2015年10月7日水曜日

映画 心が叫びたがってるんだ。 感想 :あの花にイマイチ感動できなかった人に勧めたい恋愛の名作

 あ〜見逃さなくて本当によかったですよ!
 映画「心が叫びたがってるんだ。」 (ここさけ)を劇場で見てきました。

 思い切って見に行って本当に良かったです。もう大絶賛ですよ!失礼ながら、こんなに素敵な作品だったとは思いませんでした。

 というのも、世間で大評判だった名作『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』にはイマイチ入りきれなかった自分としては、『あの花』スタッフが集結!』という宣伝は逆にちょっと引いてしまっていたからです。
(後半はネタバレのレビューとなりますのでご注意ください)

9.19公開映画『心が叫びたがってるんだ。』本予告映像より画像引用
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あの花にハマれなかった人こそ見るべき作品


 『あの花』はいい作品だと思いますが、世間で言うほどハマれなかった(40のおっさんだから当然と言えば当然ですが)、そんな自分のような人には、『心が叫びたがってるんだ。』はとてもお勧めしたいです。

 しかし、いくつかのレビューを読むと・・・
誰にも感情移入できませんでしたし、作品としても好意的に捉えれば王道の青春群像劇でしたが『あの花』のような意外性はありませんでした。ゆさアニ さん レビュー記事より) 
あの花みたいに大号泣する話ではなく、青春&ちょっぴり感動です!YouTube ウォッチさん感想

 ハァ〜?オイオイ、ウソだろ?こっちは大号泣だったんですけど!『あの花』ではジンワリ感動しただけだったけど、『ここさけ』は最高に良かったんですけど!

・・・なんて悪態をつきたくなるほどスゴイ感動してしまいました(笑)いや、実のところ、ゆさアニさんを始めとするネガティブ系の感想を読んで、『あ、これは、俺にとっては面白い作品かもしれない!』って気付けたんですよね。そういう意味でも本当に感謝しています。

4人を軸にした青春群像劇でありラブストーリー
『心が叫びたがってるんだ。』本予告映像より
© KOKOSAKE PROJECT

 つまり『あの花』にそれほどハマれなかった人こそ見に行ったほうがいい!食わず嫌いで見逃すなんで絶対に損です。予告編が地味だからって気にしないでください。説教くさい成長物語なんかじゃありません。思いっきり素敵な恋愛物語です。

痛い・・・けど素敵なラブストーリー


 これは、ぜひ映画館で観るべきです。本作は映像や音楽は美しいもののそれがメインではありません。個人のホームシアターシステムでも十分楽しめるかもしれません。でもなぜ映画館なのか?それはとても、いろんな意味で『痛い』からです。 

恋する成瀬、メチャクチャわかりやすいけど、すごく良い。
映画『心が叫びたがってるんだ。』公開記念特番より
© KOKOSAKE PROJECT

 自宅で一人で見ていたら、あまりの痛さに逃げ出していたと思います。でも映画館なら逃げ出すことができません、スキップ1.3倍速にすることもできません。悶絶しながら身をよじって見ていました。でも、だから良い

 痛さが無ければ、青春も恋愛も薄っぺらい話になってしまいますよね。

良い意味で一般向けの作品


 ゆさアニさんのレビューでは、本作を『一般向け』のアニメと評していました。そこには若干ネガティブな印象を帯びているように感じました。例えばテーマソングが乃木坂46だったりする所ですね。そこは分からなくもないですが、EDを本編にかぶせないことで違和感は最小限に抑えられていたと思います。

 しかし、『生々しい』というセリフ廻しは、私はことごとくポジティブに感じました。全く違和感なく没入できたんですよね。キャラクターデザインもデフォルメを抑えめにして、萌え要素を保ちつつも、オタクアレルギーを抑える事に成功していると思います。

成瀬のかわいさは特筆に価するが、一般人にも受け入れやすいデザインになっている
『心が叫びたがってるんだ。』本予告映像より
© KOKOSAKE PROJECT

 個人的には本作が一般向けかといえば、深夜アニメの予備知識や文脈を要求されないローコンテクストという意味でなら一般向けだと思います。でも分かりやすくするために物語が浅いかというと全くそんなことはないですね。

 物語の筋がシンプルであっても、心理描写話の深みが浅いとは感じませんでした。むしろそのあたりの描写を分厚く描くことに成功していると感じました。(それは君が一般人だからさ・・・と言われそうですが、ホントか?(笑)私は映画ラブライブを絶賛した人間なのだが・・・)


テキストを介して会話する成瀬と拓実
『心が叫びたがってるんだ。』本予告映像より
© KOKOSAKE PROJECT

 でも、だったら実写ドラマでいいのでは?と言われれば、アニメじゃなければ表現できない作品だと断言したいです。

 劇中では、ミュージカルについて『言いにくい言葉も歌にすると言える』という意味のセリフがありますが、同じようにアニメでこそ表現できる手法で実現した作品だと思います。

 この作品は実写にすると痛くなりすぎてバランスを欠いてしまうんです。特に成瀬順はアニメで声優さんが演じる以外にこれを表現することは不可能だと思います。無理にやっても違う作品になってしまう。だから本作はアニメでなければ成立しない作品だと思うんですよね。
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素晴らしい出来の恋愛パート


 予告編ではわかりにくいですが、とにかく恋愛パートが秀逸の出来なんです!独立しているわけではなく物語に密接につながっているわけですが、なんかもう高校生のいい感じが出てます。

菜月と拓実の会話シーン
恋愛の絡み方がすごく良くてストーリーの芯になっている
『心が叫びたがってるんだ。』本予告映像より
© KOKOSAKE PROJECT

 青春群像劇なんですから恋愛が出てきて当然なんですが、本当よくできてるなと思うので、予告編でそれがイマイチ主張されていないのは残念。予告編だとかわいそうな女の子の成長物語かなぁ?と勘違いしてたのですが、文科省推薦みたいな説教臭さは全くありませんね。冒頭からラブホの風景が出てくるくらいですからね(笑)

(次章よりネタバレありますのでご注意ください)

そして一番こころ動かされたセリフ

冒頭のラブホシーンがクライマックスに繋がる
皮肉にも子供の頃の夢だった王子様との逢瀬を果たす
『心が叫びたがってるんだ。』本予告映像より
© KOKOSAKE PROJECT

 名シーンはたくさんありますが、一番心に残ったのはやっぱりクライマックス。ラブホのシーンですね。成瀬が拓実に向かって、これまでの彼女からは想像もつかない罵詈雑言を浴びせた末、最後に告白をします・・・。

 彼は、その場を取り繕う事もなく、ごまかさずに「好きな人がいる」と伝え・・・そして成瀬が最後に一言、ちょっと笑顔で・・・。

 『うん、知ってたよ。

 このセリフの力がすごすぎて・・・が止まらなくて・・・しばらくスクリーンをまともに見ることができませんでした。もちろん立ち聞きしていたから知っていた、ということなんですが、このセリフに込められた想いは単にそれだけじゃないよね。

 知ってた・・・けど『言ったよ』という事・・・。

 言葉の持つ恐ろしさから声を出せなくなった彼女の心、そこから解放されると同時に、誰のせいにもできなくなった彼女。どんな傷つける言葉でも、すべて受け止めてくれるという拓実に、何もかもぶちまけて、そして最後に残った一番言いたかった言葉

孤独だが波風のない世界から引き出してくれた拓実たち
でも自分も相手も傷つくことは避けられない
『心が叫びたがってるんだ。』本予告映像より
© KOKOSAKE PROJECT

 拓実のおかげでここまで来て、今の自分がいて、そして、自分のことを大切に思っていてくれていると思っていて・・・でもそれが、激しい落胆怒り喪失感に変わり、混乱した自分を、それでも最後まで支えてくれようとする拓実

 その二人の関係に、自らケリをつけるための覚悟の告白。拓実の優しさと、誠実さと、そして・・・どうしようもない現実。そのすべてを含んだ『知ってたよ』

 その悲しみと切なさが凝縮されたセリフに、一気に感情を揺り動かされてしまいました。こんな切ない告白シーン・・・これを見るだけでもこの映画の価値を感じたし、ここで感動するためには、観客も逃げずにしっかり見ていないとダメなわけです。
※ご指摘によりセリフの一部を訂正しました(感謝です)

どうしようもない現実を前に告白する
『心が叫びたがってるんだ。』本予告映像より
© KOKOSAKE PROJECT

 しかしあの罵詈雑言によって、キャラクターの厚みが全然変わりましたね。かわいくて可愛そうな女の子という薄っぺらいキャラクターではなく、自分勝手に怒りもするし欲望もあれば妬み嫉みもある・・・未熟かもしれないけど、普通の人間らしい、分厚い感情を持ったキャラクターが表現されたと思うんです。
 

ラストの賛否両論


 野球部の大樹が告白するラストシーン。その唐突さには賛否両論あるようですが、個人的には素敵なハッピーエンドだと思います。でも、それは単に成瀬が救われるから、という意味ではありません。

野球部エースだった大樹
『心が叫びたがってるんだ。』本予告映像より
© KOKOSAKE PROJECT

 成瀬と大樹がうまくいくかどうかなんてわかりません。それどころか、菜月と拓実を見て嫉妬してうまくいかなくなりそうです。じゃあどうしてハッピーエンドだと思うのか。

 将来のことなんてわからないけど、ああいう経験すべてが、将来の彼女にとって最高の宝物になるんだろうなと確信するからです。痛みも喜びもすべて通過点。それが青春ですもんね。だからあの結末はすごくポジティブに感じました。

 ハッピーエンドの後も人生はずっと続く。だからその後の結末は重要じゃなくて、ああいう経験をしていること自体がハッピーエンドだと思うわけです。

痛みも喜びもすべて通過点
『心が叫びたがってるんだ。』本予告映像より
© KOKOSAKE PROJECT

 まあ、自分が高校生だったらそんな悠長なこと言ってられないでしょうけどね。どうだろう、かなりモヤったかも。そういう意味でも、あの花では世代的に入れなかったアラフォー世代にも楽しめる作品じゃないかな、と思いました。

 もう、最高でしたよ!あー本当に見逃さなくてよかった!ちなみに一緒に見た奥さんは一般人ですけど、楽しめてたみたいです。でも、俺の方がもっと楽しんでたかも(笑)

追記:2度目の感想を書きました、よかったら読んでください。まさか、2度目の方がもっと感動してしまうとは・・・。
(2度目の感想)「心が叫びたがってるんだ。」ここさけ 2度目の感想 :どうしても絶賛してしまうラブストーリー - アニメとスピーカーと‥‥
追記2:3度目の感想を書きました。しつこくてスミマセンが、よかったら読んでください。
(3度目の感想)心が叫びたがってるんだ。3度目の感想 ここさけ:歌詞とセリフの繋がりに驚き、星空に感動! - アニメとスピーカーと‥ 

(参考)ゆさアニ:『心が叫びたがってるんだ(ここさけ)』感想・ネタバレ あの花ほどのファンタジー性は無く、良くも悪くも王道の青春群像劇。(ネガティブ系)
(参考)きままに生きる 〜映画と旅行と、時々イヤホン〜:心が叫びたがってるんだ。 感想(中間系)
(参考)徒然もの書きぱん:アニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』の感想と考察 ~想いは言葉にしなくても重い~(肯定系)
(参考)りっころぐ:【映画】心が叫びたがってるんだ。(ここさけ) 初日観てきた【感想】(女性視点:肯定系)
(参考)26歳無職くん:映画『心が叫びたがってるんだ。』がなかなかの良作でした。『あの花』より好きです(肯定系:玉子と王子の考察が詳しい)

映画『心が叫びたがってるんだ。』公式サイト
オリジナルアニメ作品/119分
監督:長井龍雪/脚本:岡田麿里/制作:A-1 Pictures

他の『アニメ』の記事を読む
『スピーカー』『オーディオ・ビデオ』『備忘録・Mac・その他』『生活』
当ブログの引用画像について法律上の扱いについての説明

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4 件のコメント:

  1. 完全に食わず嫌いを発動してました。
    ネタバレになるのでしっかりと記事は読んでいませんが観てみようと思いました!
    ありがとうございます。

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    1. 読んでいただきありがとうございます。私にはすごく感動できたので、ホントにあの花ファン以外の方にも知って欲しいと思って書きました。なので、そう言っていただけるととても嬉しいです。
      感想は色々でしょうが、つまらないという人は少ない作品ですので、ぜひご覧になる事をお勧めします!

      削除
  2. 映画を見て抱いた自分の気持ちをそのまま表現してくれたようなレビューで、自分が感じた感情を自分の中にストンと落とし込んでくれました。
    とくに、順の罵詈雑言からの告白のシーン、まさに僕が思っていたけど、僕の言語能力では言葉で説明しきれなかった「順の心の動き」をうまく説明されています。

    ただ一点だけ、順のセリフは『知ってた・・・』じゃなくて『知ってたよ。』なんですよね。
    1回めに見た時に、「言葉のテンポ的には『知ってた』のほうが良さそうだけど、なんで『知ってた“よ”』なんだろう」と思ってたんですが、
    たぶん、『知ってた。(諦め)』というニュアンスではなく、『知ってたよ。(でも、大丈夫。聞いてくれてありがとう)』という、ポジティブというか、悲しみ&切なさ100%じゃなくて、感謝のような気持ちも何割か含まれていることを表現したかったからじゃないかと思うのです。

    だからこそ、ミュージカルのラストシーンで順(少女の心の声)が歌う歌詞が、
    「悲しい過去も涙の後も、私は叫ぶから あなたに出会い生まれた(この)気持ち すべてを愛してる」
    なのではないかと。
    だから僕はこのシーンを2回めの視聴で見た時、「切ないなぁ・・・」という感情とは別に、「やっと言えたね、良かったね・・・」という気持ちが共存して、ボロ泣きしてしまいました。その意味では、「自分の感情をちゃんと伝えてケリを付ける」という順の決意に、「ありがとう。でも俺、好きな奴が居るんだ」と、はぐらかすことなく正面から順の気持ちに応えた拓実もマジでカッコよかった。

    もう2~3回見に行きたいですね。

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    1. コメントありがとうございます。そして間違いのご指摘、本当に感謝です!

       諸般の事情でまだ2度目を見に行けてないので・・・うろ覚えで書いてしまいました。上映館が微妙に遠いので、心身のコンディションの良い状態を選んでたら中々行けなくて。他の映画のついでに見るのもイヤですしね・・・。
       
       あのセリフの解釈も、確かにご指摘の通りですね。明暗いろんな感情が折り重なっていますね。特に『感謝』っていうのはその通りだと思いました。

       あそこは自分の中でいきなり焦点が合ってしまい、突然ものすごい感情の波に襲われてしまったんですよね。その後はしばらく心が平静になれずにミュージカルシーンもちゃんと見れてない気がします(笑)2度目はしっかりその辺も見たいですね。

       それと、拓実のカッコよさってホント同感です。あの状況で誤魔化さないところがすごく誠実というか、ちゃんと順に向き合ってるって事ですもんね。だからこそ一層悲しいのですが・・・。

       同感してくれる方がいて本当に嬉しいです、ありがとうございました!

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