2015年9月20日日曜日

乱歩奇譚 Game of Laplace OP/EDの感想、そして男の娘とamazarashiと白石慶子さんについて

 乱歩奇譚 Game of Laplace。かなり遅れて見始めましたが、いやぁ、いいですね。深夜アニメらしくかなりグロテスクな表現もありますが、江戸川乱歩の作品をモチーフにしているんですから、こうでなくっちゃいけませんね。オープニングを中心にしたレビュー男の娘についての考察です。

『乱歩奇譚 Game of Laplace』ロングPV
© 乱歩奇譚倶楽部/ノイタミナ公式配信

男の娘という発明、その一つの到達点


 しかし、驚いたのは準主役級のヒロイン?が男の娘(おとこのこ)の設定だった事。原作では明智探偵の一番弟子である小林少年が『男の娘』とはね〜。でも『男の娘』っていうキャラも随分定着してきたんですかね?いままではキワモノキャラに使われるイメージでしたけど、ここまで堂々と使われるとビックリします。

 しかも今回は数ある『男の娘』キャラのなかでも抜群のかわいらしさ!(※個人の感想です)ジェンダー的な強調も少なく自然で天然なのが特徴的ですね。かわいいのにサイコパスっぽいのも面白い。純粋な眼差しの奥に狂気を感じます。

キワモノ的でないごく自然な可愛らしさのコバヤシ
アニメならではの表現手法として確立された『男の娘』設定
© 乱歩奇譚倶楽部/ロングPVより

 それにしても男の娘っていうのは面白い発明ですよね。本作の場合、小林少年を男子にしても女子にしても凡庸な設定になる事は避け難いです。しかも本作のコバヤシ君には独特のサイコパス感が与えられており、それが天然の男の娘キャラと相まって非常に面白い効果になってます。

 これは普通の男子/女子キャラでは出しにくい効果。そしてこの不思議な感じが、江戸川乱歩の作品にみられるエロティックさ倒錯的な雰囲気を、違和感なく醸し出しているんですよね。コバヤシ君の純真すぎる眼差しが、逆に倒錯的な雰囲気を強める。妙な話ですが、これこそ男の娘設定でなければ表現できない手法だと思いました。

濁りの無い純真な眼差し
サイコパスな言動は彼に何かの欠落を暗示している
© 乱歩奇譚倶楽部/ロングPVより

 話を重ねると男の娘であるコバヤシ君をごく自然な存在として受け入れてしまう不思議。本作は単に流行としての男の娘キャラの採用ではなく、男の娘設定という発明あってこその作品、さらに言えば日本アニメ史における男の娘設定の一つの到達点といっても過言ではないと思います。

大胆なオープニング演出


乱歩奇譚オープニングタイトル
© 乱歩奇譚倶楽部/ロングPVより

 もう一つ、今回特筆すべきはオープニングですね。1話でOPを見た瞬間にこれはイイ出来だと引き込まれました。力強い楽曲で、歌詞を大胆に利用したPVのような作りが印象的な作品。本作OPは絶対にちゃんとしたスピーカーヘッドホンで聞きたいですね。TVのスピーカーでは全くの力不足で魅力が半減してしまいます。

冒頭導入部の文字は瞬間的に怪しくブレる
低音のイントロとあわせて一気に雰囲気を作る
© 乱歩奇譚倶楽部/ロングPVより

 導入部、低音を響かせながら、没後50年作品の文字が怪しくブレる効果、そして骸骨がフラッシュの様に入り、タイトルへ至る演出。すごくカッコいいですね。
 そして大胆に大書きされた歌詞が次々と現れて、ほんと楽曲のPVとしてそのまま使えそうな映像。一見すると湘南の風とかの日本語ラップ/レゲエ風に見えますが歌詞はかなり趣が違いますね。

強くエフェクトをかけた実写映像
難解な歌詞をあえて前面に押し出す事で陰鬱な印象を効果的に表現している
© 乱歩奇譚倶楽部/フジテレビ放映映像より

 でも、文字がたくさん映るのでつい忘れてしまいますが・・・じつはスタッフのクレジットが全然出てこないんですよ!最初のクレジットが出るのが、なんとなんと、OPが始まって約27秒後です!いやはやこれは大胆ですが、すごく良い効果ですね。ノンクレジットでたっぷり引っ張りまくってからの『原案 江戸川乱歩』のクレジット・・・これはしびれました!ゾクゾクします。こういうクレジットを積極的に使う演出は大好きです。楽曲と相まって最高にカッコイイです。

開始27秒後の最初のクレジット
不気味で荒々しい映像から黄昏の車窓への鮮やかな転換
© 乱歩奇譚倶楽部/フジテレビ放映映像より

 続く製作/プロデューサークレジットもリズムに気持ちよく乗せる形で、表示タイミングがいい味だしてるんですよね。リズムで身体が自然と動いてしまいます。
 そこからまた歌詞表示でノンクレジットが続き、2度目のサビでようやく制作スタッフの表示。重苦しく緊張感のある映像から一変、不思議な開放感のあるサビ部の映像。これは大胆で面白い作り。グイグイ引っ張られます。OPが一つの作品となるように考えられた演出ですね。

2度目のサビでようやく制作クレジット
重苦しい空気を一気に打ち破る開放感のある映像
© 乱歩奇譚倶楽部/フジテレビ放映映像より

 これは大画面でみたら映えるなと思って80インチスクリーンでみたらやっぱりすごくいいですね。実写をうまく使った映像表現、特に群衆の実写映像を人形に差し替えるような演出、あれすごく好きです。また、本編の展開を微妙に暗示するような映像を入れたり、単にキャラ紹介で終わらない内容。怪しく恐ろしげな雰囲気、そしてスピード感と力強さが両立した、非常に作品性の高いオープニングアニメだと思います。

amazarashiの楽曲『スピードと摩擦』


 そして、なんと言ってもこの楽曲『スピードと摩擦』・・・すごい力強さと気迫と、しかし何とも言えない独特の陰鬱とした感じ。歌詞に『山背(やませ:初夏に吹く北からの冷風)』とかがあるので、もしや東北の太平洋側にゆかりのある人なのかな・・・と思ったらamazarashiの秋田さんて青森県むつ市(下北半島)出身なんですね。寺山修司太宰治に影響を受けていたとあってなるほどなと思いました。

 出だしにベースが怪しげに響き、ヴォーカルのエフェクトが印象的なオリジナルもいいですが、ギター一本のacoustic Version は歌詞の重さがストレートに突き刺さりかなりの衝撃です。



 歌詞は難解で、わかりやすいストーリー性はありませんが、バラバラになっている言葉のもつ印象を、幾重にも塗り重ねて景色を表現しているような手法・・・聴き進めるにつれて心が揺さぶられ、感動に打ち震えてきます。まさに詩ですね。これはすごいな・・・圧倒されました。これなら、曲と歌詞を前面に押し出した作品にしたくなる訳です。

 実は恥ずかしながらamazarashiの存在を知らなかったのですが、最近はアニメがきっかけでアーティストを知る機会が多くって楽しいです。


白石慶子さんってどんな人?


 ところでOP/EDクレジットを見ていて不思議に思った事・・・OPとEDに参加している白石慶子さんという方。本編スタッフには記載がない上に、ED制作では一人だけクレジットされているので、どういう事?と調べてみたらアニメーション作家の方なんですね!

不勉強で存じ上げなかったんですが個人サイトを拝見したらビックリ!なんと、NHKみんなのうた「日々」のアニメーション部分を作った方だったとは。この作品、偶然ですが見ましたよ・・・最後までみると涙がとまらなくなるので困った作品でした(笑)はあ、なるほどこの方だったとは・・・。

NHKみんなのうた「日々」より
最後まで見るとところ構わず必涙なので困ります
©NHK/日音/OORONG-SHA

 TVアニメ暗殺教室のEDも白石さんの制作だったんですね。アニメーション作家というと、一般のTV作品とはあまり関わらないのかなぁなんて思っていました。あのED作品も結構印象深くて、今思えば本編と風合いが違っていて作家性が強い作品でしたね。

暗殺教室 エンディングより
(C)松井優征/集英社・アニメ「暗殺教室」製作委員会

 本作(乱歩奇譚 Game of Laplace)のエンディングアニメも、当初はシンプルに見えましたが、バタフライエフェクト(※)をテーマにしていると読んでなるほどなぁ・・・物語が進行して一見シンプルに見えたEDの意味を知る・・・いいですねこういうの。

バタフライ効果:わずかな変化がその後の大きな変化の元になるという考え。蝶の羽ばたきが起点になって竜巻に繋がるという話から、本作は『蝶』のモチーフが多く出てくる。

エンディングアニメは白石慶子さんの単独制作
バタフライ効果をモチーフに作品世界を表現している
© 乱歩奇譚倶楽部/フジテレビ放映映像より

  さユりさんの楽曲『ミカヅキ』もすごく合っていて、本編に重ねるような演出こそしていませんがすごくいい流れで繋がるんですよね。EDは本編との繋がりの良さでかなり印象が変わりますもんね。独立して制作していながらこのつながりの良さってすごいなぁと思いました。

 ところで、オープニングもOP映像というクレジットで出ていますが、どの辺りまで関わっているんだろう・・・?結構謎な表記ですよね。

追記:ありがたい事に白石さんから回答のツイートを頂きました。感謝感激です!

 これを読むと、かなりの分野を跨いだ形で白石さんの制作なんですね。わざわざ8mm映像を使っていたのにも驚きですが、合成などの効果だけでなく、動画や調整までとは・・・作品性が高く感じるのは当然だったんですね。

白石慶子 公式サイト:http://keikoshiraishi.com

本編の感想ですが、実は・・・


 本編は1〜2話完結をベースにしながらも大きくストーリーが動いて行く感じで、TVアニメとしてはとても見やすいし面白いです。コバヤシ君から見た視点では登場人物が影になるという表現は面白いし、何かの伏線かな?と期待させます。

 伏線といえば、タイトルの『Game of Laplace』の通り『ラプラスの悪魔』もテーマの一つになってるので、あらゆるものが伏線になりうるという視点で見るのも面白いですね。とはいえ物語を作るのは相当大変そう・・・大丈夫なのかな?

 実はコレ、まだ9話までしか見ていない段階でのレビューなんですよね。『お前いつもそうな、最後まで見てからレビュー書けよ』といわれそうですが、書きたいときに書かないと熱量が消えちゃうんですよね。見終わるとなんだか一段落してしまって・・・あえて完結前に書いてます。

 序盤でしっかり掴んで、終盤ラスト3話くらいで一気に畳み掛けて行く感じですね。途中の社会派ストーリーはデフォルメが強くてちと乗りにくいのですが、広い意味での伏線だと思えば気になりません。11話で終わってしまうのが寂しいような・・・でもコナンみたいに延々と続く前提の作品じゃないですからね。

 しかしフジテレビのノイタミナ枠は、『残響のテロル』とか、硬派なオリジナル作品に果敢にチャレンジしていてすごいですね。オリジナル作品は商業的にもリスク高いですもんね。本作も事実上のオリジナル作品ですがコバヤシ君は一部で大人気みたいだし成功と言えるのではないでしょうか!
【関連投稿】2015年 アニメ オープニング ベスト10選:今年感動した神OPはコレ!


乱歩奇譚 Game of Laplace 公式サイト
配信:DアニメストアGyaoBANDAI CHANNEL など

原案:江戸川乱歩
監督:岸誠二
シリーズ構成・脚本:上江洲誠
キャラクターデザイン:森田和明
総作画監督:山形孝二/鎌田祐輔
アニメーション制作:Lerche
オープニングアニメーション
絵コンテ・演出:岸誠二
OP映像:白石慶子
プロップデザイン:廣瀬智仁
作画監督:森田和明/山形孝二/廣瀬智仁
制作進行:福井洋平
エンディングアニメーション
ED映像:白石慶子

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