を侵害する可能性があるという判断が最近出ました。その点はご留意ください。
『埋め込み動画は著作権法違反?引用画像の『Twitterカード』や『サムネイル』表示は合法?直リン不法行為問題まで考えてみた。』
https://kato19.blogspot.com/2017/06/umekomi-douga-cyosakuken.html
とても分かりやすい内容、解説ありがとうございます。しかもサイトまでお褒め頂き嬉しいです。
削除今回コメントさせて頂いた理由が、あるASPからサイト登録を削除されてしまいまして・・・。
©︎の表記はあくまで著作権保持者を表しているだけなので、引用元を載せてくださいとの事だったのです。
となると、©︎以外に引用元を載せるとなるといったいどこなんだと・・・。
見解としては
©︎・・・・・・・・・ 引用元:【映画のタイトル】より
のように入れておくといいのかなと判断しました。
的確なアドバイスありがとうございます!
本当に助かりました!
ブログ応援しています!
そういうご趣旨だったのですね。おっしゃる通りでいいと思います。それでダメなら配信元を記載ですかね。いずれにせよ法律上は問題と、ASP担当者の納得は別問題ですので意向に沿うようにするしかないですね。こちらこそ読んでいただきありがとうございます。
削除コメントありがとうございます。
返信削除今忙しいので後ほどご返信いたします。数日お待ちください。
わざわざお返事ありがとうございます。
削除お待ちしておりますq
別コメに返信つけましたので、こちらのスレッドは後ほど消去させていただきます。
削除こんばんは!別コメにご返信頂けたとの事ですが、どこの記事にあるでしょうか?
削除どこを見ればいいのか分かりませんでした。ご確認よろしくお願い致します。
申し訳ありません。上の欄で返事頂けていましたね。ありがとうございます!
削除とてもわかりやすいきじありがとうございます。
返信削除今回は画像いんようがてーまでしたが、これが一部動画の引用になるとどうなるとお考えですか?
コメントありがとうございます。この記事以外に『アニメブログの画像引用で違法と言われない著作権法のポイント』の記事も読んでいただけたことを前提に書かせていただきます。もし未読の場合はご一読ください。
削除ご質問の件ですが『動画の引用』であっても成立します。最近の裁判例でも動画(映画)で引用が成立することを前提とした判決がありました。映画にTV映像を引用した事例です。(『『沖縄 うりずんの雨』事件』知財高判平成30年8月23日 平成30年(ネ)第10023号)
この事例では『出所の明示』がされていなかったので引用が認められませんでしたが、動画の引用自体は否定していません。Webページにおける動画の引用も同様に考えることができると思います。
このように引用はできますが、出所(権利者)の表示、明瞭区分性などの点は、文章や画像とは違うので工夫が必要かもしれません。もちろん主従関係や必要性などの他の要素も重要です。
引用先の動画を見せることが『主』になってしまうと引用とは言えなくなります。あくまでご自身の作った作品(著作物)が主で、そのために必要な引用でなければなりません。この辺りは権利者も画像や文章以上に厳しく対応する可能性がありますので、慎重に行うことをお勧めいたします。
(参考)イノベンティア・リーガル・アップデート 裁判例情報
https://innoventier.com/archives/2018/09/7129
アニメブログの画像引用の件で参考にさせていただいております。
返信削除dアニメストアの画像を一部引用されているとのことですが、dアニメストアの右下のロゴはそのままブログ等に掲載しても問題ないのでしょうか??
katoさんが普段ブログにアニメ画像を掲載している流れを教えていただきたくコメントさせていただきました。
長文すみませんm(._.)m
コメントありがとうございます。
削除私も下記のページなどでdアニメストアのロゴ入りで画像引用をしています。ロゴ入りの画像引用をしている根拠をご説明します。
https://kato19.blogspot.com/2015/12/suzumiya-haruhi-yuutsu.html
『2015年に『涼宮ハルヒの憂鬱』を初めて見た感想:まさかここまで面白いとは!』
※以下はあくまでブログ本文の解釈にあるように規約違反などはないという事を前提の上での話になります。あくまで私の解釈です。
根拠としては
・企業名のロゴマークは原則的に著作物ではないと判断されている。(注1)
・企業ロゴマークは商標権によって保護することができる。
・商標権は同業者への制約なので画像引用では基本的に侵害とならない。
・よってロゴを付けたまま掲載しても法律上は問題ない。(注2)
(注1)企業ロゴの著作物性については『Asahiロゴマーク事件』などで検索してください。(注2)企業ロゴの掲載が権利侵害とならないことを前提とすれば、それを消すことはむしろ現著作物(アニメ)の同一性を侵害する可能性があります。
またアニメ批評の場合、dアニメストアとしても法律的な問題は別として『ロゴを消される事によるメリット』はないと考えられます。現実問題としてもdアニメストアが問題にする可能性は低いと考えます。
私の解釈は以上となります。あくまでご参考として自己責任でお願いいたします。
katoさん迅速なお返事ありがとうございます。
返信削除調べてもなかなか出てこなかったので、丁寧な説明で非常に助かりましたm(._.)m
アニメのレビューを記事にする際には参考にさせていただきます!
初めまして。コメント失礼します。
返信削除アニメ関連のブログ、動画投稿を始めようと思い準備段階として著作権について調べていた時に本ブログを見て大変勉強になっています。
今回、疑問点があった為質問させて頂きました。
やりたいことは、今季アニメの個人的ランキング等で、その際にアニメのキービジュアルや公式サイトのWEBページのスクショの使用したいと思っています。
アフィリエイト、アドセンスも付ける予定です。
疑問に思っていることは下記の点です。
・アニメ○トで運営されているまとめサイトのようなサイトで秋アニメ一覧といった記事を見ました。
こちらのサイトにはアニメのキービジュアルを使用していました。
私の認識だと引用にあたるのかなと思い、引用元の表記を探したのですが見当たりませんでした。
引用で引用元を記載しないのは著作権の問題的に大丈夫なのでしょうか?
・YouTubeでも同様にアニメの紹介動画を探して見たのですが、とある方の動画のアニメの紹介でキービジュアルを使用していました。
概要欄にも動画のシーンにも引用元の記載は無いようでした。動画投稿とブログだと認識が違ってくるのでしょうか?
・1つ目の質問と被ってしまうのですが、キービジュアルではなくWEBサイトのスクリーンショットなどを使用することに関しては著作権に抵触するのかも合わせて伺いたいです。
WEB制作会社などで実績としてスクリーンショットが公開されていましすが、個人的には著作権違反に当たるのではないか?黙認なのか?と思っています。
素人目線で文章がうまくまとまっておらず恐縮ですが、ご教示頂けると幸いです。
コメントありがとうございます。ご質問の3点について私の解釈を書きました。最終的にはご自身の判断となりますのでご注意ください。
削除最初に文言の定義について確認します。本文とも重複しますが誤解を防ぐためですのでご了承ください。
・『出所の明示』について
コメントには『引用元を記載』とありますが、著作権法上は『出所の明示』となります。具体的には『著作権者』やそれに準ずる表示(作品タイトルなど)とされています。その画像がどこにあったか?という意味ではありません。論文などで慣例的に行われている引用とは若干ニュアンスが変わります。
・『アニメイト 秋アニメ一覧』について
事例は下記のページで良かったでしょうか?これなら引用の要件を満たしているように思います。
https://www.animatetimes.com/tag/details.php?id=5947
画像のすぐそばではありませんが本文中に(C)で始まる著作権表示があります。これは公式に著作権者として公表しているもので、多くは権利者の集合体である製作委員会の名称となります。ですから形式的には引用の要件を満たしているように見えます。
ただしアニメイトはアニメ業界に深いかかわりのある企業ですので、あらかじめ各権利者と包括的な利用契約をしている可能性もあります。雑誌などでは良くある方式だと聞きます。その場合でも契約に権利者表示の義務がある場合は一見すると引用との違いはわかりません。ですからこのページが引用なのか契約による許諾なのかは不明です。いずれにせよ特に問題はないように見えます。
・動画のキービジュアルについて
動画であっても基本的に上記と同じです。引用の場合『出所の明示』は必要です。ただし『権利者の表示』でなくても『作品タイトル』なら『出所の明示』と認められる可能性があります。ですから一概に引用を満たさないとは言い切れません。なお動画における表示方法は必ずしも決まった形式があるわけではありません。口頭でも明瞭であれば認められる可能性があると考えます。
なお個人運営の場合は個別に許諾を受けることはほぼ不可能ですので契約による許諾はないと考えるのが自然です。
・WEBサイトのスクリーンショットについて
引用をする場合はキービジュアルと同じです。ただ事例では『WEB制作会社などで実績として』とあります。そのアニメのWebページを制作した会社でしたら、さすがに製作委員会からの許諾は受けていると思います。仕事上の取引相手ですので許諾は受けやすいですし、そもそも業務実績の紹介では著作権法上の『引用』にはなりにくいです。ですからそのWeb制作会社は引用でなく許諾を受けている可能性が高いのではないでしょうか。
以上となります。制作にあたり法的な面を検討されるのは素晴らしいと思います。この分野は明確に判例があるものばかりではありません。私の解釈も多いのではご参考までにしていただければ幸いです。それでは頑張ってください。
こんにちは。
返信削除私はアニメについてまとめたブログ「れんあに」を作成している「れん」ともうします。
初めてのブログ作成ということもあり、画像の著作権について不安でした。
そこで、コチラのサイトを拝見させていただき、とても勉強になりました!
ありがとうございます!
ただ、2点ほど分からないことがありましたので、もし教えていただけますと助かります…。
※本当は「アニメブログの画像引用で違法と言われない著作権法のポイント」で質問したかったのですが、なぜか投稿できなかったため、関連内容のコチラに投稿させていただきます。申し訳ございません。
①画像の引用について
アニメの公式HPをパソコンで開き、HP上に使用されている画像を右クリックし、直接「画像を名前を付けて保存」などでダウンロードした画像を引用として使用することは可能でしょうか。
私の認識では、公式が公表している情報(画像)であり、引用条件でもある著作権の明記と、引用元のURLを付けることで問題ないと思っております。
ただ、HP内には複数の画像が重なっている場合もあるため、直接のダウンロードは一部の画像を使用しているという解釈にもなり、トリミングと同じ行為をしているのではと考えました。
私のブログでは来季のアニメ内容をまとめたいため、公式HPからの情報だけが頼りなのですが、まともな画像は「キービジュアル」ぐらいしかないので、サイトに埋め込まれているキャラクターの画像やシーンの画像を使いたいと思っております。
②著作権表示について
画像ごとに表記するのではなく、1つの記事の冒頭と最後に「本記事の画像は以下の公式HPより引用しています」という枠を入れて対応したいと思いますが、問題ないと思われるでしょうか。
以上です。
いきなりの質問で申し訳ございませんが、ご教授いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
コメントありがとうございます。
削除投稿ができなかったとのことでご迷惑をおかけいたしました。ご報告いただきありがとうございます。確認してみます。
ご質問の件については参考までに私の考えをご回答いたします。私の理解の範囲ですので、最終的にはご自分のご判断でよろしくお願いいたします。
(1)
1-1 ダウンロード画像の引用について
引用の基準を満たした利用であれば問題ないと考えます。
1-2 画像のトリミングについて
トリミングなどの『改変』は同一性保持権を侵害する可能性があります(著作権法第20条1項)。しかし『やむを得ないと認められる改変』(同条 2項4号)は認められます。具体的に認められる範囲については裁判例で『同条2項1号・2号の場合と同程度』の理由とされていますが曖昧ですね。
個人的には『引用の必要性からトリミングした方が適切である場合で、かつ著作権者の意に反さない範囲』と考えますがいかがでしょうか。
参考)Webで著作権法講義/同一性保持権
http://copyright.watson.jp/identity.shtml
(2)著作権者の表示(出所の明示)の位置について
『出所の明示』の表示位置については、著作物の種類などによる慣行もあり一概にはいえません。引用画像を明らかに特定できるような位置で表示することが望ましいことは当然かと思います。冒頭と最後に記載することは直ちに問題だとは思いませんが、問題点があるとすれば下記の通りです。
・画像が複数ある場合に特定しにくい。
・長い記事の場合は同一ページでも表示が離れてしまう。
・以上の理由で表示が曖昧になってしまう恐れがある。
Web記事の場合は画像ごとに表示することが多い印象を持っならています。レイアウト的に個別記載が難しい場合でも(C)著作権者名 くらいですとそれほど無理はない気もしますが、その辺は個別のお考えもあるかと思いますので無理にとは言いません。ご参考までに。
早速のご返信ありがとうございます!
削除とても丁寧にアドバイスをいただきまして、勉強になりました。
(1)については、おっしゃる通りの考え方が1番しっくり来ました。なので、画像を使用する際は最小限とし、ダウンロードした画像は編集をせずに使用することで、著作権者の意図した画像のまま使用するようにします。
(2)についても、とても納得のできる内容でした。実際に第三者が画像を見た時に、その画像の引用元や著作権者が不明であれば、出所の明記としての役割が薄いと思いました。健全なブログ運営をしたいため、アドバイスいただいたように、各画像に対してわかりやすい対応をしていきます。
以上、長文失礼しました。
改めまして、丁寧なご対応ありがとうございます!
自分の考え方まで改めれる良い機会にもなりました。
読みやすい記事をありがとうございます。
返信削除伺いたいのですが、映画やドラマの字幕付きスクリーンショットが、名言だ!いい事言ってる!的な文脈でTwitterに投稿されることは良くあります。
バズっていることも珍しくありません。
Netflixの場合、スマートフォンやテレビではHDCPによりスクリーンショットが許可されていませんが、PCブラウザの再生であればPC本体の機能でスクリーンショットの撮影ができます。
この場合、Twitterでみかける投稿は引用要件を満たすのでしょうか?
意見を聞きせてください。
佐久間さん、コメントありがとうございます。返信遅くなり失礼しました。
削除論点が大きく分けて2つあると考え下記のようにまとめました。個人的な解釈が多いのですが参考までに。付け加える点がございましたらおしらせください。
(1)HDCPと画像引用の関係について
1-1 HDCPとPCブラウザのスクリーンショットの関係について
HDCPはご存知の通り機器間の著作権保護技術です。複製ができないためスクリーンショットがとれません。
HDCPが著作権法30条1項2号(術的保護手段の回避による複製)におけるコピーコントロール技術と同一に扱えるかどうかは議論のあるところです(参考参照)
ただし、これが問題になるのはHDCPを『信号の除去又は改変』によって回避した場合です。法律上・契約上も認められているPCブラウザでの再生においてスクリーンショットを撮ることは対象になりません。
1-2 著作権法30条1項2号と引用
著作権法上の引用が成立するかどうかの要件で、引用される著作物の複製方法が問題とされたことはなかったと思います。よってNetflixのスクリーンショットを利用しているという理由で引用の要件と満たしていないとは言えないと考えます。(ただしNetflixと利用者間の規約の問題については見ていないのでわかりません)
(参考)
https://ja.wikibooks.org/wiki/著作権法第30条
平成22年11月 文化審議会著作権分科会法制問題小委員会
技術的保護手段ワーキングチーム保酷暑(P8より 技術的保護手段)
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku/013/05072901/002-4.htm
(2) Twitterにおける画像引用について
2-1 ツイートで画像引用は成立するか。
ツイートにおいて画像の引用が成立するかという問題は度々議論になります。私はツイートであっても場合によっては引用が認めれると考える立場です。twitterで著作権法上の引用をする場合は、特に主従関係が議論になると思います。記事にも書きましたが『画像を見せることが主になっていないか』というのが一つの判断になるのではないでしょうか。
2-2 ツイートでの利用例での個人的考察
具体的なツイート方法によって下記のように考えることができるのではないでしょうか。
×ネタとして画像を絵文字的に利用する。(おはよう、つかれた、など)
→批評ではなく『必要性』がなく引用が成立しない。
△感想ではあるが『名言だ!いい事 言ってる!』のように短文で、かつ独自の視点や工夫がない単なるコメント。
→感想なので必要性はあるが、分量や意味の主従関係が難しい ツイート自体が独自の著作物とは言えない可能性もある。
○1ツイート内での感想・批評(出所表示も含む)
→短文であってもツイートに独自の著作物性があり、適切な必要性があれば認められる可能性はあると考えます。
◎ツリー形式で連投での感想・批評(出所表示も含む)
→ツリー形式であれば長文の一作品と同一視できると考えます。(本のページのようなイメージ)ブログなどと同じように判断して良いと考えます。
2-3 結論 私の場合
ツイートと引用については参考になる裁判例は少ないのですが、従来の解釈を援用するとツイートでも画像引用自体が認めれれる可能性が十分あると考えて入ります。
私の場合は、アニメ映画を鑑賞した時はポスター画像などを引用してツイートしています。この作品を観たという必要性と、自分自身の感想を1〜3ツイートでまとめます。出所表示は作品タイトルで代えています。
コメント失礼します。
返信削除もしdアニメストアから画像を引用する場合、Ⓒのあとに表記するのは、引用したアニメの著作権者と出版、製作委員会以外にdアニメストアから引用したことがわかるような何かを表記する必要がありますか?
コメントありがとうございます。
削除dアニメストアは著作権者ではなく配信会社なので表記する必要はありません。(もしも配信会社が直接制作している作品があれば例外です)
ただし、Ⓒではなく『配信会社』として記載することは特に問題ありません。また画像ないのdアニメのロゴなどを消す行為は改変になる恐れがあるので注意が必要です。
初めまして、ブログでアニメ聖地巡礼の記事を扱っているため、『アニメブログの画像引用で違法と言われない著作権法のポイント』とこちらの記事がとても勉強になりました。ありがとうございます。
返信削除色々と不安があり、まだ公式YouTubeのスクショしか使用していないのですが、可能であれば作中のスクショを使いたいと考えています。
そこで質問なのですが『Amazonプライム』は、Google Chromeだとスクショしても真っ黒になるのですが、『Firefox』だとスクショが可能です。
この場合は『Firefox』でスクショした画像をブログに引用で使用しても問題ないのでしょうか?
コメントありがとうございます。
削除基本的には記事本文に則った説明になるのですが、論点となるのはChromeではスクショが撮れないのに、Firefoxだと撮れる場合に問題にならないかということですね。
詳しい規約の理解は省略して結論のみ申し上げますと、下記ページ『Prime Videoシステム要件』の対応ブラウザにFirefoxが明記されています。これはAmazonが『Amazon Prime Video使用規則』においてリンクした『対応デバイス』に含まれるページですので規則上もFirefoxの利用は認められていることになります。
また、標準機能を利用したのみですので『技術的保護を回避』したことにもならないと考えるのが自然です。よって引用のためのスクショ撮影に特段の問題はないと考えるのが私の解釈です。ご参考になれば幸いです。
『Prime Videoシステム要件』
https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=GUVGB3QMQRYRERYW
『Amazon Prime Video使用規則』
https://www.primevideo.com/help?nodeId=202095500
返信ありがとうございます。
削除ご丁寧に教えて頂きとても勉強になりました。
『Prime Videoシステム要件』と『Amazon Prime Video使用規則』のリンクもありがとうございました。
対応ブラウザにしっかり『Firefox』が明記されていますね。
突然の質問に丁寧に答えて頂き本当にありがとうございました。